悪役令嬢が死んだ後

ぐう

文字の大きさ
35 / 65

30

しおりを挟む


 
 それを聞いたエリックは驚愕のあまり二の句が継げなかった。それを見たフェリクスは唇に指を一本当てた。

「秘密だ」

 その姿を見てエリックは今度は笑い出しそうになった。

「このことは……」

「公然の秘密だ」

「でも国王陛下はなぜ自分の子でないことがわかっているのに、王太子にと周りが言うのを許してるのですか」

「国王は王太子については一切言明していない。周りに『年齢からいっても決められるべきです』と進言されても一切明らかにしない。そして第一側妃を責めるような事を一切言わない。なぜかわかるか?」

「わかりませんよ。そんなのは」

「第一側妃の相手が王弟ユリアン殿下だからだ」

 エリックは思わず叫びそうになって口を自分の手のひらで塞いだ。

「ユリアン殿下はかなり前に亡くなっていますよね」

「病弱だったからね。爵位を叙爵されても領地経営など無理だからそのまま王宮にいたんだ。第一側妃とは同い年で学園でも一緒だった。多分だけど第一側妃の事を好きだったんだろう。でも第一側妃の目は兄にしか向いてなかった。自分は病弱で叙爵も難しい。だから諦めた。でも目の前で好きな人が兄に蔑ろにされてる。それで男女の仲になったんだろうね。第二王子ができてしまった。ユリアン殿下は正直に話して兄に離縁してもらって自分が娶るつもりだったらしい。なのに病魔はあっという間に時間を奪って行った」

「なぜ、わかったのですか」

「ユリアン殿下から陛下に当てて遺書があったんだ。第一側妃の腹の子は自分の子だけれど、自分は幸せにできないのでせめて国王の子として育ててやって欲しいと」

「それを陛下は受け入れたのですか」

「そう。病弱で公務も出来なかったけれど真面目で優しい弟を愛しておられたから、最後の願いを叶えた。ユリアン殿下の代わりに将来叙爵させて王家を支える王弟にしようとしたのだが……」

「第一側妃は王太子に相応しいのは第二王子だと噂を流させてましたね。優秀で剣技も素晴らしいと」

「そう、ユリアン殿下の遺言を盾に第二王子を王太子にすると言う欲が出たんだろうな。ユリアン殿下には王位継承権があった。その子なんだからと。でも陛下だって弟の子でも自分の子ではない第二王子を王太子に付けるつもりはない。だから第一側妃がなんと言おうがうんと言わない。状況を変えるために第一側妃は自分を側妃に押し込んでくれたデングラー公爵を脅迫したんじゃないかな。当時の証拠は綺麗に消えてるけれど当人の第一側妃は生きてるから国王に話すとかなんとか」

「それで第二王子とデングラー公爵令嬢は婚約した」

「いまや勢いが弱まってるからデングラー公爵に取っては迷惑だったと思う。でも第一側妃の要求を飲んで後ろ盾になっておいて、過去の失策の第一側妃と予想外に生まれた第二王子を片付けるつもりだったはずだ。第二王子が公爵令嬢に冷たいのを見てこれはいけると思ったはずだよ」

「第二王子は後ろ盾になるデングラー公爵令嬢を蔑ろにしたら困るだろうになぜそんな事をしたんですかね……」

 エリックがそこまで言った時、ガラリと音を立てて飛び込んできた者がいた。

「殿下!ジョエルが飛び込んできました」

 アランだった。そのアランを押しのけて現れたのはジョエル・シュテーデルだった。

「どうした。ジョエル」

「フェリクス殿下 陛下が王妃の離宮捜索をお認めになりました」

「証拠が出たのか」

「王妃の離宮を見張っていたのですが、何か慌ただしく、踏み込もうとしたところ周りの母国から付いてきた侍女達が頑として拒否するのです。国王陛下の命令書を示して近衛第二が踏み込みました。王妃が人事不省に陥っていたところを発見しましたので、離宮内の証拠品を押収いたしました!」

しおりを挟む
感想 471

あなたにおすすめの小説

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

勝手にしなさいよ

恋愛
どうせ将来、婚約破棄されると分かりきってる相手と婚約するなんて真っ平ごめんです!でも、相手は王族なので公爵家から破棄は出来ないのです。なら、徹底的に避けるのみ。と思っていた悪役令嬢予定のヴァイオレットだが……

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

良くある事でしょう。

r_1373
恋愛
テンプレートの様に良くある悪役令嬢に生まれ変っていた。 若い頃に死んだ記憶があれば早々に次の道を探したのか流行りのざまぁをしたのかもしれない。 けれど酸いも甘いも苦いも経験して産まれ変わっていた私に出来る事は・・。

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

処理中です...