56 / 65
49
フェリクスがそう尋ねると、オスカーは周りを見回しエリックに声をかけた。
「エリック、すまないが周りに人を置きたくない。君が入り口にいて、だれも近づけないでくれ」
エリックは頷き、小走りで配下を連れて部屋の外に出て行った。
フェリクスは黙ってそれを見ていたが、内心は内装が剥がされ、寒々しく血の臭いが漂う部屋にあまり長居はしたくなかった。
ふと見ると、オスカーが部屋の隅で、手招きしている。オスカーのそばまで歩み寄ると、オスカーが部屋の隅にある目立たないように壁に埋め込まれた取っ手をぐいっと引っ張ると、壁の中に埋め込まれた横開きの扉が姿を現した。オスカーが横開きの扉を横に滑らすと、その向こうには豪奢な小部屋があった。
「ここは?」
フェリクスは今までいた部屋とガラリと変わった雰囲気に戸惑った。
「ここは王妃の秘密の部屋のようです」
「秘密?離宮は全て王妃が勝手に使っている。秘密にする必要があるのか」
フェリクスがそう言うと、オスカーは肩をすくめた。
「わかりませんが、王妃が毒で倒れていた部屋は他にあり、そこが王妃の部屋となっているようでした。死んでいた侍女を運び出した後に、壁の色が違う場所を見つけて、気になって触ってみて取っ手を発見したのです。まあ、入ってみて下さい」
オスカーに従って、フェリクスもその部屋に入ると、オスカーが扉を閉めた。扉を閉めるとその扉の中側に大きな肖像画があった。
「これはーーー父上か?」
「いいえ、フェリクス殿下、あなたです」
あまりにびっくりして、オスカーをまじまじと見つめてしまった。
「ーーーー嘘だろ。私と王妃は一面識すらないーー」
「でも、その肖像画の下にあなたの名前があります。それにこちらをみて下さい」
オスカーが部屋の隅から、三枚の肖像画を引っ張り出してきた。
「フェリクス殿下、あなたの成長過程です」
そこには幼いフェリクス、少年のフェリクス、青年に至るフェリクスの肖像画があった。
「なぜ?私?」
フェリクスには理解ができなかった。オスカーはそのフェリクスを見て、仕方ないですねと言うような表情をした。そして、出してきた三枚の肖像画を元に戻しながら、話を続けた。
「王妃は国王陛下の肖像画に惚れた。異母姉を陥れてまで嫁いできたのに、第一側妃に嘘を吹き込まれ、第一側妃が国王陛下の愛する人だと誤解した。その上その第一側妃が産んだ第二王子が、王太子になりそうなのを憎んで『呪』を行ったと言う結論になっていますよね?ーーーーーですが、表面的にはそうでも、国王陛下と実質的に夫婦になって、子供を三人産んでいるのは、あなたの母上の第二側妃だ。本当なら王妃が恨んで『呪』の対象にするのは、あなた方親子ではないかと思われませんでしたか?」
二人の間に沈黙が落ちた。のろのろとフェリクスが口を開いた。
「たしかに、その疑問は持った。私の母は不自然な立場ではあるが、王妃が放棄した王妃の公務をこなし、父上とも仲睦まじい。ーーーと言うか、初めて自分で望んだ女性が母上だったらしいーーー」
「そうです。一番妬まれるはずのあなた方に『呪』が向かなかった理由がこれです」
そう言って、オスカーはフェリクスが王家の正装をした姿を描いた肖像画を指さした。
あなたにおすすめの小説
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
繰り返しのその先は
みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、
私は悪女と呼ばれるようになった。
私が声を上げると、彼女は涙を流す。
そのたびに私の居場所はなくなっていく。
そして、とうとう命を落とした。
そう、死んでしまったはずだった。
なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。
婚約が決まったあの日の朝に。
婚約破棄で、おひとり様になれるはずだったのに!?
パリパリかぷちーの
恋愛
主人公ルシアン・ヴァイオレットは、「悪役令嬢」として振る舞う孤独愛好家の公爵令嬢。念願だった第一王子アランとの婚約破棄を言い渡されると、内心では歓喜し、大都会の喧騒から逃れて森の奥の廃墟同然の別荘へと引きこもる。ルシアンの目的は、誰にも邪魔されない至高の静寂ライフを満喫することだった。
しかし、彼女の理想郷にはすでに先客がいた。それは、無口で無愛想だがハイスペックな謎の男、キース。実は彼は、王国の裏社会を統べる『影の英雄』と呼ばれる辺境伯であり、ルシアンの孤高の姿に心奪われた重度の隠れファンだった。
魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
悪意には悪意で
12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。
私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。
ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。