悪役令嬢が死んだ後

ぐう

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「殿下、驚き方が少々……」

 オスカーがフェリクスを非難する様に言うが、フェリクスはそれどころじゃない。

「それで、王妃に見つけられて、私はどうしたんだ」

「殿下は覚えていられない?」

「一体いくつだったのだ、私は」

「三歳だったと聞いております」

「そんな歳のこと覚えているかーーーー」

 思わず大きな声になるフェリクスをオスカーは宥める様に言う。

「殿下、人払いしたのに、外に響きますよ」

 フェリクスは思わず、口を片手で押さえた。

「それで、先に進めてくれ」

 オスカーは仕方ないですねと言う様な表情をしたが、話し始めた。

「王妃はあなたを見つけて、その姿に自分の初恋の男の姿を重ねたそうです。殿下はお小さい頃から、陛下に瓜二つでしたからね。そして、王妃は第一側妃に邪魔されなければ、この子は自分の子だったはずだと思われた。殿下が三歳の頃は、ちょうど第一側妃がアルベルト殿下を妊娠中でしたから、王妃は相当苛立っておられた時です」

「アルベルトが亡き叔父上の子供だなんて、王妃は知るよしもなかっただろう」

 フェリクスの言葉にオスカーは頷いた。

「そうです。だから嫉妬に狂った王妃は、あなたという、陛下そっくりの子供に、執着した様です。書いてある内容によると、最初は、この子が自分の子だったらいいのにと言う願望の様でしたが、だんだんと自分が産んだのに、第一側妃のせいで、夫婦仲が上手くいかず、あなたと言う子供を取り上げられたということになっていました」

「待ってくれ。ーーそのーー父上と王妃は初夜に王妃から拒否してーーーそのーーーえっとーー」

「そうです。いたしておりません。一度も」

 フェリクスが言いにくそうだったので、オスカーがズバリと言った。この王子意外と純情?そういえば、閨教育も実践は断ったとか…などとオスカーは内心で思っていた。

「それなのに、なぜ子供ができる!」

「いや、精神的におかしくなっている人間に理屈など通じません。王妃に取ってあなたは実子で第二側妃様は乳母」

「妹もいるのだがーー」

「目に入ってなかった様です。この離宮から練兵所がよく見えます」

 また話題が変わったと思いながら、フェリクスは言った。

「それがどうした」

「殿下も五歳からほぼ毎日、練兵所の近衛の区域で鍛錬なさってましたね?」

「そうだな。父上と一緒のことも多かったな」

「それを王妃は窓から、遠眼鏡を使ってのぞいました。恋焦がれる男と愛しい我が子をね」

 フェリクスは黙って聞いていたが、ふと思いついた。

「恋焦がれたと言うが、父上は最初はきちんと夫婦になるつもりだった。それを第一側妃の嘘を信じ込んで拒否したのは王妃だろう。恋焦がれているなら、父上に言ってみればよかったのでは?」

「殿下、申し訳ないのですが、女心がわかっていません」

 フェリクスはオスカーに言われて目を剥いた。

「どう言うことだ」

「王妃は拒否はしたけれど、陛下の方から愛を囁いて欲しかった様です。『第一側妃のことなど、もう愛してない。愛しているのはあなただけ』と言って欲しいと書いてありました」

 フェリクスは驚いたが、声を出さない様に飲み込んだ。

「それが女心?」

「女心と言うか王妃の気持ちです。『異母姉を陥れてまで、手に入れた男なのに、自分を愛さないなんてはずはない。本心では愛してくれている』と書いてあります」

「思い込みが激しいな」

 フェリクスがポツリとこぼした。

「そうですね。だいたい政略結婚ですから、お互い歩み寄らなければ、気持ちはついてきません。自分との婚姻前に側妃がいたことで、逆上して全て拒否する様では、政略結婚は務まりませんね」

 オスカーとフェリクスは二人でそっとため息をついた。
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