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壱章 クマさん道場
天埜家の朝とお風呂
しおりを挟む天埜家の朝は早い。いや致し方なしだが。理由もきちんと存在する。学生は朝と夕方しか稽古ができないからだ。夜稽古も存在するが基本的には夏だ。肝試し的なコトを訓練としてする。
灯りなしでだ。当然辺りは真っ暗なので最初の頃は怪我が多い。いや今はその話はどうでも良いか。
場所は地下にある道場。普段なら別邸横にある道場で行うが今している特殊すぎる訓練は地下でないと駄目だ。
「疾ッ!」
手に持つ木刀を栄治向けて振るう。ただそれは片方の木刀で払われもう一方の木刀で頭を打ちにくる。それに対しては素早く木刀を引き柄頭で弾き腹を目掛けて突く。今度は下から弾き上げられ喉元を狙った突き。それは斜め後ろに跳ぶと木刀は納刀して代わりに短刀2本を取り出し一段踏み込み速度を上げて横から迫ってきた悠二を胴打ち背後に迫っていた2人をほぼ同時に投げる。
刹那
栄治が2本の刀で連撃を繰り出してくるのを納刀しながら防ぎ木刀を抜刀して一気に攻め立てる。突きと同時に更に接近しての殴打を腹に向けるが悠二がすぐに復活していたので短刀一本を抜刀してその攻撃を防ぐ。今度は槍か。足で絡め取り短刀を口で咥えて間合いを取る。
現在しているのは乱取り…いや僕が4人を相手にしての稽古をしている。実践式なので本来ならしない格闘も絡めている。そして今し方したように相手の武器を奪うもありだ。
「覇ァ!」
気合いを入れもう一段踏み込む。すると今度は視界が遅く感じる。昨日踏み込んだのはこの先だが生身の肉体だとまだ出来そうにない。まだまだと思いつつ飛んでくる矢をギリギリで避ける。文字通り首の皮ギリギリを後ろから迸った矢は道場の壁まで飛んでいきドンと鈍い音を起てて床に落ちる。今度は弓か。そう考えた瞬間に2射目が飛んでくるのに合わせて柄頭で打ち軌道を変化させる。それに合わせて未完成の虚拍を使い栄治の裏手を取るとそのまま柄頭で背中を打つ。それと同時に4人全員の視界から消える。そのまま気や音を消し自然と一体化しつつ悠二を昏倒させて女性陣2人の後ろから首に手を添える。
「チェック」
トンっと手刀で気絶させる。それと同時にビィーとブザーがなる。だいぶ時間が掛かるようになってきたな。前は2セット余裕でやれたのだが。そんな事を考えつつも4人を起こして風呂に行くように告げる。その後、後片付けをして真剣を使い形稽古をして20分タイマーをセットしてクロノスドラゴンを脳裏に思い浮かべてシュミレーションする。未だ実現していない虚や使うのが難しい幻を交えて全力で攻撃をしているが全く勝ちへの道筋が見えない。魔法も銃も禁止しており使うのは腕にある剣一振りで攻めて攻め攻め立てる。足の僅かな動作も全てを踏み込みながら斬る事をイメージする。ただ15分くらいで力尽きなんとか納刀して横になる。
やっぱりまだ天埜流武術の折り返しにすら届いていない。真髄に至ったとは言えども初代が居たとされる位置にはほど遠い。ぼんやりとそんな事を考えながら真剣をいつもの場所に仕舞い道場横にある浴室に向かう。
ロッカールームにあった女性モノの衣服に気が付かず。
ガラガラと戸を開けて中に入る。ちなみにここには先祖が掘り当てた温泉があるので湯治をする意味でも丁度良いらしい。そんなどうでも良いことを考えながらシャワーを浴びて体を洗う。そういえば家にある石鹸類って家の独自開発らしい。どんな効果があるかは分からないが女子が言うには最高級品レベルはあると髪を触られながら聞いた。今度、父さんに聞いてみるかな。
時計を見るとまだ6時半。朝ご飯は昨日の夜の内に仕込んでいたのでまだ大丈夫だな。
そう思い風呂に浸かろうと浴槽に向かうと誰かが居た。いや誰かは分かっている。沙月だ。理由は単純。今、家にいる中であれほど抜群なスタイルを誇るのは沙月だけだ。いや佳奈ってまだ12歳だからね。処女雪のように白い肌と抜群なスタイルを誇る肢体が美しく見える。いやナニシテイル。即座に後ろ向く。
「香織?」
普段よりも声音が一段と冷たい気がするが気のせいだと思いたい。
「ひゃ、はい何でしょうか?」
変なところで噛んだし声が微妙に上擦っている。冷静なれ落ち着け。アレは弟子、アレは弟子。
「そういうのは夜でベッドの方が良いな」
訂正。やっぱり沙月だわ。何でだ?普通そういうのは男から逝くものだろう。別にそう言う意味で来たわけでもないのに。ただ昨日のアレがあるので完全に意識してしまう。
「お前なあ。少なくともまだ高校生だからしないぞ」
あっ、返答間違えた。この言い方は色々と語弊を生む。コイツらの場合は卒業式の日の夜に媚薬とか持って部屋に突撃してくるだろう。いやしてくる。長年の付き合いで分かる。
「そう。じゃあ高校生じゃなくなれば良いね」
訂正。今すぐナニカしでかす気だ。怖いな。前科がある沙月じゃあナニをされるか分からない。
「そう言う事もナシだ。せめてお互いに18になるまでダメ」
僕が自分に課したコトが18にならないとできないしもし仮に沙月を選んだとしても自分の女が稼いだお金で生活するなんてあり得ない。沙月の事だから平気で貢いできそうだが。盲信って怖いな。
「分かった。でも一緒にお風呂くらいはダメ?」
いつの間にか浴槽から上がって僕の目の前に来てコテンと首を傾げて上目遣いで聞いてくる。ただ惜しらむべきは僕と沙月の身長は沙月の方が若干大きいの上目遣いには見えない点だろう。
「まあそれくらいなら」
そう言うと沙月は僕の腕を手に取りそのたわわな果実の間に置く。直に伝わる体温が心地よく心臓の鼓動も聞こえてきそうだ。
「ちょっ沙月!」
「良いじゃない。あんなに激しくして」
文面だけ見るととんでもないだろうな。稽古となると手が抜けないのが悲しき性だな。
「悪いとは思うけどさ」
後悔はしていない。ここも色々と不味いな。まあ武人だし仕方ないな。
「私を滅茶苦茶にして楽しい?」
腕を握る手の圧力が凄い。女子ってここまで力が出るとは思わない。いやそう言えば家の流派の上位陣だったな~。
「仕方ないだろ。サシなら兎も角乱取りは加減出来ない」
「でもー」
拙いな。声に妙な色気が混じっているし顔も互いに朱に染まっている。艶かしい感じがして今すぐにでもそう言う事をしたくなるが鋼の心で我慢する。そっと彼女の方を向き顔を近づける。その行動にパニックになったのか動きが固まった瞬間そっと頬に口付ける。
「これで我慢してくれ」
そう告げると腕を解放してくれた。
それから少しの間、お風呂をゆったりと楽しんだ。
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