帰還勇者のVRMMO冒険記

髙﨑 レイ

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義妹とVRMMO

PvPの前座

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 さて面倒だ。この手の連中には慣れているとはいえども今の俺では大幅な能力制限がある。それでも大丈夫なようにスキルを編成してはいるものもいつもの絶大的な力が無いのは少々怖いものがある。力を全力で使えるなら4人分の隠蔽程度は楽だがこの状況下では不可能に近い。加えてイリヤが管理している以上は俺の重要機密事項の1つが漏れていることが確定しているからこその構成でもある。よく言えば戦争特化型なのでこういう戦略が必要な場面ではあまり役には立たない。

 だからこの手の面倒臭い連中は相手にしたくない。

「はあ。で?」
 普段なら遇らう場面だがここは実験台くらいにはなって貰いたい。それに3人娘から変な弁護が入るよりも力で蹴散らした方が良い。動作テストとかで必要な諸処は終わっているので既に荒事は可能である。
「此処で落ち合う予定だったのは俺の方だがそれは理解している?」
 極めて冷淡にかつ煽るように声を発する。異世界の姫直伝の嘲笑が周囲に響き体感温度が徐々に下がりゆく。
「理解はしているみたいだね。あんたらの目を見れば直ぐに分かるよ」
「ッ」
 少しばかり殺気を漏らしながらも喋り続けると連中はそれぞれの武器に手を掛けた。ふむ剣・槍・弓・杖がそれぞれ1。
「その反応もね。いかにもキレてますという雰囲気があるよ。大方図星を突かれてイタイんだろうけど」
 先ほど声を掛けてきた剣使いに見える男が今にも抜剣しそうになる。これで抜いてさえくれれば良いのだが…無理だろう。
「まあお遊びにもならないな」
 殺気を彼らのみに絞り3割未満で放出して踵を返そうとするととあるウィンドが開く。

 それはPvP申請。
 条件は互いのHPが尽きるか降参するまでで何故か賭けで全財産とある。細小を確認すると文字通りの全財産である。コレ連中は気付いているのか?気付かないように煽ったとは言えども。俺は何も罠がない事を数駿の内に確認して相手に条件を変えられない内に承諾を選択すると俺と相手パーティーは不思議な繭に包まれて天に運ばれる。


 繭から解放されるとそこは闘技場であり両者の距離は20mほど。そして舞台を写し出すようにウィンドがあり連中と俺をそれぞれ映している。
「さてとやりますか…」


「セイナちゃん大丈夫?」
 その頃の噴水広場。
 そこには渦中の姫巫女とその先輩であり五聖使徒が1人騎士王の二つ名を持つケンジ・ムラサメとその固定パーティーメンバーである。
「ええ大丈夫。ただ兄さんがあんな熱い性格とは…」
「兄さん?」
 その小さく埋もれるようなセイナこと聖奈の呟きに反応したのは五聖使徒までとはいかないものも姫巫女と同じレベルで活躍をしているヒーラー職の女性である。
「彼はセイナのリアルの兄です。どうも初期ログインのアレコレに引っ掛かったみたいで」
「ああ。それであの連中に捕まったわけか。逃げれば良かったじゃない?」
「そう考えたんですけど…。兄さん純粋なVRMMORPGは始めてだから」
 セイナの珍妙な言葉使いに事情を察したのかそれ以上は何も問わず興味の視点を彼に切り替えた。その彼は初心者用に配布される剣や槍に刀などを取っ替え引っ替えしては軽く振るっている。
「にしてもアレ手慣れていたわね。貴女達が揃って相手にしたくない上位に入るのは分からなくもないけど勝てるの?」
「兄さんが勝つ」
 その強い断言に他の2人も頷いている。つまりはそういう事である。この3人が寄せる信頼は絶大的すぎる。

「うーん。やっぱり剣が良いか…」
 今のスキル構成上では剣が1番やり易い。銃でもやれなくはないが加減が絶妙に難しい。固定火力式の銃ではマイナス火力にすることが難しい。…それを言うと魔法や弓矢でもだが。
 そこで俺が選んだのは細身のある長剣。その形状はレイピアに近いだろうか?ただ刺突と言うよりも切り裂く事に特化している。クレイモア級の大剣もあったが刃を見る限りでは叩き潰すような形状をしている。色々な都合上これが一番都合良い。
 軽く振るうだけでヒュッンと風を裂く音がする。重くも軽くもない微妙な感覚がしっくりとくる。

 ふぅ~と一息を仕舞うと全ての気を霧散させる。その上で全身のあらゆる感覚を肌で感じとる。
 マナ・霊気・闘気・邪気・神気etc
 凡そ俺が感じ取れるそれらが空気中に微量ながらも存在しているのが分かる。それらを呼吸で取り組み体内で循環させる。パラメーターを仮想的に作り出しなるべくベストの状態を作り出す。それらが自分の中にあるスイッチを作り出し入る。

 それが片倉亮也としての意識をあの頃のものへと作り替える。

 そして再び極限まで高めた感覚を平常時まで戻す。

 その上で目を開く。その目付きは完全にあの頃のものを取り戻している。
「…」
「…」
 先ほどまで神すらも怯える殺気を浴びせていたので完全に怯え切っている。顔も酷く青ざめて見える気がする。
「お、お前はセイナちゃんたちの何者だ?」
「…保護者?」
 多分それで良いはず。18歳だけど愛子とはあの盟約があるし雫のことは彼女の両親から託されており聖奈に関しては言うまでもない。アイツらに取っての良き兄貴では居るつもりだがあと2、3年したらその関係は全てが変わるはず。
「まああんたらが邪推出来るような関係ではないな」
 何せそちら側への干渉権なんてほぼ居ないはずだしその盟約の現場にはかつての仲間たちも立ち会っていたので理解はされているはず。
 まあかなり深い話まではそこまで知らないと思うけど。

 何せ   なんだから   。
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