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夢から現実へ

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結婚記念日の翌日の朝、リックはご機嫌で家に帰ってきた。

「ただいま。帰ってきたよ、ララ。」

「お帰りなさい、リック。とても機嫌が良さそうね。」

玄関ドアをあけたリックは驚きでフリーズした。
笑顔で迎えてくれたララの後ろにはララの両親とリックの両親、そして友人のサムとメリー夫妻がいたからだ。

「え?ど、どうしたいんだい?皆勢揃いで…。」

「びっくりした?皆リックを待っていたのよ?」

「え?」

訳が分からないといった表情のリックにララは笑顔で問いかけた。

「昨日がなんの日か、思い出せる?」

ララが問いかけた事で急に昨日が何の日だったか思い出したリックは顔面蒼白だった。
結婚記念日を忘れて朝帰りしただけでも不味いのに更にミグと会っていた事がバレれば全てが終わる。しかし都合の良い言い訳も全く思いつかない。いつも使わせてもらうサムの名前もメリーが居ては使えない。

「ララ、ごめんっ!結婚記念日を忘れて飲み歩いてしまった…。」

「そう。じゃあこの紙にサインをちょうだい。」

ララはリックの顔の前にヒラリと離婚届を掲げた。
リックはララのサイン入りのそれを認識すると乱暴に奪い取って丸めて手の中におさめた。

「あら。」

「き、記念日を忘れて朝帰りしたくらいでコレは無いだろ?!」

「くらいで…ね。」

笑顔を消したララの目はとても冷たく、リックは一瞬たじろいだ。可愛い妻のこんな冷めた表情を見たのは初めてで両親や友人の手前どう言っていいのか分からない。
数秒の沈黙の後、最初に口を開いたのはこれまで黙っていたララの父親だった。

「リック、お前は結婚する時にした約束を覚えてるか?」

「…ララとの幸せの為に誠実な良き夫である事を約束しました。」

「ではこの家を買う時のワシとの約束は。」

「家を買う時…親父とはララとこれから増えるかもしれない家族の為の家だから別れる事があれば所有者はララに…まさか冗談だよな?…本当に別れる気か?記念日を忘れたくらいで!」

「きちんとサインまでしてあったのに疑うなんて酷いわね。それに、記念日を忘れたくらいじゃないのよ…。誤魔化せると思って…貴方にわかる?幸せを疑わず、素敵な一日にしようとしていたのにその相手は記念日なんて忘れて朝帰り。
しかも浮気していたのに記念日を忘れて飲み歩いていた?ふざけないで!!
貴方が何をしていたかんてバレバレなのよ!相手が雑貨屋の娘のミグだって事も全部ね!!」

ララは怒りで叫ばずにはいられなかった。
真っ青な顔で呆然とするリックを睨みつけていれば無意識に涙が流れ出す。

「教えあげるわ。昨日の私の一日を…。よ~く聞かないと後悔するから気をつけなさい!」

ララはメリーとサムと一緒に買い物に出かけカフェでリックとミグを見た事から話し始めた。

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