すべて計画どおりです。

みにゃるき しうにゃ

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 それはまるで、よくあるお話の一場面。
「数々のお前の冷たさ、意地の悪さにはほとほと愛想が尽きた。公爵令嬢レティーシャ、お前との婚約、ここで破棄する!」
 ここは王立学園のダンスホール。今日は卒業パーティーの日。
 さっきの言葉を叫んだのは、わたしの横に立つこの国の第一王子ユークリフ様。正義感が強くて優しい、文武両道のイケメン。
 そして目の前にいるのは、彼の婚約者のレティーシャ様。とても美しい方で、プライドも高い。
 レティーシャ様は、ユークリフ様の言葉を静かに聞いていた。そして話し終わるのを待ってから、ゆっくりと口を開いた。
「可笑しなことをおっしゃいますのね、殿下。わたくしはそちらの男爵令嬢に礼儀を諭した覚えはございますが、冷たくしたり意地悪をしたことなどございませんが」
 扇子で口元を隠しながら、レティーシャ様はにこりと目で笑う。公爵令嬢という身分の高さから、その笑みを怖いと思ってしまう人達はたくさんいるはず。
 ちなみにわたしはちっとも怖くなんてないけど。
 でもここは怖がったふりしてユークリフ様に寄りかかろう。
 顔を伏せて、ユークリフ様の服の端なんかちょっと握りしめちゃったりなんかして。
 するとユークリフ様もわたしの腰に手を回して、抱き寄せてくれたりなんかしてくれる。
「お前のそういうところが冷たいというのだ」
 ユークリフ様の台詞に、レティーシャ様は大きく息を吐いた。
「そもそもわたくし達の婚約は、王家と公爵家との取り決め。それを勝手に殿下が破棄出来るものではありません」
「心冷たく悪心を持つ者を我が伴侶になど。正式な手続きは後日となるが、皆の集まるここで己の意志を告げたのだ」
 学園の卒業パーティーだから、ホールには卒業生と関係者がたくさんいる。そして喋っているのはこの国の第一王子だから、当然みんな静かにその言葉を聞いている。
 静かにって言っても、時々ざわついたりヒソヒソと話したりはしてるけど。
「そう……ですか。分かりました。元々この婚約は先程も申しましたように、王家と公爵家のもの。殿下とわたくしでなければならない訳ではありません。その旨、わたくしからも父に伝えましょう」
 レティーシャ様は小さく息を吐いてそう言った。
 ちょっとあきらめが早過ぎない? これじゃあわたしが全然目立ってないんだけど。
 わたしは慌てて目の端に涙を浮かべてユークリフ様を見上げる。
「ダメですユークリフ様。レティーシャ様を許してあげて下さい。わたしは平気ですから」
 そんなわたしに気がついて、ユークリフ様は愛しそうに微笑んでわたしを見つめてくれる。
「優しいな、フィオナ。だがお前は気にすることはない」
 きっとこの場にいる誰もが気づいただろう。ユークリフ様がわたしを愛していることを。
 わたしはひとまず満足して、みんなに見えないようにほくそ笑んだ。


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