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しおりを挟むうるうると瞳を潤ませて、わたしはユークリフ様を見上げた。
ユークリフ様はびっくりしてオロオロと、わたしに手を伸ばす。
「君には本当に感謝している。だが、いやだからこそ君には幸せになってもらいたい」
なに言ってるんだか、この人は。
「感謝されるのは、嬉しいですけど、わたしの幸せはユークリフ様と共にあることです」
ポロリと涙をこぼしながら、胸の前でギュッと両手を握りしめる。
見つめていたユークリフ様と目がパチリと合ったのを確認して、俯きポロポロと涙を流す。
「!」
驚いたユークリフ様がわたしに手を伸ばそうとしたところで、わたしは後退り、首を振った。
「申し訳ありません。本当は分かってるんです。わたしなんかじゃユークリフ様に釣り合わないこと」
ま、実際そうよね。第一王子と男爵令嬢じゃ、身分差があり過ぎる。
けどね、今回の計画に乗ったのはユークリフ様のことが好きだったからなの。じゃなきゃこんな役、引き受けるわけないじゃん。
「ですがわたしは、ユークリフ様と……」
声を詰まらせ涙を流すわたしを、ユークリフ様はどんな思いで見ているだろう。
「陛下。私は娘に甘いです。ええ、娘が今回の計画に参加すると言って頷いたくらいに」
お父様が陛下に頭を下げ、訴える。
「ですから陛下。なにとぞ、ユークリフ様を我が男爵家の婿養子に」
王様はたぶん、ユークリフ様を公爵か侯爵あたりの養子にって考えてたと思う。でも真面目なユークリフ様は、高位貴族じゃ納得しないと思うんだよね。
だって王様の息子だってことは変わりないもの。位が高かったら、ルイス様が気に入らない人達が屁理屈こねてユークリフ様を担ぎ上げ安い。
もちろん屁理屈こねるような人達は、ユークリフ様が平民になったとしても担ぎ上げて操ろうとするだろうけど。
それでも身分が低いほうがそういうことに巻き込まれにくいんじゃないかな。
キッパリと王位継承権を放棄したユークリフ様にとっては、要らない争いの種は少ない方が良いだろうし。
陛下がユークリフ様に視線を向ける。ユークリフ様は頭を下げ、ゆっくりと伝えた。
「フィオナが望むのでしたら、私は男爵家の婿養子に入りたく思います」
待ってました、その言葉。
ユークリフ様が責任感だけで言ってるのは知ってる。わたしに対して恋愛感情がないことも。
でもそれが何? 本来貴族の娘なんて政略結婚がほとんどで、恋愛結婚の方が珍しい。だけど結婚した後で愛を育む夫婦だってたくさんいる。
だったら今はわたしの片思いでも、愛を育むことは出来るわ。
「嬉しいです、ユークリフ様」
頬を染め、涙を浮かべながらユークリフ様へと手を伸ばす。
わたし達が結婚したら、人々はきっとユークリフ様のことを『王位継承権を捨て身分を捨ててまで愛を選んだ』と噂するだろう。
純愛物語として小説や舞台なんかにもなるかもしれない。
そうなればきっとユークリフ様の悪い噂も消えるだろう。
ユークリフ様はわたしの手を取り優しく微笑んでくれた。
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