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標準語訳?
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しおりを挟む大急ぎで教室に戻って、鞄に付けていたあみぐるみをひったくって人のいない所を探す。空いてる教室を見つけたから、こそっとその中に入り込んだ。
「妖精さん、出てきてよ」
あみぐるみに呼びかけたら、ポンと顔がタカキの顔になった。
「ふみかの記憶が変わってないんだけど、なんで?」
あんまり時間がないから、単刀直入に聞く。妖精さんは、びっくりしたような顔してわたしを見てる。
「ふみかって、誰?」
のんきに首を傾げて言う妖精さんにイラっとする。
説明しなかったっけ?
「昨日タカキにはもう彼女がいるって言ったじゃん。それがふみかなのよ」
つい声が大きくなりそうになるのを慌てておさえた。誰かに聞かれたら、困るもん。
妖精さんは納得したように「ああ」と頷く。
「その子の記憶が変わってないと何かまずいの?」
て、まずいに決まってるじゃん。
「話がおかしいことになるでしょっ。タカキはわたしと付き合ってるって思ってるのに、ふみかがタカキと付き合ってるって言ったら」
けど、妖精さんはわたしの言いたいことがよく分からないみたいできょとんとしている。
「言っても、彼氏はキミのことを好きになってるんだから、その子が嘘ついてると思うだけだよ。そんな記憶もないはずだし」
にっこり笑って妖精さんが言う。
ふみかが、嘘を言ってることになる?
確かにそうかもしれない。タカキはふみかじゃなくて、わたしと付き合い始めたと思ってる。朝の登校を約束したのも、わたしとしたと思ってた。なのに、ふみかに付き合ってるのも登校の約束したのも自分って言われても、それは嘘にしか聞こえないはず。
だけど。
「ふみかはそんな嘘つく子じゃないし、かわいそうじゃん。そりゃ、わたしのわがままな言い分っていうのは分かってる。けど、ふみかとは仲良しなの。タカキをとった上に嘘つき呼ばわりなんてしたくない……」
タカキのこと好きだから、ふみかにだって渡したくない。それでもふみかも、小さい時からの友達だもん、好きなんだもん。
「じゃあ、キミはどうしたいんだい?」
妖精さんが腕組んで言う。
「だから、ふみかにも最初っからふみかじゃなくてわたしがタカキとつきあう事になってたって思わせてよ」
そしたらふみかだって、悲しいかもしれないけど訳の分からないまんま嘘つきよばわりされる事はなくなるじゃん。
だけど妖精さんは困ったように顔をしかめて首を振った。
「オレは、恋の相手なら多少魔法をかけることは出来るけど、それ以外の人間には関わっちゃいけない事になってる。残念だけど、ふみかって子の記憶を操ることは出来ないよ」
そんな。
「じゃあ、どうしたらいいの?」
このままだったら、ふみかが嘘つきになってしまってかわいそうだし、けどだからって元に戻すのは絶対嫌。
「どうしよう? ふみかが嘘つきにならないで、タカキとわたしが両想いになる方法。なにかないの?」
必死に考える。妖精さんは考えてくれてるのかくれてないのか、ただじっとこっちを見ている。
早くしないと昼休みが終わる。昨日の出来事はもう、ふみかの記憶は変えられない。だとしたら。
「妖精さん、タカキの方は記憶、変えられるのよね? そしたらタカキの記憶変えて。昨日までの記憶は本当の記憶に戻して。それで、今朝ふみかの所に迎えに行こうとしていたタカキをわたしが待ち伏せしてタカキに告ったっていう事にして。それでタカキは本当はふみかよりわたしの事が好きなんだったらわたし達が付き合いだしてもおかしくないよね?」
そこまで言った時、チャイムが鳴った。
「キミがそれでいいならそうするけど、本当にそれでいいのかい?」
妖精さんの言葉に頷く。今はこれしか思いつかないもん。
「分かった、それじゃあそうしよう」
「放課後までに、記憶変わる?」
急いで確認する。放課後、ふみかとタカキと話しする予定だからそれまでに変わってないと困る。
「大丈夫、間に合うよ」
妖精さんはにこりと笑った。
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