気が付いたら魔物に城を落とされ追われるお姫様になった夢を見ていました。……夢だよね?

みにゃるき しうにゃ

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 ミルファの姿が見えなくなると、再び不安が襲ってきた。でもだからって怯えて泣いてばかりもいられない。

 膝を抱え頭を伏せながら、もう一度状況を考えてみた。

 わたしはたぶん、本当は日本の女子高生だ。ここは夢の中で、ここではわたしはお姫様。王国は魔王に襲われていてわたしは今、魔物から逃げている。ミルファはわたしの分身。

 ……ここは、夢の中。

 なのになんで、いつまでたっても目が覚めないんだろう。

 日本のわたしはたぶん、バーガーショップにいるはずなのに。うたた寝で見る夢にしては長すぎない?

 ああでも、そういえばそんな話を授業で習ったっけ? 何十年も過ごしたと思ってたのに、ほんの一瞬うたた寝した間の夢だったって感じの話だったと思う。

 じゃあ今わたし、それを体感してる途中なのかな。

 ……早く目、覚めないかな……。

 うつらうつらと、そんな事を考える。夢の中でうたた寝なんて変と思いつつ、それでもいつの間にか瞼がつぶれる。

「おい、大丈夫か?」

 突然声を掛けられ、ビクリと目が覚めた。顔を上げると、知らない男の人がわたしを覗き込んでいる。

 悲鳴を噛み殺し、わたしは後ずさろうとした。けど後ろは岩肌で、それ以上は下がれなかった。

 目の前にいる男の人は、ファンタジーとかに出てくる鎧のような物を身に着けていた。まだ、夢の中なんだ。

「こんな所で、どうしたんだ?」

 半分心配そうに、半分訝しげにその男の人は尋ねてくる。

 わたしは羽織っていた外套の前を掻き合わせ、その男の人を睨んだ。なんせ外套の下は下着だけだ。あまりこちらを見ないでほしい。

 だけど目の前の人に邪な感情は見て取れなかった。だから、訳を話しても良いのか、迷った。

「お嬢様っ」

 その時ミルファがバタバタと駆け寄ってきた。

「大丈夫でございますか?」

 わたしをかばうように立ち、ミルファはその騎士を睨んだ。すると騎士の陰から一人の少年が、彼を守るように前へと出た。

「よせ、ガシャヤ」

 騎士は従者と思しきその少年に制止をかける。すると逆らう事なく少年はまた、騎士の後ろへと下がった。

「我々は彼女をどうこうするつもりはない。ただ、こんな所に若い女性がうずくまっていたから驚いて声を掛けただけだ」

 騎士の言葉にミルファはゆっくりと頷いてわたしの傍へと控えた。

 わたしは深呼吸をして、目の前の騎士を見据える。

「ご心配いただき、ありがとうございます。……実は、川で服を流されてしまいまして……。それでこの子に着替えを頼んで待っていたところだったのです」

 あまり深くまで訊いてきませんようにと思いつつ、慎重にわたしは言葉をつなげた。すると騎士は一瞬わたしの身体を凝視し、それからパッと後ろを向いた。

「失礼。そうとは露知らず。どうぞ、お着替え下さい」

 そうは言いながら、騎士も少年もそこを動こうとはしない。それに気づいたミルファが厳しい声で二人に言う。

「そこにいられてはお嬢様の着替えが出来ません」

 幾ら向こうを向いているとはいえ、男性のすぐ傍での着替えはやはり恥ずかしいし、今あったばかりの人をそこまで信用もしていない。

 しかし騎士は振り向くことなく言った。

「誓って。着替え終わったと声を掛けていただくまでそちらを見ません。こんな場所に女性二人を放って行って、万が一の事があったとしたら後悔してもしきれません」

 だからこの場を立ち去る事は出来ないと騎士は言う。

 心強いような、胡散臭いような複雑な気持ちでわたしは彼の背中を見た。

 そして思い出す。昨日、なんの力もなさそうな一般の農家の女性を遠目でちらりと見ただけであんなに怖かったのに、この背中を向けた騎士とその従者にはあの恐怖を感じない。さっきは突然声をかけられ驚き悲鳴をあげはしたけれど、昨日感じた恐怖は声さえあげてはいけないと感じる恐ろしさだった。

 たぶんこの人達は信用しても大丈夫。

 そう感じたわたしがミルファに目をやると、彼女も神妙な顔つきではあるものの、ゆっくりと頷いた。


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