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乙女ゲー転生したけど嬉しくありません。
しおりを挟むやっと戦いが終わった。
今は亡きウィリス王国の唯一の王族の生き残りのライマール。ライマールの影となり彼を守ってきたファトリ。敵である邪竜教団の幹部だったのにそこから追放され、わたし達の仲間になったウリグル。傭兵として雇われわたし達に力を貸してくれ、実は隣国の王子だったリクフラト。
そして邪竜の花嫁として生贄にされかけたところを助けられたわたし、カルフィーナ。
みんなの力を合わせ、邪竜を打ち倒す事が出来た。邪竜がいなくなれば教団も存続が出来ずに解体される。
わたしはそっと、傍に立つライマールに寄り添った。
「カルフィーナ」
愛しい人が、わたしの名前を呼ぶ。
戦いの中、わたし達は惹かれあい、想いを通じ合わせた。
「ライマール。愛しているわ……」
風が吹く。どこからともなく花びらが舞い散る。
そしてエンディングテーマが流れ始める……。
ん? エンディングテーマ……?
そこでわたしは、我に返った。というか、前世を思い出した。
え? え? これってわたしが大好きだった乙女ゲーム『邪竜の花嫁』のライマールのグッドエンド??
「? カルフィーナ?」
突然固まったと思ったらオロオロし始めたわたしに、ライマールが心配そうな顔を向けてくる。
「ご、ごめんなさい。ちょっと混乱して……」
言い訳にもならない言い訳をしながら、わたしはぐるぐる回る頭を抱えた。
カルフィーナ、イコールわたしは、この乙女ゲーのヒロインだ。つまりわたしはヒロインに転生したってことだ。
よくある乙女ゲー転生ものに付きものの悪役令嬢はこのゲームには登場しない。だからラノベでよくあるヒロインが悪役令嬢にざまぁされるなんて展開もない。しかも現在の状況は、グッドエンドのエンディング中だ。後は結ばれた攻略対象とのラブラブな日々が待ってるのみだ。
そして、結ばれる相手は、わたしの最推しのライマール……。
わたしはちらりとライマールを見た。彼は相変わらず様子のおかしいわたしを心配そうに見つめている。
ああ……!
ボロボロとわたしの瞳から涙がこぼれ落ちた。
前世のわたしは、本当にライマールが大好きだった。
何度シナリオに胸をキュンキュンいわせ、立ち絵の表情に胸躍らせ、スチルに悶絶したことだろう。ファンディスクも設定イラスト集も買い、同人誌にも手を出した。
他のキャラも好きだけど別格でライマールが好きで、何度ライマールルートを周回したことか。
前世を思い出してしまったわたしは、涙を止めることが出来ない。
ああ、神様……!
なんてことしてくれてんのよー!
ぶっちゃけ前世のわたしは二次元オタクだった。
二次元だから、イラストだから萌えたんであって、現実の生身の人間なんて必要ないんだよーっっ。
レイヤーさんがライマールのコスしてても、『あー、ライマールのコスしてんなー』くらいで別にキョーミなかったし。
わたしが好きなのはあくまで、ゲームの二次元のイラストのライマールなんだよぅっっ。
突然泣きだしたわたしに、ライマールは驚きながらも「邪竜が倒れて緊張の糸が切れたんだね」なんて言いながら、優しく抱きしめにかかる。
いや。ちょまっ。やめれ。
言いたいけどさすがに言えない。前世を思い出す前までは、キスもまだだったとはいえ両想いだった相手だ。
まさか抱きしめられて「キモイからやめて」とは言えるはずがない。
けど、ダメ。生身の男、ダメ。
ああ神様。なんでわたしをヒロインに転生なんてさせたの? もしくはなんて前世を思い出させたの?
もう二度と二次元のライマールは拝めないの? ゲームのライマールに会えないの? 設定資料集にあったあの色気ムンムンライマール、見れないの? 美麗スチルは拝めないの?
ああ、ああ。
神様の、おばかーっっ!!
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