独身彼氏なし作る気もなしのアラフォーおばさんの見る痛い乙女ゲーの夢のお話

みにゃるき しうにゃ

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戒夜とあれこれ探索 その3

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 次の日、結局通常通りに戒夜とぶらり街を歩く事になった。

 だけど計画なしに歩き回るのは戒夜の性に合わないようで、彼は渋い顔をしている。

「……目的無しに歩いても良い成果が得られるとは思えません」

 無駄な事をしていると言わんばかりに言うけれど、じゃあ何を目的にすればいいのかと訊かれても、わたしにはどうすれば良いのか分からない。

 いや、本当はこうやって二人きりで歩いてるのが目的だったりするんだけど。

「けどさ、リスト絞ったとしてその候補者たちとどうやって会うつもりだったの?」

 ふと疑問に思い訊いてみる。

「この島で〈救いの姫〉と〈唯一の人〉の伝説について知らない者はいません。召集を掛ければほとんどの者が集ってくれます」

「そうなの?」

 当然とばかりに戒夜が言う。だけど、それにしてはなんか他の人達って伝承について他人事みたいって言うか対岸の火事って言うか、わたし達の事にタッチしてないような気がするんだけど。

 けどまあそれは、わたしの見てる夢だからわたしの想像力が足りてないか、面倒くさがってモブキャラは動きがないってのが本当のところなんだろうな。うん。深く考えるのはやめとこう。

 そんな事を考えてたら不意に戒夜が質問してきた。

「姫に〈救いの姫〉としての記憶がないのは封印されているのだと仮定して、思い出すきっかけとして何かこれまで気になった物や風景はありませんでしたか?」

 突然の質問にちょっと頭が空回りする。きっと戒夜は〈唯一の人〉候補を絞るのが難しいなら、わたしの記憶を刺激して思い出させる方法をと思ったんだろう。

 さすが頭が良いというか、若くて柔軟な考えが出来るというか……。

 さすが戒夜「賢いなぁ」と彼を見上げ、考える。うーん、気になったもの…あったっけ?

「特にこれといって思いつかないけど」

 そんな事を言いつつ、結局目的もなく歩く。

 元々わたしはあんまりお喋りな方じゃない。というか、どっちかって言うと無口だ。それは戒夜も同じなのか、その後どちらも口を開くことなく、黙々と歩く事になってしまった。なんか気まずい。なんか喋らないと。

「えーと、空の小鬼ってどのくらいの数がいるの?」

 なんとか話題を絞り出し、口にする。

 空鬼はたぶんボスで一人なんだと思う。で、小鬼は手下なんだろうと思うんだけど、いわゆる雑魚キャラで数え切れない程いるのかそれとも中ボスもしくは主な手下で数人しかいないのか……。

「残念ながら正確な数は分かりません。透見ならもう少し知っているかもしれませんが……」

 戒夜の答えを聞いて、ちょっと意外だった。インテリなイメージがあったんで知識関係は彼が一番かと勝手に思い込んじゃってたせいなんだけど、透見の方が詳しいんだ……。

 にしても、どのくらい数がいるのか分かんないのか。

「……あんまりわらわらいないといいんだけど」

 そんな言葉がつい出てしまう。だってわたしは論外、棗ちゃんを入れてもこっちは五人しかいないのに、小鬼が百人も千人もいたらちょっと、いやかなり困るよね。

 空に浮かんだ小鬼を思い出し、胸が苦しくなる。たった一匹に会っただけなのにこんなに怖がってどうするのよわたし。

 動悸を鎮めるために大きく息をつき、ふと思い出した。

「神社」

「は?」

 唐突なわたしの言葉に戒夜が眉をしかめる。

「神社だよ神社。あそこで休憩した時に見た風景がなんか見覚えあったような……」

 懐かしかったような気がする。

 単にゲーム画面で見た景色が2Dでなく3Dになってたからそんな風に思ったのかもしれないけど、それなら他の場所も同じように感じてもいいはずなのにあんな風に感じたのはあの場所だけだった。

「神社ですか……」

 ふむ、と考えるように戒夜は呟いた。

「確かにあの神社は古くからあるものですし、〈救いの姫〉や〈唯一の人〉となんら関わりがあるのかもしれません。帰ったら透見に訊いてみましょう」

 そう言うと戒夜はくるりと踵を返した。

「え? 帰るの?」

 戒夜とはまだほどんど仲良くなってない。というか、交流していない。時間もまだまだあるのにこのまま帰っちゃうのはもったいない気がする。

 そう思ってぐずぐずしているわたしに戒夜は振り向き言った。

「いえ、神社へ行きましょう。小鬼に遭遇した場所ですからリスクはありますが、姫が何か感じたというのなら行ってみる価値はある」

 そう言うと戒夜は再び歩き出し、わたしは慌ててその後を追った。


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