異世界に飛ばされちゃったわたしは、どうもお姫様の身代わりに花嫁にされちゃったらしい。

みにゃるき しうにゃ

文字の大きさ
57 / 59
たぶん最終章、レースの魔法の女神様の再来と呼ばれるのは また別のおはなし。

その22

しおりを挟む



 わたしが黙り込んでいると、クロモは言い辛そうに口を開いた。

「君を向こうの世界に送り返せば、それが最後になるだろう」

 ガンと頭を殴られたみたいな気がした。

 クロモはわたしに、もう二度と会えなくなってもいいと思ってるんだ。

 そんなマイナス思考に捕らわれて、顔を青くしているわたしに気がついたクロモが、慌てて説明を加える。

「大変だからとか迷惑だからとか、そういう事ではない。これを見てくれ」

 そう言ってクロモは、もう一度向こうの世界を映す魔方陣を編み上げた。この間と同じ、ショッピングセンターの連絡通路が映っている。

「通路の奥によく見ると、人がいるだろう?」

 確かに。曲がり角の奥に、人影が見える。けど、それがどうしたんだろう。

「あの人影にほとんど動きがない」

 ?

「うん?」

 クロモの言いたい事が分からない。

「この魔方陣は、今現在の様子を映している」

「うん」

「なのにあの人影は、歩いているように片足を上げたまま、ほとんど動いていない」

「? 静止画じゃないの?」

 連絡通路は特に動くものはないから、その人影でしか確認は出来ないけど、確かにクロモの言うようにその人影は動いているようには見えない。

「静止画?」

 映し続けるのは疲れるのか、魔方陣を消してクロモが尋ねてきた。

 そっか。こっちの世界じゃ静止画って言っても分かんないのか。

「言葉の通り、静止している状態の画像だよ。写真……は、この世界にはないのかな。えーと、その部分でピタッと止まった状態の画像」

「そんな魔法があるのか。なんの為に?」

 クロモが不思議そうに首を傾げる。

「魔法じゃないけど。前にも言ったけど、わたしの世界は魔法がない代わりに道具とかが発達してたのね。で、絵みたいに紙に風景を映しとる機械が出来て? その後動くものを映す機械も出来て? うーっ、説明難しい。あ、なんの為に、だっけ? それは記念に残したり記録として残したりとかかな。こっちのにも肖像画とか風景画とかない? それと同じだよ」

 わたしの説明に、クロモは「なるほど」と頷く。

「それでこの画像がどうかしたの?」

 尋ねるとクロモは再び難しい顔をした。

「この魔法はその静止画というのを映すものではない。今現在起こっていることを映す魔法だ」

 ? ライブ映像ってこと?

「え? でもさっきの人、あんな中途半端なポーズで止まるなんて。よっぽどの人じゃないと出来ないでしょ」

 パントマイムとかやってる人なら出来るかもしれないけど。あんな所でする意味ないし。

「どうも、あちらとこちらの時間の流れが違うようだ」

 時間の流れが違う? 浦島太郎みたいに?

「正確なスピードは分からないが、止まって見える程という事はあちらはかなりスピードが遅い。今君を送り返せばおそらく、召喚したのと同じ日か翌日くらいに帰れるだろう」

「それって、向こうじゃわたしはまだ行方不明にはなってなくて、誰にも心配かけてなくて迷惑もかけてないってこと?」

 お父さんにもお母さんにも、友達にも先輩にも誰にも心配も迷惑もかけてない。

 良かったと喜びかけた時、クロモが辛そうな顔をして言った。

「だから君を向こうに帰したら、もうこちらには呼べない」

 だから?

「え? なんで? なにがだからなの? 召喚されてこっちで長い時間過ごしても、ほぼ同じ時間に帰れるなら、気軽に呼んでもらっても他の人に迷惑かけなくてすむと思うんだけど」

 クロモにも会えて、お父さんお母さんにも心配かけない。良いことだらけじゃないの?

 だけどクロモは首を横に振る。

「よく考えろ。ここに来て数か月、だけど向こうでは一日経ってないかもしれないんだぞ。スピードが違い過ぎる。こちらが半年に一度君を呼んだとしても、君にとっては毎日のように呼ばれるかもしれない。それだけではない。君はその度に歳をとっていく俺達を見る事になる。……君の世界で一年、いや半年しない内に、俺達はもう生きていないだろう」

 …………は?

 頭の中が真っ白になった。

 なにそれなにそれなにそれ。

 あっちで半年過ごしたら、クロモはもう、いない……?

 だばっと涙があふれ出た。

 会えなくなるなんて、やだ。でも。

「すまない。だが事実だ」

 クロモが辛そうに顔を歪める。

 帰りたくない。でも。

 でももうお姫様の身代わりをしなきゃいけない訳じゃない。レースの編み方だってお姉さんがマスターしている。

 わたしがここに残る理由が、ない。

「十日後に、君をあちらに送る準備をする。そのつもりでいてくれ」



 帰る方法を探してくれって言ったのはわたしだ。クロモはちゃんと、それに応えてくれただけ。

 わたし自身、帰りたい気持ちは変わらず持ってる。当たり前。だっていきなりこの世界に飛ばされちゃったんだもん。両親にも友達にも先輩にもお別れの挨拶とか出来なかったんだもん。

 それでも、わたしの心はこの世界と別れるのも嫌がってる。クロモともう会えなくなるなんて、嫌だ。

 どうしてあっちとこっちでそんなに時間の進む速さが違うの?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...