18 / 32
ミッドナイトミッション
告白
しおりを挟む
「お兄ちゃん、朝ですよー!」
扉の前でリンカの声が響き渡る。
リンカの甲高い声も次第にミコトは鬱陶しいと思うようになってしまっていた。
――布団から起き上がるのも辛い……。学校……休もうかな……。
「お兄ちゃん、朝ご飯ですよー」
甲高い声でリンカは再びミコトに告げた。
「どうせ、また……ノノちゃん風味だろ?」
ミコトはノノちゃん風味の料理を食べたいと思わなかった。
「そうですけど……あ、マドカちゃん来ましたよ!」
それを聞いてミコトは仕方なく体を起こし上げた。
「……今日は朝飯いらないから」
カーテンの合間から微かに漏れる日差しがミコトの顔を照らした。ミコトは太陽の熱を感じ、うんざりしながら学校へ行く準備をした。
「今日のお兄ちゃんは元気がないですね……」
リンカは少し寂しげな表情でミコトの背中を目で追った。
「おはよう、ミコト」
玄関で待っていたマドカが扉を開けて挨拶をした。
「……明日から迎えに来なくていいから」
ミコトはぶっきらぼうに告げると、玄関へと歩き出した。
この狂った世界の当たり前のような日常にミコトは苛立ちを感じた。
「どうしたの?急に」
後を追うマドカは、状況を飲み込むことが出来ず不思議な表情を浮かべる。
「どうせ、あの世界の思い出を話したところで、マドカはわかってくれないんだろ?フェンダーもタソもミドリのこともどうせ忘れているんだろ?」
ミコトがマドカに向かって叫ぶように聞いた。
それを聞いたマドカは、立ち止まった。そして、下唇を軽く噛んで静かに口を開きだした。
「……ミコト、今日放課後、屋上に来てちょうだい」
ミコトは足を止めてマドカの顔を見た。
「……屋上?」
「……話をするわ」
そう言うと、マドカは再び歩きだした。
――話?一体何の?
ミコトは不思議に思った。
「手、良いかしら」
マドカはミコトと手を繋ぎたかった。
「あ、ああ」
ミコトはマドカの手を軽く握り、再び歩き出した。
放課後、ミコトは屋上へと向かった。
屋上の入り口のドアを引くと、新しい風が吹いてきて、ミコトの髪を揺らした。
ミコトは屋上を見渡した。フェンスの直ぐ傍にマドカの後ろ姿が見えた。
マドカの履くスカートの裾がひらひらと風で揺れて、透き通る髪の毛が奇麗になびいていた。
「待たせた」
ミコトはマドカの後ろ姿に向けて言った。
「ミコト、来たわね」
マドカはそう言ってミコトの方へ振り向いた。
「……話って?」
まだミコトの憂鬱な気持ちは晴れていない。
「屋上にまで呼び出して悪いわね」
マドカが近づいてくる。
そして、言った。
「SPACE‐F‐の思い出、私、忘れてなんかいないの。寧ろ、鮮明に覚えているわ。タソも、フェンダーもミドリもとても大切な仲間。……そして、仲間であるミコトのことを好きになってしまったみたい……いいえ、好きよ。好きなの。もっとそばに居たかった……でも、それも無理のようね。私のわがままでこの世界にひびが入ってしまったわ……」
マドカの姿は海鳥のようにどことなく儚かった。
マドカは続けて言った。
「この世界は全て私のわがままで出来ているの」
それを聞いたミコトは真剣な表情に変わった。
「……一体」
下唇を軽く噛んでマドカは言った。
「これ以上は深く詮索しないでほしいの。……これ以上知ってしまうとミコトが消えてしまうから……もう、何も言えないわ」
そして、マドカはミコトの唇に自分の唇を重ねた。
それは、突然のことで、ミコトは自然とキスを受け入れてしまった。
「マドカ……‼」
ミコトは咄嗟にマドカの名前を呼んだ。
「それでは、ミコト、さようなら。ミコト、貴方が好き……」
マドカはそう言うと、静かに屋上から去っていった。
ミコトは何も言えなかった。言えないまま、時が勝手に過ぎていき、気が付けばマドカはもう屋上にはいなかった。
ミコトは家に着くと、小さく「ただいま」と言い、玄関で靴を脱いだ。
リンカの甲高い声が聞こえてこない。どうやら、リンカはまだ帰ってきていないようだ。
ミコトは静かに階段を上った。
屋上で交わしたキスの感触が仄かに残っていた。ミコトは自分の唇を触って、さっきのキスは本当だったのかと確認した。唇に触れた指を見ると薄桃色のリップが付いていた。
――マドカが俺を好きだったなんて、知らなかった……。
ミコトはキスを思い出して、ほんの僅かだが胸が騒いだ。そのまま、ベッドに仰向けにダイブして天井を見つめた。そして、ポケットからスマートフォンを取り出して、ワンマカの金色アイテムのキーホルダーを眺めた。
――あの時交換したワンマカのキー、俺が持っているのが青色じゃなくて金色ってことは、俺達、繋がっているんだよな……、レノ……あの時、俺達は一体、どうしたら良かったんだ……?
ミコトは金色のキーホルダーを眺めて、キーホルダーを人差し指で軽く揺らした。
左右にキーホルダーが揺れていく。
右、左、右、左……右……左……右……左――
――なんだか催眠術にかかりそうな感覚だ……眠い……。
気が付けばミコトはベッドで目を閉じて眠りについていた。
扉の前でリンカの声が響き渡る。
リンカの甲高い声も次第にミコトは鬱陶しいと思うようになってしまっていた。
――布団から起き上がるのも辛い……。学校……休もうかな……。
「お兄ちゃん、朝ご飯ですよー」
甲高い声でリンカは再びミコトに告げた。
「どうせ、また……ノノちゃん風味だろ?」
ミコトはノノちゃん風味の料理を食べたいと思わなかった。
「そうですけど……あ、マドカちゃん来ましたよ!」
それを聞いてミコトは仕方なく体を起こし上げた。
「……今日は朝飯いらないから」
カーテンの合間から微かに漏れる日差しがミコトの顔を照らした。ミコトは太陽の熱を感じ、うんざりしながら学校へ行く準備をした。
「今日のお兄ちゃんは元気がないですね……」
リンカは少し寂しげな表情でミコトの背中を目で追った。
「おはよう、ミコト」
玄関で待っていたマドカが扉を開けて挨拶をした。
「……明日から迎えに来なくていいから」
ミコトはぶっきらぼうに告げると、玄関へと歩き出した。
この狂った世界の当たり前のような日常にミコトは苛立ちを感じた。
「どうしたの?急に」
後を追うマドカは、状況を飲み込むことが出来ず不思議な表情を浮かべる。
「どうせ、あの世界の思い出を話したところで、マドカはわかってくれないんだろ?フェンダーもタソもミドリのこともどうせ忘れているんだろ?」
ミコトがマドカに向かって叫ぶように聞いた。
それを聞いたマドカは、立ち止まった。そして、下唇を軽く噛んで静かに口を開きだした。
「……ミコト、今日放課後、屋上に来てちょうだい」
ミコトは足を止めてマドカの顔を見た。
「……屋上?」
「……話をするわ」
そう言うと、マドカは再び歩きだした。
――話?一体何の?
ミコトは不思議に思った。
「手、良いかしら」
マドカはミコトと手を繋ぎたかった。
「あ、ああ」
ミコトはマドカの手を軽く握り、再び歩き出した。
放課後、ミコトは屋上へと向かった。
屋上の入り口のドアを引くと、新しい風が吹いてきて、ミコトの髪を揺らした。
ミコトは屋上を見渡した。フェンスの直ぐ傍にマドカの後ろ姿が見えた。
マドカの履くスカートの裾がひらひらと風で揺れて、透き通る髪の毛が奇麗になびいていた。
「待たせた」
ミコトはマドカの後ろ姿に向けて言った。
「ミコト、来たわね」
マドカはそう言ってミコトの方へ振り向いた。
「……話って?」
まだミコトの憂鬱な気持ちは晴れていない。
「屋上にまで呼び出して悪いわね」
マドカが近づいてくる。
そして、言った。
「SPACE‐F‐の思い出、私、忘れてなんかいないの。寧ろ、鮮明に覚えているわ。タソも、フェンダーもミドリもとても大切な仲間。……そして、仲間であるミコトのことを好きになってしまったみたい……いいえ、好きよ。好きなの。もっとそばに居たかった……でも、それも無理のようね。私のわがままでこの世界にひびが入ってしまったわ……」
マドカの姿は海鳥のようにどことなく儚かった。
マドカは続けて言った。
「この世界は全て私のわがままで出来ているの」
それを聞いたミコトは真剣な表情に変わった。
「……一体」
下唇を軽く噛んでマドカは言った。
「これ以上は深く詮索しないでほしいの。……これ以上知ってしまうとミコトが消えてしまうから……もう、何も言えないわ」
そして、マドカはミコトの唇に自分の唇を重ねた。
それは、突然のことで、ミコトは自然とキスを受け入れてしまった。
「マドカ……‼」
ミコトは咄嗟にマドカの名前を呼んだ。
「それでは、ミコト、さようなら。ミコト、貴方が好き……」
マドカはそう言うと、静かに屋上から去っていった。
ミコトは何も言えなかった。言えないまま、時が勝手に過ぎていき、気が付けばマドカはもう屋上にはいなかった。
ミコトは家に着くと、小さく「ただいま」と言い、玄関で靴を脱いだ。
リンカの甲高い声が聞こえてこない。どうやら、リンカはまだ帰ってきていないようだ。
ミコトは静かに階段を上った。
屋上で交わしたキスの感触が仄かに残っていた。ミコトは自分の唇を触って、さっきのキスは本当だったのかと確認した。唇に触れた指を見ると薄桃色のリップが付いていた。
――マドカが俺を好きだったなんて、知らなかった……。
ミコトはキスを思い出して、ほんの僅かだが胸が騒いだ。そのまま、ベッドに仰向けにダイブして天井を見つめた。そして、ポケットからスマートフォンを取り出して、ワンマカの金色アイテムのキーホルダーを眺めた。
――あの時交換したワンマカのキー、俺が持っているのが青色じゃなくて金色ってことは、俺達、繋がっているんだよな……、レノ……あの時、俺達は一体、どうしたら良かったんだ……?
ミコトは金色のキーホルダーを眺めて、キーホルダーを人差し指で軽く揺らした。
左右にキーホルダーが揺れていく。
右、左、右、左……右……左……右……左――
――なんだか催眠術にかかりそうな感覚だ……眠い……。
気が付けばミコトはベッドで目を閉じて眠りについていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる