無力転移 --能力的チート一切無しだけど?--

ta92eda

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1.人生の終わり?いえいえ、始まりです。

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「・・・食わんのか?」
器を差し出しながら綺麗な・・・この世のものとは思えないくらいの美少女が俺を覗き込んでいる。
実際今、俺はめちゃめちゃ腹が減っている。
「・・・・・」
多分・・・間違いなく彼女は俺のことを心配してくれたいるんだろう。
こうして貴重な食糧を俺の為に提供してくれているし・・・
「・・・好き嫌いはいかんぞ?何でも食べな大きくなれん。」
いや、俺、もう17だし、成長期らしい成長期は既に終わってて今更大きくはならんて。
まぁ、こいつに悪気は無いんだ・・・心配してくれる姿が実際めっちゃ可愛い。
・・・だからといって・・・
「こんな気持ち悪い虫!食えるか!!」
そう、俺の前には・・・
巨大なヤシの実?みたいなのを半分にした器に並々と虫?の様な物が盛られている。
ってか、虫だよね?これ。
見た目カブトムシ?でも色が・・・
なんか、無駄にキラキラしてて、見る角度で色が変わる。
オマケに角の先から煙?吹いてるし・・・
「まったく・・・ウチの旦那様はワガママなんだから。」
「ワガママとか言う次元じゃ無いだろ!?これ!!」
煙を吹く奇っ怪な芋虫。やけに硬そうな脚がいっぱい生えとる。
「見た目は確かにアレだけど、美味しいのよ?」
そう言いながらひとつかみ、口に放り込む。
バリバリと噛み砕く音と一緒に何やら断末魔の叫び声みたいなのも聞こえる?
・・・(∩゚д゚)アーアーきこえなーい
「このちょっと苦い感じがまたウマ・・・」
口から虫の足が出てるよ・・・
「・・・では旦那様?食事はどうするのだ?」
流石にこれを食べる勇気は俺には無い。
んで、辺りを見回す。
少し離れた丘の上に大きな樹。その樹に木の実?くだものがなっている。
見た目、林檎の様な・・・あれでいいか。
そう思ってくだものに手をかける。
触ってみると林檎みたいな見た目なのに柔らかく、うっすらと毛?
うん、桃の様な感触だった。
「いやん♪」
・・・へ?
なんか、妙に色っぽい声が聞こえた。
・・・その桃?林檎?から。
思わず手を離す。
・・・・・
もう一度掴む。
「いやん♪もっと優しく♪」
・・・・・
なんか、これ、取っちゃあかん気がする。
「旦那様?どうした?」
「・・・いや、木の実?くだもの?がな?なんとなくエロい声発するんだが・・・・」
「それが何か?」
「・・・いや、何でもない。」
当然の様な反応。
え?おかしいの俺?
・・・そっか、この世界のくだものってエロい声出すのか。
「・・・でも、旦那様?本当にそれ、食べるの?」
「虫なんぞ食わされるよりはマシだ!」
「でもそれ・・・」
なんか赤くなってモジモジしている。
「何だよ」
シャクっ
「あぁん♪らめぇぇ♪」
「・・・・」
鬱陶しい果物だな。
「・・・そ、そうか。よかろう。」
なんか更に真っ赤になって・・・なんか可愛いかも。
・・・上半身だけ。
金髪、超美形な10代半ば位の女の子。
うん、上半身だけ。
下半身は・・・・病的なまでに白い身体に黒い模様。
さっき食ってた昆虫?芋虫?の様な脚が8本。
うん、巨大な蜘蛛。
ファンタジー小説とかによく出てくる定番の魔物。
アラクネってやつ。
全く、なんでこんな事になってんだろう・・・
「旦那様に求められるのも妻の務め。ウチとしても願ったりかなったり!」
何言ってんだ?こいつ・・・・って、なんか・・・

か、身体が熱い。

心臓の鼓動?段々激しく・・・

それに、下半身・・・その、所謂・・・息子?
やたら元気におっきして・・・

「旦那様が食した果物、あれはな、精力を高める作用があってな。
そりゃもうバイア◯ラなんて目じゃ無いくらいに一晩中ギンギンに。」
なんでバイア◯ラなんて知ってんだよ、ってか、そんなもん木に成るんかよ、ここいらは。
「よし、さぁ、お互いの愛を確かめ合おうぞ!」
あ、なんかヤバそげ?逃げないと・・・

逃げようと後退り・・・って捕まった!!
流石、蜘蛛。糸飛ばして来た。
普通の人間、帰宅部の期待のエースの俺だもん、避けれるわけ無いよね。
って、手から糸出してんじゃん。
ス◯イダーマンかよ。
蜘蛛ならお尻からだろ?普通。
しかも普通に捕まえるだけじゃなく糸で綺麗に亀甲縛りまでしてやがる。
「今夜は寝かさんぞ?」
いやちょっと待て!にじり寄って来るな!
「うぇっへっへ、安心しろ、喰い殺さぬ様に気をつけるから。」
ヨダレ垂らすな!折角の美人が台無しだろ!?上半身だけだけど。
「良いでは無いか!良いでは無いか♪」
「あぁぁぁぁぁぁぁれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」


なんでこんな事に・・・

俺、岸田智史は普通の・・・っていうか地味で目立たない高校生だった。
いや、ある意味、逆に目立ってた。
主にイジメの対象、都合の良いサンドバッグ。
あの日も学校の屋上でいつもの様に殴られてた。
無抵抗でいればそのうち飽きるだろうと痛みをこらえてたんだ。
でもなんか、エスカレートして・・・屋上から突き落とされた。
普通の学校?なんだろうか、屋上って4階の上。
要は5階程度の高さから落とされた訳で・・・
もっと高ければ落ちる間に気絶でもして痛いと思う前に逝けるのに・・・
なんて事を考えながら死の瞬間を迎えようとしてたんだ。
冷静過ぎないかって?
そう言われてもなぁ、生きていても何も良いこと無いし。
俺が死んでも誰も悲しまない。
家族は昔、事故で既に居ないし。
誰にも必要とされない・・・いや、彼奴らには必要だったかも。
ストレスの捌け口としてね。

猛烈な痛みと共に俺の一生も終わるのか・・・なんて考えて・・・
覚悟してたのに何時までたっても痛みは来なかった。
なんか、どんどん落ちて行く感覚。
実際はそんなに長く無かったんだろうけど、しばらく続いた落ちる感覚は突然終わった。
と言っても地面に当たってぷちっとなった訳じゃない。
ぼふん!!って感じ?
避難訓練で受け止められた感じに近い?
生き残ったってのと死ねなかったのとごちゃ混ぜ。
溜息吐いて立ち上がろうと・・・
動けない。
なんかね?ネバネバしたのがはっついてる。
いや、ネバネバしたのに貼り付いてる。
うん、俺がくっついてる。
捕えられた。

巨大な蜘蛛の巣に。

「おやまぁ、珍しいのが掛かったねえ。こんな森の奥でニンゲンとは・・・」
そんな声が頭上から聞こえる。
上半身はすっげえ美人。
すまんね、語彙が少なくて。
出るとこ出てて細いとこはキュッとしてて・・・
なんて言うんだっけ?そう、あれ。
ボンキュボンってやつ。
下半身?は大きな蜘蛛。
黒い体の全体的に短い毛が生えてて、そこに赤い模様が綺麗で・・・
上からボンキュボン+ボン!
そう、ボンキュボンボン、ボンキュボンボン!!
16ビートと言うより8ビート。
え?例えがわかりにくい?うん、俺もそう思う。
でもね?すっげえ綺麗だったんだ。
あぁ、コイツに喰われて死ぬなら良いかな?って思える位に・・・

「ん?なんだい?もう諦めるのか?逃げようとしないのかい?」
うん、お前に喰われて死ぬなら良いかなって・・・
「ふむ・・・」
なるべく痛く無いようにお願いね?
「・・・」
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