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三人目の兄[ソフィア視点]
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ユインティーナは自分を誘拐されやすい星の元に生まれてきたと言っていた。ならば一日違いで生まれた私は家を渡り歩く星の元に生まれてきたのだろう。
最初の一回は私も彼女も気が付かない内に行われていた。彼女は5歳の時に暗殺者集団に誘拐され、私は5歳の時にクリスティーナ様と血が繋がっていない事が分かり養女に出された。
異母姉妹なのにまるで双子のように人生がシンクロしている。私と彼女の縁は思ったより強いのかも知れない。
平民だった母親に置いて行かれたのは侯爵家、次が父親の実家の伯爵家、最後に王家に行く事になった。
もし家を渡り歩く星なんていうのが本当にあるとすれば、
「まだ最後ではないのかも知れない。」
「何が最後ではないの?」
漆黒の髪と目を持つヴィンセント王子が私に声をかけてきた。
「いいえ、何でもありませんわ。お兄様。」
私がお兄様と呼ぶのもこれで三人目だ。
最初の兄のレイモンドとは悪い関係ではなかったと思う。ただ幼過ぎて余り覚えていない。
二番目の兄のハロルドの事は好きになれなかった。向こうも私を嫌っていた。好きの両思いは難しいが嫌いの両思いは簡単だ。どちらか片方が嫌っているとそれを感じた片方も大抵相手を嫌いになる。
三番目の兄、ヴィンセント王子とはどんな関係になるのだろう。
「急に王族にしてしまって悪いね。本来ならもっと慎重に進める話なのだが、この非常事態だ。」
「急な変化も二回目なので少しは慣れています。さすがに王族をするのは初めてですけれど。」
ヴィンセント王子がにこりと笑った。
「ソフィアが協力的なので助かるよ。僕はソフィアのことを知らなかったから、どんな妹が出来るのかハラハラしてたんだ。君みたいに知的な女性で良かったよ。」
「私はヴィンセント王子のことを学園の先輩として知っていましたが、こんなに気さくな方だとは思いませんでした。」
「ヴィンセントお兄様だよ。第三王子ともなると親しみやすさが必要になる。代行とはいえ王として命令する立場になるとは思ってもみなかった。」
「アーサー王子はまだ見つからないのですか?」
「ああ、ウィリアム・ハイデルは殺すように命じて国軍のネビル・トマソンに渡したようだが、その後の奴の足取りが掴めない。」
私たちが王城に着いた時にはクーデターは終わっていた。
ウィリアムがクリスティーナの説得に応じて投降したと言われているが、コーサイス侯爵家の秘密が使われたのだろう。ユインティーナとデンを見ていると想像できる。
これ以上核心に迫りたくない。私は何も見なかったことにした。
「闇の精霊は教えてくれないのですか?」
「闇の精霊はたまにしか喋らないし、知りたい事を教えてくれる訳でもない。」
「そう言えば王城に着いてから静かになりました。森の中にいた時はうるさい程だったのに。」
「森のスポットと呼ばれる場所がいいのかな?」
「そうなのかも知れません。精霊が集まっている感じがしました。」
それかユインティーナが側にいた為なのか?
私は彼女の秘密をヴィンセント王子に教えようとは思わなかった。まだ彼が味方かどうか分からない。
ギルバートはユインティーナの側にいる。私は利己的だから自分が大切だと思うものしか守ろうと思わない。
「本当は僕が行くべきなんだが、女性の君を戦地に向かわせることになる。済まない。」
ヴィンセント王子が頭を下げた。
「私が王城を纏める事は出来ないし、そうなるでしょうね。覚悟はしてました。」
「戦術指南役としてセドリックを付けようと思ったのだが動いてくれそうにない。代わりにエドガー・アンベールを付ける。」
実の父のセドリックは動いてくれない。分かっていたことだ。彼は自分の子供に興味がない。
「ティリエ公爵領に行くのですね。」
「ああ、君とルイ・ティリエの周りには心配ないように戦力を固めさせる。それでも戦争に絶対はない。」
「ひとつだけお願いしたい事があります。」
「僕に出来ることならどんな事でもしよう。」
「王になる方がどんなことでも、なんて約束してはダメですわ。私には想い人がいます。もし彼が私を選んでくれなかったら一生独身でいてもいいですか?」
「その彼を無理にでも王族籍にするのではなくて?」
「そんな結婚しても誰も幸せになれないでしょう。」
「そうだな。君みたいな人と兄妹になる前に出会いたかったよ。」
ヴィンセント王子が私の手を取って指先にキスをした。
「約束する。君の望まない婚姻は決してさせない。このヴィンセント・ジーンエイデンが闇の精霊に誓って。」
最初の一回は私も彼女も気が付かない内に行われていた。彼女は5歳の時に暗殺者集団に誘拐され、私は5歳の時にクリスティーナ様と血が繋がっていない事が分かり養女に出された。
異母姉妹なのにまるで双子のように人生がシンクロしている。私と彼女の縁は思ったより強いのかも知れない。
平民だった母親に置いて行かれたのは侯爵家、次が父親の実家の伯爵家、最後に王家に行く事になった。
もし家を渡り歩く星なんていうのが本当にあるとすれば、
「まだ最後ではないのかも知れない。」
「何が最後ではないの?」
漆黒の髪と目を持つヴィンセント王子が私に声をかけてきた。
「いいえ、何でもありませんわ。お兄様。」
私がお兄様と呼ぶのもこれで三人目だ。
最初の兄のレイモンドとは悪い関係ではなかったと思う。ただ幼過ぎて余り覚えていない。
二番目の兄のハロルドの事は好きになれなかった。向こうも私を嫌っていた。好きの両思いは難しいが嫌いの両思いは簡単だ。どちらか片方が嫌っているとそれを感じた片方も大抵相手を嫌いになる。
三番目の兄、ヴィンセント王子とはどんな関係になるのだろう。
「急に王族にしてしまって悪いね。本来ならもっと慎重に進める話なのだが、この非常事態だ。」
「急な変化も二回目なので少しは慣れています。さすがに王族をするのは初めてですけれど。」
ヴィンセント王子がにこりと笑った。
「ソフィアが協力的なので助かるよ。僕はソフィアのことを知らなかったから、どんな妹が出来るのかハラハラしてたんだ。君みたいに知的な女性で良かったよ。」
「私はヴィンセント王子のことを学園の先輩として知っていましたが、こんなに気さくな方だとは思いませんでした。」
「ヴィンセントお兄様だよ。第三王子ともなると親しみやすさが必要になる。代行とはいえ王として命令する立場になるとは思ってもみなかった。」
「アーサー王子はまだ見つからないのですか?」
「ああ、ウィリアム・ハイデルは殺すように命じて国軍のネビル・トマソンに渡したようだが、その後の奴の足取りが掴めない。」
私たちが王城に着いた時にはクーデターは終わっていた。
ウィリアムがクリスティーナの説得に応じて投降したと言われているが、コーサイス侯爵家の秘密が使われたのだろう。ユインティーナとデンを見ていると想像できる。
これ以上核心に迫りたくない。私は何も見なかったことにした。
「闇の精霊は教えてくれないのですか?」
「闇の精霊はたまにしか喋らないし、知りたい事を教えてくれる訳でもない。」
「そう言えば王城に着いてから静かになりました。森の中にいた時はうるさい程だったのに。」
「森のスポットと呼ばれる場所がいいのかな?」
「そうなのかも知れません。精霊が集まっている感じがしました。」
それかユインティーナが側にいた為なのか?
私は彼女の秘密をヴィンセント王子に教えようとは思わなかった。まだ彼が味方かどうか分からない。
ギルバートはユインティーナの側にいる。私は利己的だから自分が大切だと思うものしか守ろうと思わない。
「本当は僕が行くべきなんだが、女性の君を戦地に向かわせることになる。済まない。」
ヴィンセント王子が頭を下げた。
「私が王城を纏める事は出来ないし、そうなるでしょうね。覚悟はしてました。」
「戦術指南役としてセドリックを付けようと思ったのだが動いてくれそうにない。代わりにエドガー・アンベールを付ける。」
実の父のセドリックは動いてくれない。分かっていたことだ。彼は自分の子供に興味がない。
「ティリエ公爵領に行くのですね。」
「ああ、君とルイ・ティリエの周りには心配ないように戦力を固めさせる。それでも戦争に絶対はない。」
「ひとつだけお願いしたい事があります。」
「僕に出来ることならどんな事でもしよう。」
「王になる方がどんなことでも、なんて約束してはダメですわ。私には想い人がいます。もし彼が私を選んでくれなかったら一生独身でいてもいいですか?」
「その彼を無理にでも王族籍にするのではなくて?」
「そんな結婚しても誰も幸せになれないでしょう。」
「そうだな。君みたいな人と兄妹になる前に出会いたかったよ。」
ヴィンセント王子が私の手を取って指先にキスをした。
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