背後に注意を

響影

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学校の周りに植えられた紅葉が道路に落ちて行く。
校門の前で俺は先生に呼び出された志麻を待っている間、その様子をボート眺めていた。茶色やら赤やらの枯葉が落ちている様子は秋の終わりを感じさせてどこか切なさを感じる。

「わりぃ、先生が進路のことでうるさくて」

志麻が頭を掻きながらこちらに駆け寄ってきた。

「…また進路か。先生もおせっかいだな」

「それな」

志麻が歩き始める。それについて行く。
先生は誰にも関わらずおせっかいをするわけではない。志麻だからするのだろう。幼馴染の志麻は学年の中で頭がよく、いつも2位をキープしている。しかも剣道部では数々の実績を残し毎度学年集会で表彰されたいた。

そんな志麻は来年、俺と同じ高校に行くことが決まっていた。県内でそこまで頭も良くなければ剣道部も強くない高校に。

「今日もどっか寄って行く?」

志麻が部活を引退してから、俺らは毎日のように寄り道をしていた。ゲーセンに行ったり、カラオケで熱唱したり。友達があまりいない俺は最近になってようやく青春を楽しんでいる。

「今日は本屋に行きたい。」

友達がいないのには理由がある。俺はコミュ障で、帰宅部で、オカルトオタクだった。今日の本屋だってオカルト雑誌の「アザー」の新刊が出るから買いに行くのだ。

「もしかして、まだアレ集めてるのか?」

志麻のいうアレとは「アザー」のことだ。志麻は俺の趣味を知っているし理解はしてくれないが肯定はしてくれるいい奴だ。

「懐かしな、小学生の時にアレに載ってたコックリさん俺らでやったろ?ま、なんも起きなかったけどな」

志麻が笑う。

「あれは志麻が途中で紙を破いたからできなかったんだ」

当時、俺と志麻はオカルト雑誌に載っていた儀式を色々試していた。しかし、毎度毎度志麻が途中で「こうしたら、どうなんのかな」とふざけ始めことごとく失敗に終わっていた。狐狗狸コックリさんだってそうだ。志麻が「10円玉が動かないように力込めたらどうなんのかな」って言って力を込めた結果紙が破けたのだ。

「あれ、そうだっけ」

当の本人は失敗した理由も忘れてヘラヘラ笑う。何度も儀式をぶち壊し邪魔もされたが、アレはアレで楽しかったな

そんなことを話しているうちに近所の本屋に辿りつく。志麻は真っ直ぐ漫画コーナーに行き、俺は雑誌のコーナーを目指す。

端の方に、入荷してから誰も触っていないだろう綺麗に積まれた「アザー」に手を伸ばす。今月はどんな内容だろうか気になって少しだけページを捲る。

今月は………『スレンダーマンの呼び出し方』、『スレンダーマン農場に現れる』、『日本にもスレンダーマンか!?』…スレンダーマン特集のようだ。

雑誌にはスレンダーマンであろう写真がデカデカと載せられている。全体的に黒くてわかりずらいが、滑り台よりも高い人間に触手が生えているように見える。ジーと見ているうちにだんだんはっきり見えていくような気がして思わず唾を飲んだ。

「よっ、」

不意に背中を誰かに叩かれてドキッとする。振り返ると志麻がいた。

「なにこれ?写真?黒すぎてなんも見えねぇな。」

志麻が俺の横から雑誌を覗き込む。

「急に声をかけるのやめろよ!びっくりするだろう…」

「悪ぃ悪ぃ」とニヤけながら謝る志麻を横目に雑誌を持ってレジに向かう。志麻に肩を叩かれなければもっと写真が見られたいのだろうか?とさっきの不思議な感覚を思い出す。俺には霊感というものはないが、俺の直感が言っている。この写真は本物だと、そう思うとなんだかドキドキしてきた。

本屋から家への帰り道、志麻が色々な話をするが俺は雑誌のことで頭がいっぱいで聞いているようなフリをしながら半分聞き流していた。

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