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あの不思議な体験を今でも忘れていない、忌まわしいあの日、まだ俺が年中半袖半ズボンで遊び回っていた頃だった。
蝉の声がうざったいこの時期に、俺は決まってばあちゃんの家に一人で泊まりに行っていた。ばあちゃんの家は静かで、従兄弟の俊にいちゃんがきせい?してこない限りかなり暇だった。とにかく落ち着きのなかった俺は一人で街を探検し回った。
近所の駄菓子屋でお小遣いをあるだけ使い、田んぼの用水路の中に手を伸ばしてタニシを捕まえて、涼しい神社で休憩をする。
周りは田んぼばっかりで、唯一木が生い茂っていて日の当たらないこの神社はお気に入りだった。
その日もいつも通り、神社の縁側に座って買ってきた駄菓子を開封していた。
当時人気だった怪物ウォッチの食玩を開けて中に入っていたコインをみる。袋をちぎった瞬間にわかった。明らかにいつものコインよりキラキラしている。
「よっしゃ!妖狐郎キタ!」
アニメでも漫画でも超人気があって、超絶強いキャラだ。
初めてのレアコインにとにかくはしゃいだ。
これでおれもクラスで最強になれる!
コインを隅々まで見まわし、アニメの主人公のようにコインを使って怪物を呼び出す真似をしてみたり、キラキラ輝くコインを上に掲げようとした
その時、コインが摘んでいた指から逃げ出した。
「あっ」
咄嗟にコインを捕まえようとするも、コインは転がり続け、手入れがされてないであろう林の中に隠れてしまった。
急いでコインを追いかけて探し出す。
「おれの妖狐郎、どこいったんだよぉ、」
初めてのレアコインを必死になって探した。
無くしたショックのせいか、暑さのせいか、一瞬視界が歪む。
ほんの一瞬視界が歪み、気持ち悪くて目を閉じた。
次に目を開けた時、目の前に光る何かを見つけた。
「あった!」
光る何かに手を伸ばした、しかし光はすぐ見えなくなった。その光は上から現れた肌色によって遮られたのだ。
その白に近い肌色の手は自分の手より大きく、父ちゃんの手より細くて小さい。
俺の視線はその不自然に白い手から腕を上りその人物の顔を見上げた。
目の前にいたのは落ち着いた雰囲気の大人の男の人で、従兄弟の俊にいちゃんよりも若く感じた。
「これ、君の?」
男は拾い上げたコインを手のひらに乗せてこちらに見せる。
おれはコインを受け取ろうと手を伸ばした。が、
男はコインを高く上げた。
「あ、あのおれのだから!」
もしかしてレアコインだから返してくれない?どうしよう、大人相手にとり返せるだろうか。
そんなことを考えつつも返してくれるのを、片手を前に出して待つ。
「すっごいキラキラしてるー。妖狐郎?コインみたいだけど、最近のおもちゃは使い方が分からないなぁ」
男はこちらを無視してコインをじっくりみている。
「なにかのゲーム台とかに入るのかなー?」
本当に返ってこないかもしれない…
そう思うと涙が溢れてくる。大人相手に取り返すことは不可能だ。
涙を滲ませながらおれはさっきよりも大きな声で
「おれのコインだから!返して!」
抗議した。
男はこちらを見返しておれのことをつま先から頭のてっぺんまでじっくりみる。
男の真っ黒の目がおれの目とあうと、男はにっこりと口角を上げた。
「これ、そんなに大事なものなんだ」
おれは鼻水をすすりながらコクンと頷いた。
「いいよ、返してあげる。」
そう聞いてホッとした、のだが
「その代わり、ちょっと着いてきて欲しいなー」
さらに不安になってきた。
蝉の声がうざったいこの時期に、俺は決まってばあちゃんの家に一人で泊まりに行っていた。ばあちゃんの家は静かで、従兄弟の俊にいちゃんがきせい?してこない限りかなり暇だった。とにかく落ち着きのなかった俺は一人で街を探検し回った。
近所の駄菓子屋でお小遣いをあるだけ使い、田んぼの用水路の中に手を伸ばしてタニシを捕まえて、涼しい神社で休憩をする。
周りは田んぼばっかりで、唯一木が生い茂っていて日の当たらないこの神社はお気に入りだった。
その日もいつも通り、神社の縁側に座って買ってきた駄菓子を開封していた。
当時人気だった怪物ウォッチの食玩を開けて中に入っていたコインをみる。袋をちぎった瞬間にわかった。明らかにいつものコインよりキラキラしている。
「よっしゃ!妖狐郎キタ!」
アニメでも漫画でも超人気があって、超絶強いキャラだ。
初めてのレアコインにとにかくはしゃいだ。
これでおれもクラスで最強になれる!
コインを隅々まで見まわし、アニメの主人公のようにコインを使って怪物を呼び出す真似をしてみたり、キラキラ輝くコインを上に掲げようとした
その時、コインが摘んでいた指から逃げ出した。
「あっ」
咄嗟にコインを捕まえようとするも、コインは転がり続け、手入れがされてないであろう林の中に隠れてしまった。
急いでコインを追いかけて探し出す。
「おれの妖狐郎、どこいったんだよぉ、」
初めてのレアコインを必死になって探した。
無くしたショックのせいか、暑さのせいか、一瞬視界が歪む。
ほんの一瞬視界が歪み、気持ち悪くて目を閉じた。
次に目を開けた時、目の前に光る何かを見つけた。
「あった!」
光る何かに手を伸ばした、しかし光はすぐ見えなくなった。その光は上から現れた肌色によって遮られたのだ。
その白に近い肌色の手は自分の手より大きく、父ちゃんの手より細くて小さい。
俺の視線はその不自然に白い手から腕を上りその人物の顔を見上げた。
目の前にいたのは落ち着いた雰囲気の大人の男の人で、従兄弟の俊にいちゃんよりも若く感じた。
「これ、君の?」
男は拾い上げたコインを手のひらに乗せてこちらに見せる。
おれはコインを受け取ろうと手を伸ばした。が、
男はコインを高く上げた。
「あ、あのおれのだから!」
もしかしてレアコインだから返してくれない?どうしよう、大人相手にとり返せるだろうか。
そんなことを考えつつも返してくれるのを、片手を前に出して待つ。
「すっごいキラキラしてるー。妖狐郎?コインみたいだけど、最近のおもちゃは使い方が分からないなぁ」
男はこちらを無視してコインをじっくりみている。
「なにかのゲーム台とかに入るのかなー?」
本当に返ってこないかもしれない…
そう思うと涙が溢れてくる。大人相手に取り返すことは不可能だ。
涙を滲ませながらおれはさっきよりも大きな声で
「おれのコインだから!返して!」
抗議した。
男はこちらを見返しておれのことをつま先から頭のてっぺんまでじっくりみる。
男の真っ黒の目がおれの目とあうと、男はにっこりと口角を上げた。
「これ、そんなに大事なものなんだ」
おれは鼻水をすすりながらコクンと頷いた。
「いいよ、返してあげる。」
そう聞いてホッとした、のだが
「その代わり、ちょっと着いてきて欲しいなー」
さらに不安になってきた。
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