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3・「奥の部屋」
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→「奥の部屋」(ハッピーエンド)
見つからない場所ってどこだ!?
微かに後ろから足音がついてくる足音が聞こえる。
まずい、どんどん家の奥の方に追い詰められている。このままでは逃げ道がなくなってしまう。
それでも奥の方へしか逃げることができず、どうにか隠れる方法を必死に探した。
そいえば、奥の方にやしろの部屋があったはずだ。
コインを隠すにはうってつけの場所だろう。
おれは部屋までひたすら走る。
やしろの部屋に入ると静かに扉を閉め、壁にもたれかかる。
はぁ……はっ……
荒い息を抑えながら、部屋を見回す。
初めて入るやしろの部屋は他の部屋とはどこか、違った雰囲気をかもしだしていた。
本棚の中は乱雑に本が積まれ、机の上や床に紙やら半紙やらが散らばっている。椅子や部屋の隅にも脱いだ上着などが適当に置かれている。
明らかに他の部屋とは違う。
この部屋は生活感があって、ほこりも積もっている。
本当にやしろの部屋なのか?
そう疑いつつ、コインを探そうとする。
変な置き物が置かれた机の上には書きかけの書類や、丸められた書類が置かれていた。
どれもみみずみたいな文字でおれには読めそうにない。
机の端の方にある一枚の紙に目がいく。
手帳を破って書いたのだろうか?
この文字だったらおれにも読める。
その紙を手に取り目を向ける。
どうやら日記のようだ。
最初の方に8/2 ハレ と書かれている。
8/2…おれがやしろに会った日も…………8/2…
今日は家に同居人ができた。
連れてきてしまった方法は卑怯だけれども。ここ50年ほど前から寂しくなる時間が増えた。大人どころか子供ですらこも神社には訪れない。もう、一人には耐えられそうにない。村の祭りも年々賑やかみを無くしていき、訪問者もめっきり減ってしまった。寂しくなったな。
毎年、この時期になるとこの少年はやってくる。いつも一人でやってくるが楽しそうに神社で遊んでいく。たった一人の少年なのに、賑やかで、神社に活気が戻ってように思えた。
この少年だって成長する。そうなればこの神社、この村に訪れることも無くなってしまうだろう。そんなのは耐えられない。
駄目なこととは分かっていつつも
あさとを攫った。
……。
ところどころ読めない漢字があり、完全に理解できたわけではない。
が、やしろが寂しくっておれをさらっちゃったこと、今までおれを見てたことがわかった。
やっぱり、ゆうかいはんじゃないか。
でも、さびしいのは辛いこと。それはおれもよく知っている。母ちゃんも父ちゃんも仕事が忙しくて一緒にいる時間が短い。
家で過ごすのも、ご飯を食べるのもひとりぼっちだ。
やしろはもっと長い時間をそうやって過ごしていたのだろうか
なんか、一緒だな。
「こんなところにいたんだ」
後ろを振り返る。
まずい、読むのに時間をかけすぎてしまった。
「………ここに君の探してるものはないよ」
そういいながら床に散らばった書類を拾い上げ端の方にまとめて置く。
「……ゃ、やしろっ」
「なに?」
「おれさ…、ここに帰ってくるから」
……
「なんの話」
ひんやりとした空気が流れる
「絶対、毎年帰って来るから、だからっ………!」
「家に帰らせろって…?僕がその言葉を信用すると思う?」
…やしろが寂しいのもわかる。でも、おれは…家族にも悲しい思いをしてほしくない。全然家に帰ってこない親だけど、帰ってきた時におれがいるから家が明るいって、仕事も頑張れるって言っていた。だから、
「家族もやしろも寂しくないように帰らなきゃいけないんだ!」
「………僕だけでいいじゃん。」
「んぇ…?」
「僕だけいればいいじゃん、僕の側にずっといてよ…君がいないとこの家も、神社も、どこも暗くて冷たいままだ。」
どうすればやしろがおれを信じてくれるのだろうか…
「……………そんなに帰りたいの……?」
部屋の空気が変わった。
「僕といるのはそんなに嫌………?」
やしろの顔を見上げる。動かない、人形のような顔。真っ黒の瞳に涙が溢れた気がした。実際には何も動いていないし、変わらない。
「やしろといるのは嫌じゃないよ、でも一旦帰らなきゃ…。」
「………」
静かだ。蝉の声もしなければ物音一つしない。
「……………やめた。、無理やり子供を攫うなんて僕が変態みたいに見えるじゃないか」
「…えっ?」
先ほどとはうって変わって明るい口調で話すやしろ。
へんたいなのは変わりない、でもいい流れになってきた。
「ほら、君の欲しかったものだよ。…………」
廊下の方から少量の水が流れてくる。
その水がキラキラと光るコインを落とすと床に染みて消えていってしまった。流れてきたコインを拾い上げてやしろを見る。
「ありがとう。」
「……………さっさと帰れば。」
そういうとやしろは廊下を歩いて消えて行く。
このまま帰っていいのだろうか?
胸のあたりがザワザワする。
…帰ろう。ばあちゃんが心配してる。
コインを握りしめて森へ歩いて行く。
少し森を歩いて後ろを振り返る。
小さくなった玄関でやしろがこっちを見ていた。
見つからない場所ってどこだ!?
微かに後ろから足音がついてくる足音が聞こえる。
まずい、どんどん家の奥の方に追い詰められている。このままでは逃げ道がなくなってしまう。
それでも奥の方へしか逃げることができず、どうにか隠れる方法を必死に探した。
そいえば、奥の方にやしろの部屋があったはずだ。
コインを隠すにはうってつけの場所だろう。
おれは部屋までひたすら走る。
やしろの部屋に入ると静かに扉を閉め、壁にもたれかかる。
はぁ……はっ……
荒い息を抑えながら、部屋を見回す。
初めて入るやしろの部屋は他の部屋とはどこか、違った雰囲気をかもしだしていた。
本棚の中は乱雑に本が積まれ、机の上や床に紙やら半紙やらが散らばっている。椅子や部屋の隅にも脱いだ上着などが適当に置かれている。
明らかに他の部屋とは違う。
この部屋は生活感があって、ほこりも積もっている。
本当にやしろの部屋なのか?
そう疑いつつ、コインを探そうとする。
変な置き物が置かれた机の上には書きかけの書類や、丸められた書類が置かれていた。
どれもみみずみたいな文字でおれには読めそうにない。
机の端の方にある一枚の紙に目がいく。
手帳を破って書いたのだろうか?
この文字だったらおれにも読める。
その紙を手に取り目を向ける。
どうやら日記のようだ。
最初の方に8/2 ハレ と書かれている。
8/2…おれがやしろに会った日も…………8/2…
今日は家に同居人ができた。
連れてきてしまった方法は卑怯だけれども。ここ50年ほど前から寂しくなる時間が増えた。大人どころか子供ですらこも神社には訪れない。もう、一人には耐えられそうにない。村の祭りも年々賑やかみを無くしていき、訪問者もめっきり減ってしまった。寂しくなったな。
毎年、この時期になるとこの少年はやってくる。いつも一人でやってくるが楽しそうに神社で遊んでいく。たった一人の少年なのに、賑やかで、神社に活気が戻ってように思えた。
この少年だって成長する。そうなればこの神社、この村に訪れることも無くなってしまうだろう。そんなのは耐えられない。
駄目なこととは分かっていつつも
あさとを攫った。
……。
ところどころ読めない漢字があり、完全に理解できたわけではない。
が、やしろが寂しくっておれをさらっちゃったこと、今までおれを見てたことがわかった。
やっぱり、ゆうかいはんじゃないか。
でも、さびしいのは辛いこと。それはおれもよく知っている。母ちゃんも父ちゃんも仕事が忙しくて一緒にいる時間が短い。
家で過ごすのも、ご飯を食べるのもひとりぼっちだ。
やしろはもっと長い時間をそうやって過ごしていたのだろうか
なんか、一緒だな。
「こんなところにいたんだ」
後ろを振り返る。
まずい、読むのに時間をかけすぎてしまった。
「………ここに君の探してるものはないよ」
そういいながら床に散らばった書類を拾い上げ端の方にまとめて置く。
「……ゃ、やしろっ」
「なに?」
「おれさ…、ここに帰ってくるから」
……
「なんの話」
ひんやりとした空気が流れる
「絶対、毎年帰って来るから、だからっ………!」
「家に帰らせろって…?僕がその言葉を信用すると思う?」
…やしろが寂しいのもわかる。でも、おれは…家族にも悲しい思いをしてほしくない。全然家に帰ってこない親だけど、帰ってきた時におれがいるから家が明るいって、仕事も頑張れるって言っていた。だから、
「家族もやしろも寂しくないように帰らなきゃいけないんだ!」
「………僕だけでいいじゃん。」
「んぇ…?」
「僕だけいればいいじゃん、僕の側にずっといてよ…君がいないとこの家も、神社も、どこも暗くて冷たいままだ。」
どうすればやしろがおれを信じてくれるのだろうか…
「……………そんなに帰りたいの……?」
部屋の空気が変わった。
「僕といるのはそんなに嫌………?」
やしろの顔を見上げる。動かない、人形のような顔。真っ黒の瞳に涙が溢れた気がした。実際には何も動いていないし、変わらない。
「やしろといるのは嫌じゃないよ、でも一旦帰らなきゃ…。」
「………」
静かだ。蝉の声もしなければ物音一つしない。
「……………やめた。、無理やり子供を攫うなんて僕が変態みたいに見えるじゃないか」
「…えっ?」
先ほどとはうって変わって明るい口調で話すやしろ。
へんたいなのは変わりない、でもいい流れになってきた。
「ほら、君の欲しかったものだよ。…………」
廊下の方から少量の水が流れてくる。
その水がキラキラと光るコインを落とすと床に染みて消えていってしまった。流れてきたコインを拾い上げてやしろを見る。
「ありがとう。」
「……………さっさと帰れば。」
そういうとやしろは廊下を歩いて消えて行く。
このまま帰っていいのだろうか?
胸のあたりがザワザワする。
…帰ろう。ばあちゃんが心配してる。
コインを握りしめて森へ歩いて行く。
少し森を歩いて後ろを振り返る。
小さくなった玄関でやしろがこっちを見ていた。
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