迷子

響影

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4・「奥の部屋」

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→「奥の部屋」(バッドエンド)


まずいまずいまずいまずい。

家の奥へと追い込まれる。
やしろは歩いて追いかけているはずなのに、すぐ後ろで足音がする。

何も考えずに逃げていたあさとはとうとう屋敷の奥まできてしまった。

もうここに入るしかないか、

目の前の扉を回す。
そこはやしろの部屋だった。

初めて入るやしろの部屋は他の部屋とはどこか、違った雰囲気をかもしだしていた。



本棚の中は乱雑に本が積まれ、机の上や床に紙やら半紙やらが散らばっている。椅子や部屋の隅にも脱いだ上着などが適当に置かれている。
明らかに他の部屋とは違う。
この部屋には生活感があって、ほこりも積もっている。


荒い息を整えながら周囲を見回す。


この部屋なら妖狐郎がいるんじゃないのか?

ここはやしろの部屋。隠すならうってつけだろう。


隠すならこの本棚が怪しい。
そう思い本棚を探す。

縦に積まれた本棚の本にはいくつかほこりが被っており、ほとんどの本の題名がみみずのような文字か漢字のため読めない。


一つの本に目が止まる。

この本だけ、埃をかぶっていない?
最近触られたものだろうそれに手を伸ばす。


薄いその本には題名が書いておらず、周りのものよりも形が長く、広い。

本?というよりはノートに近いような気がする。


適当なページを開ける。


そこに描いてあるものを見ておれは驚いた。

この絵…おれ?……こっちもおれ、これもおれ……?


めくってもめくっても、目に入るのは自分の絵

しかも、最近の姿じゃない、もっと小さい頃に描かれたものもある。神社にいる時のおれもいれば、ばあちゃんの家でのんびりしているおれもいる。


もしかして、ずっと見られていたのだろうか?


ノートのはじめの方までページをめくる。

最初のページの下の方、やしろの文字ではない、もっと読みづらい字が書かれていた。

『お前は趣味が悪いね』


頭の中に安斎さんの顔がよぎる。
まさか、ね?あの優しくそうな安斎さんがおれをずっと見ていた…?


「あーあ、見られちゃった」


背中からやしろの声がする。

「それ、安斎の弟子に頼んで描いて貰ったんだよね。ほら、僕ここから出られないから」


後ろを振り向けない。
ずっと見られていた?おれの知らないところで?

ノートを見る。そこにかおれが風呂に入っている絵もあった。


「………きもちわる、」


ハッとして手で口をおおう。
声に出てしまっていた。

やしろの様子を伺うために後ろをゆっくり振り返る。

そこには、何も様子の変わらないやしろがいた。
よかった。今の発言に怒ってはいないみたいだ。


「それも、もういらないかな。……今は本物がいるもんね」


やしろがおれの腕を引っ張る。
そのまま廊下を引きずられる。

「い、いたいっ、はなしてっ」


やしろはおれの発言を無視して進む。


「別にね、あさとをここに閉じ込める方法なんていくらでもあるんだよ?ただ、痛いのは嫌かなって思ってたんだけど………。男の子だから我慢できるよね?」


やしろは虎の絵が描かれた部屋におれを放り投げる。

「いっった、」


小さなたんすの一番下の引き出しから何かを取り出す。

キランと光った何か、

コインじゃない……



それは、新品のナタだった。


「…ゃ、やしろ、まって、やめて!」

やしろはだんだんと近づいてくる。


「知ってる?ここで死ぬとね、永遠にここから出られないんだ。」


やしろが笑いながらナタを振り下ろす。

かんいっぱつのところでナタを避ける。


「やめてっ、やめて」


「…大丈夫だよ、痛いのは一瞬だけだから。」


再度下されるナタ、さっきよりも早くて、



避けきれなくて…





視界が真っ黒に染まった。


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