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2つの世界
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「お嬢様、お気づきになられましたか?」
「う~ん…痛たた…」
いつの間にか、寝てしまっていたようだった。
目の前には、心配そうに覗き込んでいるセバスチャンがいた。
「あれ、セバスチャン? どうして…」
ここは… 病室?
たしか、お兄ちゃんの事務所に行って… 隆太郎くんに会って、お兄ちゃんが行方不明になってるって話を聞いて、それから…
「頭痛の具合は、どうでしょうか?」
「私…ここでドクターに診察を受けて…」
「はい。診察を受けた帰りがけに倒れられたので、ベッドを借りて休ませてもらっていました」
あれ、私は…夢を見てたんじゃなかったの? 本当は、東京で暮らしてたのが夢で…こっちの世界で育ったのが現実だったってこと?
「少し混乱されてるようですね。もうしばらく、休んでいきましょうか」
「うん…」
「それと、実はお嬢様がこちらでお休みになっている間に、面会を求める者が来ましたが…怪しい人物だったので帰って頂きました」
「怪しい人…?」
「はい、ワトソン名乗る若い東洋人でした。私の知る限り、お嬢様と繋がりのある人物ではなかったので、丁重にお帰り頂きましたが…」
「ワトソン…知らない人ね」
「私の知らない所で知り合った方である可能性もあったので、一応、お伝えさせていただきました」
「そう、ありがとう。ワトソン、ワトソン… やっぱり、知らないわね…」
「本日は、予約せずに緊急で診察を依頼したので…ここにお嬢様が来ているのを知っているのは、神父と限られた者だけのはずなのですが…どこで知ったのでしょう」
「う~ん…」
「名探偵として新聞に写真が載っていましたからね。偶然、病院に来ていたお嬢様のファンかもしれませんね。余計なことをお伝えしてしまってすみません」
少しずつ状況を理解してきた。
「私は、どのくらいここで寝てたの?」
「4時間ほどでしょうか…もうすぐ日が暮れる時刻ですが、もししばらく休んでよくならないようでしたら、1晩入院もできるように手配してあります」
「ありがとう、もう大丈夫そうだから。帰る用意をお願いしてもいい?」
「かしこまりました。準備致します」
4時間というと、丁度私が渋谷の部屋で目覚めて、お兄ちゃんの事務所に行ってたくらいの時間… やっぱり、21世紀の東京で生きてる記憶が夢で…本当の私は、19世紀末のロンドンに住む、ヒカリ・エヴァンスハウなのかな…
でも、ヒカリ・エヴァンスハムとして育った記憶はあるけれど、本当の私とは色々と異なる部分がある。ヒカリ・エヴァンスハムは富豪の一人娘として育てられただけあって、上品でおしとやか、更に洞察力と考察力に優れていて、世間から名探偵として認知されるほどに頭が切れる。それに対して、今の私はシングルマザーの母に田舎で育てられた平凡な18歳なのだった。テーブルマナーもヒカリ・エヴァンスハムとしての記憶を通してしか知らず、ぎこちないし…考察力に優れた名探偵とは程遠い。ダメンずの呪いをまとってその場しのぎで生きてきた一般人なのだった。
どちらかと言えば、こっちの方が夢に近いと思ってたのに…
何がなんだかわからないが、イケメンと縁深いこちらでの生活に私は、1ミリの不満もない。こっちでの生活が現実だったらいいのにと何度も思っていたくらいだ。
実際、何が真実なのか検討もつかないけれど、また幸せな夢の続きを味わえるなら願ったり叶ったり。せっかくなので、もうしばらくこのイケメンと縁深い生活に溺れていようと思うのだった。
「う~ん…痛たた…」
いつの間にか、寝てしまっていたようだった。
目の前には、心配そうに覗き込んでいるセバスチャンがいた。
「あれ、セバスチャン? どうして…」
ここは… 病室?
たしか、お兄ちゃんの事務所に行って… 隆太郎くんに会って、お兄ちゃんが行方不明になってるって話を聞いて、それから…
「頭痛の具合は、どうでしょうか?」
「私…ここでドクターに診察を受けて…」
「はい。診察を受けた帰りがけに倒れられたので、ベッドを借りて休ませてもらっていました」
あれ、私は…夢を見てたんじゃなかったの? 本当は、東京で暮らしてたのが夢で…こっちの世界で育ったのが現実だったってこと?
「少し混乱されてるようですね。もうしばらく、休んでいきましょうか」
「うん…」
「それと、実はお嬢様がこちらでお休みになっている間に、面会を求める者が来ましたが…怪しい人物だったので帰って頂きました」
「怪しい人…?」
「はい、ワトソン名乗る若い東洋人でした。私の知る限り、お嬢様と繋がりのある人物ではなかったので、丁重にお帰り頂きましたが…」
「ワトソン…知らない人ね」
「私の知らない所で知り合った方である可能性もあったので、一応、お伝えさせていただきました」
「そう、ありがとう。ワトソン、ワトソン… やっぱり、知らないわね…」
「本日は、予約せずに緊急で診察を依頼したので…ここにお嬢様が来ているのを知っているのは、神父と限られた者だけのはずなのですが…どこで知ったのでしょう」
「う~ん…」
「名探偵として新聞に写真が載っていましたからね。偶然、病院に来ていたお嬢様のファンかもしれませんね。余計なことをお伝えしてしまってすみません」
少しずつ状況を理解してきた。
「私は、どのくらいここで寝てたの?」
「4時間ほどでしょうか…もうすぐ日が暮れる時刻ですが、もししばらく休んでよくならないようでしたら、1晩入院もできるように手配してあります」
「ありがとう、もう大丈夫そうだから。帰る用意をお願いしてもいい?」
「かしこまりました。準備致します」
4時間というと、丁度私が渋谷の部屋で目覚めて、お兄ちゃんの事務所に行ってたくらいの時間… やっぱり、21世紀の東京で生きてる記憶が夢で…本当の私は、19世紀末のロンドンに住む、ヒカリ・エヴァンスハウなのかな…
でも、ヒカリ・エヴァンスハムとして育った記憶はあるけれど、本当の私とは色々と異なる部分がある。ヒカリ・エヴァンスハムは富豪の一人娘として育てられただけあって、上品でおしとやか、更に洞察力と考察力に優れていて、世間から名探偵として認知されるほどに頭が切れる。それに対して、今の私はシングルマザーの母に田舎で育てられた平凡な18歳なのだった。テーブルマナーもヒカリ・エヴァンスハムとしての記憶を通してしか知らず、ぎこちないし…考察力に優れた名探偵とは程遠い。ダメンずの呪いをまとってその場しのぎで生きてきた一般人なのだった。
どちらかと言えば、こっちの方が夢に近いと思ってたのに…
何がなんだかわからないが、イケメンと縁深いこちらでの生活に私は、1ミリの不満もない。こっちでの生活が現実だったらいいのにと何度も思っていたくらいだ。
実際、何が真実なのか検討もつかないけれど、また幸せな夢の続きを味わえるなら願ったり叶ったり。せっかくなので、もうしばらくこのイケメンと縁深い生活に溺れていようと思うのだった。
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