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内科医/ドクター・ウェストン
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切り裂きジャック6人目の被害者の事件は、聖バーソロミュー病院の入院病棟にある関係者以外立ち入り禁止エリアで起きた。被害者の死亡推定時刻は、被害者の生存が目撃されていた深夜2時から、死体として発見された1時間半後の深夜3時半までの間とされている。
当初、容疑者は死亡推定時刻内に現場に立ち入ったのが目撃されている「神父、内科医、法医学医、ギャング組織の男」の4人とされていたけれど、後にヒカリの執事、セバスチャンも犯行現場近くにいたことが明らかなになった。そのため、切り裂きジャックと思われる容疑者は5人に絞られていた。
「間も無く、いらっしゃるようです」
私と和戸くんは、容疑者の人たちへの聞き込みを開始していた。最初に神父、そして新たな容疑者となったセバスチャン、そして次に聞き込みをしにやって来たのは、被害者が殺された病院だった。内科医でエヴァンスハム家のホームドクターでもあるヘンリー・ウェストン 、そして病院内では変わり者として知られる法医学医のウィリアム・モートン、それぞれに聞き込みのアポイントを取り、2人に会えることになっていた。
朝から晩まで忙しいドクターたちの予定を抑えるのは大変だったけれど、診察や解剖の合間になんとか少しだけ時間を割いてもらえることになっていた。
「ドクターが来るまでの間に、容疑者の情報を整理しておきましょう」
そう言って和戸くんは、メモ帳を開いてみせた。そこには、レストレード警部から受け取った容疑者たちの写真が挟まっている。
「間もなくやって来る容疑者の名前は、ヘンリー・ウェストン 。エヴァンスハム家のホームドクターをされているとのことでしたので、妹さんはご存じですよね」
「うん、この前もここで診察してもらったところだよ」
「事件当日のドクターのアリバイですが、その日ドクターは当直だったそうです」
「そう言えば、セバスチャンが言ってたよね。倒れた神父様を連れ来て、ドクターウェストンに診てもらったって」
「はい、ドクターは神父様以外にも、救急で運ばれてきた患者を何人も診ていた記録が残っています。その中の1人に神父様の名前もちゃんとありました。被害者の死亡推定時間帯には、救急の診察の他に危篤の患者の処置など忙しく対応されていたようですね」
「危篤の患者さんと言えば… うっ…」
「…妹さん!?」
痛み止めを処方されてから、しばらく治まっていた頭痛が再び襲ってきた。
「また、頭が…」
「大丈夫かい?」
「ドクター…」
頭の痛みに耐えかねて、その場に蹲っていると… そこにドクターウェストンが駆け寄って来た。
「君、彼女をそこのベッドに寝かせるのを手伝ってくれ」
「は、はい」
和戸くんは、ドクターの指示にテキパキと従い、ドクターと一緒に私を診察用のベッドに寝かせると、上着のボタンをいくつか外して軌道を確保した。
「それで、君は?」
「…え?」
「え、じゃない」
「君は、彼女の何なんだ?」
「何なんだと言われても…」
「兄弟? 友人? それとも、恋人か?」
「じょ、助手です! 探偵業の助手をしているワトソンと言います」
「そうか、手伝ってくれて助かった。もう大丈夫だったら、外で待っていてくれ」
「…は?」
「それとも、君と彼女はお互いの裸を見せても許せる間柄なのかい?」
「そっ、それはそうですね。すみません、すぐ外します!」
ドクターウェストンに恋人なのかと訊かれて動揺していた和戸くんだったけれど、すぐに診察が行われるのだと理解すると、慌てて診察室から出て行った。
「さてと… この前に診た時は、特に異常を感じなかったけれど… うん。頭皮に腫脹および圧痛のある部位はない。側頭動脈と顎関節にも圧痛の有無なし。顎開閉時の捻髪音もなし。体温と血圧、脈を取らせてもらうね」
「…は、はい」
「まだ痛む?」
横になって動かずにいれば、まだ耐えられないほどの痛みではなかったけれど、頭を動かすとズキンズキンと激しい痛みに襲われた…
「なるほどね。眼および眼窩部を視診するよ。流涙,発赤,および結膜充血なし。瞳孔径および対光反射,外眼筋運動,および視野に異変なし」
ドクターウェストンが、私の目を覗き込む。お互いの吐息を感じられるほどの間近でドクターを見ると、頭だけでなく胸もズキンズキンと高鳴っていた。動かなければ耐えられないことはないとはいえ… 我ながら大の美青年好きという病気には呆れを覚えた。とはいえ、少し動けば唇が重なってしまいかねないほどのこの至近距離では、相手が美青年でなくても動揺して当然の距離だ。と自分を必死に擁護しながら、必死に頭の痛みと胸の苦しみを堪えていた。
「…………」
「上着を脱いで、背中を見せてくれるかな」
「…はい」
「聴診器を当てるから。ちょっと冷たいよ」
「ひゃっ…」
「肩の力を抜いて。吐いて、吸って、吐いて、吸って…オッケー。じゃあ、正面を向いて」
「…はい」
「吐いて、吸って、吐いて、吸って… う~ん、やっぱり特に異常は見受けられないな…」
「少し休めば、すぐ良くなると思うので…」
「そうだね。遠慮はいらないから、ゆっくり休んでいくといいよ」
「ありがとうございます」
「たしか、聞きたいことは事件当時のことだったね。いつでも時間を空けるから、今日は無理せず。また日を改めよう」
「すみません、忙しい時間を縫っていただいたのに…」
「外の彼… ワトソンくんだったかな? 彼には、先に帰っているように伝えておくかい?」
「そうですね… はい、よろしくお願いします」
そう言うと、ドクターはニッコリと微笑んだけれど…
「あっ、でもこの後法医学医のドクターモートンにアポ取ってあるんでした」
「モートンと?」
「なので、ワトソンくんには、私抜きでドクターモートンに話を聞いて欲しいと伝えてもらえますか?」
ニッコリと微笑んでいたドクターだったけれど、ドクターモートンと聞いて一瞬怪訝そうになった。でもすぐに笑顔に戻り、伝言も快く承諾してくれた。
信頼できる神父様とセバスチャン、ドクターウェストンを覗くと、容疑者は残り2人。この2人は、見かけたことがあるくらいの関係性なので、どんな人なのかわからない… 2人の内のどちらかが切り裂きジャックの可能性も十分あるとなると… 和戸くんをそんな危険かもしれない人と2人きりで接触させてしまっていいものだろうか…
「ドクター、やっぱり…」
考えを改めて、日程の変更をお願いしようとしたが、その時にはドクターは既に診察室を出て行ってしまっていた。
当初、容疑者は死亡推定時刻内に現場に立ち入ったのが目撃されている「神父、内科医、法医学医、ギャング組織の男」の4人とされていたけれど、後にヒカリの執事、セバスチャンも犯行現場近くにいたことが明らかなになった。そのため、切り裂きジャックと思われる容疑者は5人に絞られていた。
「間も無く、いらっしゃるようです」
私と和戸くんは、容疑者の人たちへの聞き込みを開始していた。最初に神父、そして新たな容疑者となったセバスチャン、そして次に聞き込みをしにやって来たのは、被害者が殺された病院だった。内科医でエヴァンスハム家のホームドクターでもあるヘンリー・ウェストン 、そして病院内では変わり者として知られる法医学医のウィリアム・モートン、それぞれに聞き込みのアポイントを取り、2人に会えることになっていた。
朝から晩まで忙しいドクターたちの予定を抑えるのは大変だったけれど、診察や解剖の合間になんとか少しだけ時間を割いてもらえることになっていた。
「ドクターが来るまでの間に、容疑者の情報を整理しておきましょう」
そう言って和戸くんは、メモ帳を開いてみせた。そこには、レストレード警部から受け取った容疑者たちの写真が挟まっている。
「間もなくやって来る容疑者の名前は、ヘンリー・ウェストン 。エヴァンスハム家のホームドクターをされているとのことでしたので、妹さんはご存じですよね」
「うん、この前もここで診察してもらったところだよ」
「事件当日のドクターのアリバイですが、その日ドクターは当直だったそうです」
「そう言えば、セバスチャンが言ってたよね。倒れた神父様を連れ来て、ドクターウェストンに診てもらったって」
「はい、ドクターは神父様以外にも、救急で運ばれてきた患者を何人も診ていた記録が残っています。その中の1人に神父様の名前もちゃんとありました。被害者の死亡推定時間帯には、救急の診察の他に危篤の患者の処置など忙しく対応されていたようですね」
「危篤の患者さんと言えば… うっ…」
「…妹さん!?」
痛み止めを処方されてから、しばらく治まっていた頭痛が再び襲ってきた。
「また、頭が…」
「大丈夫かい?」
「ドクター…」
頭の痛みに耐えかねて、その場に蹲っていると… そこにドクターウェストンが駆け寄って来た。
「君、彼女をそこのベッドに寝かせるのを手伝ってくれ」
「は、はい」
和戸くんは、ドクターの指示にテキパキと従い、ドクターと一緒に私を診察用のベッドに寝かせると、上着のボタンをいくつか外して軌道を確保した。
「それで、君は?」
「…え?」
「え、じゃない」
「君は、彼女の何なんだ?」
「何なんだと言われても…」
「兄弟? 友人? それとも、恋人か?」
「じょ、助手です! 探偵業の助手をしているワトソンと言います」
「そうか、手伝ってくれて助かった。もう大丈夫だったら、外で待っていてくれ」
「…は?」
「それとも、君と彼女はお互いの裸を見せても許せる間柄なのかい?」
「そっ、それはそうですね。すみません、すぐ外します!」
ドクターウェストンに恋人なのかと訊かれて動揺していた和戸くんだったけれど、すぐに診察が行われるのだと理解すると、慌てて診察室から出て行った。
「さてと… この前に診た時は、特に異常を感じなかったけれど… うん。頭皮に腫脹および圧痛のある部位はない。側頭動脈と顎関節にも圧痛の有無なし。顎開閉時の捻髪音もなし。体温と血圧、脈を取らせてもらうね」
「…は、はい」
「まだ痛む?」
横になって動かずにいれば、まだ耐えられないほどの痛みではなかったけれど、頭を動かすとズキンズキンと激しい痛みに襲われた…
「なるほどね。眼および眼窩部を視診するよ。流涙,発赤,および結膜充血なし。瞳孔径および対光反射,外眼筋運動,および視野に異変なし」
ドクターウェストンが、私の目を覗き込む。お互いの吐息を感じられるほどの間近でドクターを見ると、頭だけでなく胸もズキンズキンと高鳴っていた。動かなければ耐えられないことはないとはいえ… 我ながら大の美青年好きという病気には呆れを覚えた。とはいえ、少し動けば唇が重なってしまいかねないほどのこの至近距離では、相手が美青年でなくても動揺して当然の距離だ。と自分を必死に擁護しながら、必死に頭の痛みと胸の苦しみを堪えていた。
「…………」
「上着を脱いで、背中を見せてくれるかな」
「…はい」
「聴診器を当てるから。ちょっと冷たいよ」
「ひゃっ…」
「肩の力を抜いて。吐いて、吸って、吐いて、吸って…オッケー。じゃあ、正面を向いて」
「…はい」
「吐いて、吸って、吐いて、吸って… う~ん、やっぱり特に異常は見受けられないな…」
「少し休めば、すぐ良くなると思うので…」
「そうだね。遠慮はいらないから、ゆっくり休んでいくといいよ」
「ありがとうございます」
「たしか、聞きたいことは事件当時のことだったね。いつでも時間を空けるから、今日は無理せず。また日を改めよう」
「すみません、忙しい時間を縫っていただいたのに…」
「外の彼… ワトソンくんだったかな? 彼には、先に帰っているように伝えておくかい?」
「そうですね… はい、よろしくお願いします」
そう言うと、ドクターはニッコリと微笑んだけれど…
「あっ、でもこの後法医学医のドクターモートンにアポ取ってあるんでした」
「モートンと?」
「なので、ワトソンくんには、私抜きでドクターモートンに話を聞いて欲しいと伝えてもらえますか?」
ニッコリと微笑んでいたドクターだったけれど、ドクターモートンと聞いて一瞬怪訝そうになった。でもすぐに笑顔に戻り、伝言も快く承諾してくれた。
信頼できる神父様とセバスチャン、ドクターウェストンを覗くと、容疑者は残り2人。この2人は、見かけたことがあるくらいの関係性なので、どんな人なのかわからない… 2人の内のどちらかが切り裂きジャックの可能性も十分あるとなると… 和戸くんをそんな危険かもしれない人と2人きりで接触させてしまっていいものだろうか…
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