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牡丹
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後宮の花達は皇帝から寵愛を受けるのは私であると生き急いでいる。それに仕える草花さえもお手付きになれば、階級が上がり九嬪、あるいは側室の最高位である四夫人にだってなれる。
入内してしまったら外には出られない後宮という広い牢の中で、自分を顧みてほしいという思いを花達は甘い香りを漂わせて皇帝を待っているのだ。
蕾は嘲笑した。後宮の中で惨めに朽ち果ててゆくのならば、国を揺るがす傾国の花になってやろうと。
殿舎に贈られてきた牡丹の花を両手で包み愛でているのは貴妃、淑妃、徳妃、賢妃の中でも徳妃の位を持つ梁林杏。彼女は同じ四夫人である孫貴妃から贈られた大きな牡丹の花を愛おしいそうに見ていた。
「いつか私も国1番の花になれるだろうか」
梁徳妃は良くぼやいていたがそう思う者は後宮には数多くいる。かくいう私もそのうちの1人であった。
蔡峰花は梁徳妃に仕える女官であり、また後宮という場所に嫌気がさしていた。女官など皇帝の目にも止まらない位の低い存在であり、梁徳妃の身の回りの雑務をすることに退屈極まりないと感じている。
「大家が夜伽に来るそうです!」
そんなある日梁徳妃の元に現皇帝、劉暁明が夜伽に殿舎にやって来ると報告を受け、女官達の間で密かに噂となっていた。
「もし私が大家の目に止まれば位は今から九嬪に上がるかもしれない」「茶器を運ぶ係は私が良い」と皇帝のお手つきになりたくてしょうがない女官では小競り合いが始まる。この話が梁徳妃の耳に届いたら機嫌を損ねるに違いないと皆どこかで思っているため気づかれない程度に囁き合うのだ。
結局、茶器を運ぶ係は峰花に決まったが試毒する宦官が不在なため峰花が毒見することとなってしまった。
予想外の事に服毒して死んでしまわないだろうかと不安はよぎるが、対して邪な考えが脳内に流れてしまった。
それは砒霜を茶に混ぜて梁徳妃に服毒させるという考え。
幸い茶器選びの女官は峰花ではないため、銀食器を使われない限り見つかることはないはずだ。銀は毒に反応して黒く変色するが少量であれば見つかることはない。運ぶ際に袖に忍ばせた粉末状の砒霜を茶に入れてしまい、試毒するふりをして砒霜を梁徳妃に飲ませれば良い。
もしも体調不良を訴えるのであればそれは皇帝と熱い夜を過ごしたのだから仕方がないと噂を流して仕舞えばいいのだ。
「娘娘は大家と良い夜をお過ごしになったのよ。体調が優れないのは仕方ないわ」
「妊娠するのも時間の問題ね」
「世継ぎが産まれたら位が上がって私達ももっと良い服が着れるわ」
その夜、梁徳妃は銀環を指に嵌めて頬を紅潮させて皇帝が来るのを待っていた。しかし数日経ったある日、梁徳妃が死んだ。
「まだ足りない」
女官蔡峰花の悪行はこれで終わりではなかった。
徳妃が死亡した事に関して、殿舎では箝口令が出されたものの後宮中に噂が広がり、それに拍車をかけるように死検による結果が毒死と判断が下された。犯人探しのために殿舎では宦官たちによる捜索が始まったが、いつから砒霜を盛られていたのかもどこから砒霜を入手したのかも分からず広いようで狭い牢のような後宮内での捜索は難航していた。
砒霜を盛った張本人の峰花はというと夜伽の際に皇帝のお手つきになり九嬪の中でも昭儀の位に上り詰めていた。蔡昭儀の彼女は着々と後宮でも権力上げていき、その悪行は国家の花である貴妃、孫雹華に手を出そうとしていた。
「側室の中でも林杏とは仲良くやっていけると思っていたのよ。なぜ殺されてしまったの?」
後宮の統率者である孫貴妃は親友であった梁徳妃の死に悲しみ、また噂で騒々しい後宮を鎮めるために思考を巡らせていた。孫貴妃に支えている優秀な宦官は元徳妃の女官である蔡昭儀に焦点を当てたが犯人ではないと断定された。
「優秀など名ばかりね」
蔡昭儀は冷笑した。
月日は流れていき後宮の調和が乱れていく中、遂に孫貴妃が体調不良で床に伏せてしまった。
「孫貴妃様は責任感に押しつぶされて伏せってしまわれたそうよ」
「大家に何か言われたんじゃないの?貴妃なのに後宮の管理もできないのかって」
女官たちが噂話に花を咲かせていた。
蔡昭儀は孫貴妃の体調不良を知りまた悪い考えが頭をよぎらせる。
それは丸薬を勧める事だった。
蔡昭儀自身が丸薬を勧めるのは、梁徳妃毒殺の犯人だと見つかってしまう可能性が高いため、孫貴妃の女官と親しい女官に丸薬を渡しあえてそれを貴妃に渡して欲しいとは言わず、自分の身を守るために持たせた。
「この薬は病になった時に服薬しなさい」
「あ、ありがとうございます娘娘!」
女官は蔡昭儀からの贈り物に喜びの表情を見せたがその良心から友の孫貴妃の女官に「そちらの娘娘に飲ました方が良い」と勧めた。
その丸薬は女官から孫貴妃へと渡っていき、とうとう孫貴妃が服薬した。体調は良好になり孫貴妃は大いに喜んだが指に嵌めてある金環は外れることはなかった。
「孫貴妃様は元気そうだけど指に嵌めてる金環が取れないのは体調が優れないからね」
「見栄を張ってるだけよ。蔡昭儀様の方が大家からの寵愛を1番いただいてるもの」
そしてある日もう一丸服薬した孫貴妃は翌日に急死した。
立て続けの事件に死んでゆく側室たちは何かの呪いだと噂される一方、四夫人の位につくのが恐ろしく思う者が増え、後宮は大騒ぎだ。そんな中悪行を成し遂げた蔡昭儀は貴妃の位となり蔡貴妃となって後宮を統率する事となった。
内定と外廷とを繋ぐのに絶対的に関わってくる後宮。騒々しい宮廷であるが蔡昭儀は国の花である牡丹を両手で包み愛でていた。
「いつか国1番の花になってやるわ」
梁徳妃が死んだ。孫貴妃も死んでしまった。多くの犠牲の中次に手をかけるのは誰なのか。
皇帝かもしれない。
入内してしまったら外には出られない後宮という広い牢の中で、自分を顧みてほしいという思いを花達は甘い香りを漂わせて皇帝を待っているのだ。
蕾は嘲笑した。後宮の中で惨めに朽ち果ててゆくのならば、国を揺るがす傾国の花になってやろうと。
殿舎に贈られてきた牡丹の花を両手で包み愛でているのは貴妃、淑妃、徳妃、賢妃の中でも徳妃の位を持つ梁林杏。彼女は同じ四夫人である孫貴妃から贈られた大きな牡丹の花を愛おしいそうに見ていた。
「いつか私も国1番の花になれるだろうか」
梁徳妃は良くぼやいていたがそう思う者は後宮には数多くいる。かくいう私もそのうちの1人であった。
蔡峰花は梁徳妃に仕える女官であり、また後宮という場所に嫌気がさしていた。女官など皇帝の目にも止まらない位の低い存在であり、梁徳妃の身の回りの雑務をすることに退屈極まりないと感じている。
「大家が夜伽に来るそうです!」
そんなある日梁徳妃の元に現皇帝、劉暁明が夜伽に殿舎にやって来ると報告を受け、女官達の間で密かに噂となっていた。
「もし私が大家の目に止まれば位は今から九嬪に上がるかもしれない」「茶器を運ぶ係は私が良い」と皇帝のお手つきになりたくてしょうがない女官では小競り合いが始まる。この話が梁徳妃の耳に届いたら機嫌を損ねるに違いないと皆どこかで思っているため気づかれない程度に囁き合うのだ。
結局、茶器を運ぶ係は峰花に決まったが試毒する宦官が不在なため峰花が毒見することとなってしまった。
予想外の事に服毒して死んでしまわないだろうかと不安はよぎるが、対して邪な考えが脳内に流れてしまった。
それは砒霜を茶に混ぜて梁徳妃に服毒させるという考え。
幸い茶器選びの女官は峰花ではないため、銀食器を使われない限り見つかることはないはずだ。銀は毒に反応して黒く変色するが少量であれば見つかることはない。運ぶ際に袖に忍ばせた粉末状の砒霜を茶に入れてしまい、試毒するふりをして砒霜を梁徳妃に飲ませれば良い。
もしも体調不良を訴えるのであればそれは皇帝と熱い夜を過ごしたのだから仕方がないと噂を流して仕舞えばいいのだ。
「娘娘は大家と良い夜をお過ごしになったのよ。体調が優れないのは仕方ないわ」
「妊娠するのも時間の問題ね」
「世継ぎが産まれたら位が上がって私達ももっと良い服が着れるわ」
その夜、梁徳妃は銀環を指に嵌めて頬を紅潮させて皇帝が来るのを待っていた。しかし数日経ったある日、梁徳妃が死んだ。
「まだ足りない」
女官蔡峰花の悪行はこれで終わりではなかった。
徳妃が死亡した事に関して、殿舎では箝口令が出されたものの後宮中に噂が広がり、それに拍車をかけるように死検による結果が毒死と判断が下された。犯人探しのために殿舎では宦官たちによる捜索が始まったが、いつから砒霜を盛られていたのかもどこから砒霜を入手したのかも分からず広いようで狭い牢のような後宮内での捜索は難航していた。
砒霜を盛った張本人の峰花はというと夜伽の際に皇帝のお手つきになり九嬪の中でも昭儀の位に上り詰めていた。蔡昭儀の彼女は着々と後宮でも権力上げていき、その悪行は国家の花である貴妃、孫雹華に手を出そうとしていた。
「側室の中でも林杏とは仲良くやっていけると思っていたのよ。なぜ殺されてしまったの?」
後宮の統率者である孫貴妃は親友であった梁徳妃の死に悲しみ、また噂で騒々しい後宮を鎮めるために思考を巡らせていた。孫貴妃に支えている優秀な宦官は元徳妃の女官である蔡昭儀に焦点を当てたが犯人ではないと断定された。
「優秀など名ばかりね」
蔡昭儀は冷笑した。
月日は流れていき後宮の調和が乱れていく中、遂に孫貴妃が体調不良で床に伏せてしまった。
「孫貴妃様は責任感に押しつぶされて伏せってしまわれたそうよ」
「大家に何か言われたんじゃないの?貴妃なのに後宮の管理もできないのかって」
女官たちが噂話に花を咲かせていた。
蔡昭儀は孫貴妃の体調不良を知りまた悪い考えが頭をよぎらせる。
それは丸薬を勧める事だった。
蔡昭儀自身が丸薬を勧めるのは、梁徳妃毒殺の犯人だと見つかってしまう可能性が高いため、孫貴妃の女官と親しい女官に丸薬を渡しあえてそれを貴妃に渡して欲しいとは言わず、自分の身を守るために持たせた。
「この薬は病になった時に服薬しなさい」
「あ、ありがとうございます娘娘!」
女官は蔡昭儀からの贈り物に喜びの表情を見せたがその良心から友の孫貴妃の女官に「そちらの娘娘に飲ました方が良い」と勧めた。
その丸薬は女官から孫貴妃へと渡っていき、とうとう孫貴妃が服薬した。体調は良好になり孫貴妃は大いに喜んだが指に嵌めてある金環は外れることはなかった。
「孫貴妃様は元気そうだけど指に嵌めてる金環が取れないのは体調が優れないからね」
「見栄を張ってるだけよ。蔡昭儀様の方が大家からの寵愛を1番いただいてるもの」
そしてある日もう一丸服薬した孫貴妃は翌日に急死した。
立て続けの事件に死んでゆく側室たちは何かの呪いだと噂される一方、四夫人の位につくのが恐ろしく思う者が増え、後宮は大騒ぎだ。そんな中悪行を成し遂げた蔡昭儀は貴妃の位となり蔡貴妃となって後宮を統率する事となった。
内定と外廷とを繋ぐのに絶対的に関わってくる後宮。騒々しい宮廷であるが蔡昭儀は国の花である牡丹を両手で包み愛でていた。
「いつか国1番の花になってやるわ」
梁徳妃が死んだ。孫貴妃も死んでしまった。多くの犠牲の中次に手をかけるのは誰なのか。
皇帝かもしれない。
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