4 / 213
枷
しおりを挟む
後ろで緊張が走るのを感じる。
ユウトの投げかけにガラルドが答えた。
「・・・なんだ?言ってみろ」
「オレは人間であるはずと記憶しているが現実は得体のしれない体になってしまった。ならこの先オレではない別の誰かがオレと同じような状態、バケモノになってしまう危険性もあるはずだ。とりあえずオレを生かして原因を探るなり様子を観ることを提案する。今後のために」
精一杯の屁理屈を並べる。観察しろと柔らかい言い回しを行ったが実験動物のように扱われる可能性もある。だがまずはここで死なないことが最優先だった。
「ほぅ・・・」
「おい、ガラルド。これの言うことを信じるのか?こちらをだましているのかもしれんぞ」
「そうかもしれない。だがこいつの手出しがなければ俺はおそらく死んでいただろう。ならその一度分の借りを返さなければならない」
「・・・わかった。本当に人である可能性も捨てきれないしな」
もう一人の男はしぶしぶガラルドに同意した。
ユウトは先ほどまで感じていた殺気の威圧感がしぼんでいくのを感じ取った。緊張感は続いているがひとまず今最大の危機を乗り越えたと思い安堵する。後ろに組んだ手を解こうとした。だがガラルドはそれを制止する。
「待て。お前を信用しきっているわけでわない。枷をつけてもらう」
「・・・わかった。言う通りにする」
言い放たれる条件に対して、反論する余地はなかった。
「レナ。いたらこっちに来てくれ」
ガラルドは誰かを呼び出す。
「はい。なんでしょうか」
声から察するにどうやら女性らしい。
「今から君のチョーカーを外し、こいつに取り付ける。首をだしてくれ」
「それは・・・いいんですか?」
レナは複雑な声色でガラルドに尋ね返した。
「今回のゴブリン討伐は完了した。お前の能力なら都市にもどるまで必要ないだろう」
「・・・わかりました。ただゴブリンが身に着けたものはもう使いたくないのでそれは起動させるか破棄していただきたい」
「わかった。では外すぞ」
そしてガラルドはぶつぶつと何か唱える。カイトには何をしているのか全く見えなかった。
ただ、レナと思われる女性の声から向けられた殺気は他のものと異質な感覚をユウトは感じていた。それはより鋭くとがった針を突き立てられているような感覚だった。
ユウトがレナから向けられた殺気に気おされて緊張しているとレナから何かを受け取ったガラルドがユウトの真後ろにせまる。
「今から魔導具を首に付けてもらう。チョーカーを知っているか?」
「魔導具?どういったものなんだ?」
「説明する。今から取り付けるのは魔導チョーカーというものだ。これは一度装着すると装着を行った者にしか外せない。そして同じく装着させた者はこれを起動し装着している者をいつでも殺すことができる」
ユウトは困惑した。〝魔導〟という単語が出てきたということはユウトの知るファンタジーの世界にとても似通っていることであり重要な情報だったが、それ以上に首に遠隔爆弾のようなものを取り付けるという説明に驚き、動揺を隠せない。
「これが最大の譲歩だ。どうする?」
ユウトの動揺を見てか、ガラルドの声が重く響き念を押した。
「・・・わかった。その条件を飲む。つけてくれ」
ユウトの予想した以上の枷だった。せいぜい縛られる程度と高をくくっていた。だがこの申し出を断ったところでここにいる武装した複数の人間を相手に勝てる見込みも逃げ切れる可能性も限りなく低い。ならとにかく延命を心掛けてこの見知らぬ世界の情報を集めることにした方が得策であると考え無理矢理に自身を納得させた。
後ろから首に何かが回る。肌ざわりからするとどうやら金属のようだ。そしてガラルドはつぶやく。
「接続承認、接続者ガラルド=バーナミジスタ、接続開始」
すると金属が首の周りに張り付く感覚がつたわってきた。息苦しさや不快感は感じられない。まるで肌と一体になったようなだった。
「これで手続きはできた。これからお前の命は俺に握られる。身の振り方には気をつけろ。そして今のお前は元人間であってもモンスターの姿に変わりないのだからな。チョーカーを発動しなくてもその命を保証されてはいない」
確かに未だユウトは殺気を感じ続けている。最初に比べれば随分軽いがそれでも気分のいいものではない。
「わかった。気を付けるよ」
背を向けたままユウトは答える。すると横に布が投げてよこされた。
「とりあえずはそれをまとえ。素っ裸では気も落ち着かないだろう。この洞窟から出て野営地へ一旦戻る。そこでお前に着るものをわける。立ち上がって俺についてこい」
ガラルドにうながされるままユウトは立ち上がる。その時これまで後ろにいた人達を目にした。それぞれの装備は異なり年齢もバラバラに見えて一貫性がない。だがその物腰は落ち着き払い、それぞれが冷たい視線をユウトに向けていた。
その中に唯一女性がいることに気づく。この女性がおそらくレナだろう。歳は若く赤毛の髪を頭の後ろでまとめていた。レナと一瞬目が合ったと思うとギロりとユウトは睨めつけられ、肝が冷えた。
立ち上がってからユウトは違和感に気づく。身長が低くなっていた。ユウトはこの場にいる人の中で最も背が低く一斉に見下ろされることになり、より強い威圧感を感じた。
(本当に姿が変わったんだな・・・)
土壇場の戦闘からきた緊張感が冷めて少し落ち着いたことで自身の身体の変化に改めて精神を揺さぶられた。
不穏な気持ちを抱えたユウトはガラルドを追って逃げるように歩き出した。
ユウトの投げかけにガラルドが答えた。
「・・・なんだ?言ってみろ」
「オレは人間であるはずと記憶しているが現実は得体のしれない体になってしまった。ならこの先オレではない別の誰かがオレと同じような状態、バケモノになってしまう危険性もあるはずだ。とりあえずオレを生かして原因を探るなり様子を観ることを提案する。今後のために」
精一杯の屁理屈を並べる。観察しろと柔らかい言い回しを行ったが実験動物のように扱われる可能性もある。だがまずはここで死なないことが最優先だった。
「ほぅ・・・」
「おい、ガラルド。これの言うことを信じるのか?こちらをだましているのかもしれんぞ」
「そうかもしれない。だがこいつの手出しがなければ俺はおそらく死んでいただろう。ならその一度分の借りを返さなければならない」
「・・・わかった。本当に人である可能性も捨てきれないしな」
もう一人の男はしぶしぶガラルドに同意した。
ユウトは先ほどまで感じていた殺気の威圧感がしぼんでいくのを感じ取った。緊張感は続いているがひとまず今最大の危機を乗り越えたと思い安堵する。後ろに組んだ手を解こうとした。だがガラルドはそれを制止する。
「待て。お前を信用しきっているわけでわない。枷をつけてもらう」
「・・・わかった。言う通りにする」
言い放たれる条件に対して、反論する余地はなかった。
「レナ。いたらこっちに来てくれ」
ガラルドは誰かを呼び出す。
「はい。なんでしょうか」
声から察するにどうやら女性らしい。
「今から君のチョーカーを外し、こいつに取り付ける。首をだしてくれ」
「それは・・・いいんですか?」
レナは複雑な声色でガラルドに尋ね返した。
「今回のゴブリン討伐は完了した。お前の能力なら都市にもどるまで必要ないだろう」
「・・・わかりました。ただゴブリンが身に着けたものはもう使いたくないのでそれは起動させるか破棄していただきたい」
「わかった。では外すぞ」
そしてガラルドはぶつぶつと何か唱える。カイトには何をしているのか全く見えなかった。
ただ、レナと思われる女性の声から向けられた殺気は他のものと異質な感覚をユウトは感じていた。それはより鋭くとがった針を突き立てられているような感覚だった。
ユウトがレナから向けられた殺気に気おされて緊張しているとレナから何かを受け取ったガラルドがユウトの真後ろにせまる。
「今から魔導具を首に付けてもらう。チョーカーを知っているか?」
「魔導具?どういったものなんだ?」
「説明する。今から取り付けるのは魔導チョーカーというものだ。これは一度装着すると装着を行った者にしか外せない。そして同じく装着させた者はこれを起動し装着している者をいつでも殺すことができる」
ユウトは困惑した。〝魔導〟という単語が出てきたということはユウトの知るファンタジーの世界にとても似通っていることであり重要な情報だったが、それ以上に首に遠隔爆弾のようなものを取り付けるという説明に驚き、動揺を隠せない。
「これが最大の譲歩だ。どうする?」
ユウトの動揺を見てか、ガラルドの声が重く響き念を押した。
「・・・わかった。その条件を飲む。つけてくれ」
ユウトの予想した以上の枷だった。せいぜい縛られる程度と高をくくっていた。だがこの申し出を断ったところでここにいる武装した複数の人間を相手に勝てる見込みも逃げ切れる可能性も限りなく低い。ならとにかく延命を心掛けてこの見知らぬ世界の情報を集めることにした方が得策であると考え無理矢理に自身を納得させた。
後ろから首に何かが回る。肌ざわりからするとどうやら金属のようだ。そしてガラルドはつぶやく。
「接続承認、接続者ガラルド=バーナミジスタ、接続開始」
すると金属が首の周りに張り付く感覚がつたわってきた。息苦しさや不快感は感じられない。まるで肌と一体になったようなだった。
「これで手続きはできた。これからお前の命は俺に握られる。身の振り方には気をつけろ。そして今のお前は元人間であってもモンスターの姿に変わりないのだからな。チョーカーを発動しなくてもその命を保証されてはいない」
確かに未だユウトは殺気を感じ続けている。最初に比べれば随分軽いがそれでも気分のいいものではない。
「わかった。気を付けるよ」
背を向けたままユウトは答える。すると横に布が投げてよこされた。
「とりあえずはそれをまとえ。素っ裸では気も落ち着かないだろう。この洞窟から出て野営地へ一旦戻る。そこでお前に着るものをわける。立ち上がって俺についてこい」
ガラルドにうながされるままユウトは立ち上がる。その時これまで後ろにいた人達を目にした。それぞれの装備は異なり年齢もバラバラに見えて一貫性がない。だがその物腰は落ち着き払い、それぞれが冷たい視線をユウトに向けていた。
その中に唯一女性がいることに気づく。この女性がおそらくレナだろう。歳は若く赤毛の髪を頭の後ろでまとめていた。レナと一瞬目が合ったと思うとギロりとユウトは睨めつけられ、肝が冷えた。
立ち上がってからユウトは違和感に気づく。身長が低くなっていた。ユウトはこの場にいる人の中で最も背が低く一斉に見下ろされることになり、より強い威圧感を感じた。
(本当に姿が変わったんだな・・・)
土壇場の戦闘からきた緊張感が冷めて少し落ち着いたことで自身の身体の変化に改めて精神を揺さぶられた。
不穏な気持ちを抱えたユウトはガラルドを追って逃げるように歩き出した。
0
あなたにおすすめの小説
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる