ゴブリンロード

水鳥天

文字の大きさ
5 / 213

野営地

しおりを挟む
 ガラルドと一緒にしばらく洞窟内を歩く。

 ある程度整備されているようでさほど歩きにくさは感じない。ただ素足で地面の冷たさを感じながら歩くのには心細さを感じた。明かりはガラルドが腰に光を発する何かを備え付けているようで前方はぼんやりと明るかった。

 そして洞窟の先から強い光が差した。だんだんと明るさが増す。強い光にユウトは思わず目を細めたがそのまま歩き続けた。しばらくして目が慣れたのか周りの様子が見えてくる。そこは大木が生い茂る森のようだった。少し開けておりそこには何人か人がいて武装している。その人らはガラルドを見てほっとしたようだったがユウトの方へ視線を移した途端に緊張が走りすぐさま武器を構えて臨戦態勢に移った。ユウトは思わず後ずさる。

「ま、待ってくれ。オレはゴブリンじゃない!」

 ユウトからの言葉を聞いて武器を構えた人らは困惑を見せたが武器と殺気はそのままだった。

「こいつはこれでも人間なのだそうだ。名をユウトというらしい。チョーカーを付けてある。問題を起こせば俺が処理する。ここを通してくれ」

 ガラルドが臨戦態勢の人たちに話しかけた。するとしぶしぶといった様子で武器をおろして道が開けられる。それでも殺気までは押さえきれそうになくユウトはピリッとした視線を感じながらガラルドとともにそのばを後にした。

 それからしばらくユウトはガラルドとともに木々の間を歩いた。木々はたくましく大きい。それぞれの木が所狭しと茂らせた葉で薄暗く木漏れ日が点々と地面を照らしている。地面には落ち葉が広がりふかふかしていたので洞窟を歩いていたときのような心細さは多少まぎらわしてくれていた。道しるべはないが数多くの足跡が重なり踏み固められたのか新しい道が出来上がっている。素足のユウトでも不自由なく歩くことができた。

 歩いている間、ガラルドは全く喋らない。完全に顔を覆ってしまう鎧兜のせいで表情を読み取ることはできないが初めて会ったときのような殺気はユウトには感じられなかった。さしせまって命の危険はないと判断する。ユウトは思い切ってガラルドに話しかけてみた。

「あの・・・ガラルド・・・さん?」

 恐る恐る声を掛けるがすぐに返事はない。聞こえたのか不安になりもう一度声を掛けようとしたときガラルドは答えた。

「“さん”はいらない、ガラルドでかまわん・・・なんだ?」

 声を出そうとしたタイミングでガラルドが答えたため不意を突かれてユウトは焦ってしまう。いろいろとこの世界のことについて情報を集めようといくつか質問の内容を考えていたが全て飛んでしまった。

「い、いい天気だな!」

 若干声が裏がりながらあたふたとどうでもいいことを口走った。

「そうだな」

 一言、ガラルドは答えてそれ以上会話は続かない。ユウトはめげずに話を続ける。なかばやけではあったが最大限このチャンスを活かそうと努める。

「あまり寒くないから今は春?夏だろうか?」

「今は春だ」

「じゃあ夜はまだ冷えるのか?」

「ああ」

「着るものをもらえなかったら凍えて死んでかもしれないな」

「ああ」

「・・・オレはこれからどうなるんだろうか」

「おとなしくしていればすぐに死ぬことはない」

「そ、そうか・・・おとなしくしているよ」

 それからしばらく話しかけてみたがガラルドは簡単な返事しか返さず、あまり多くの情報をユウトは得ることができなかった。

 そうしているうちに歩く先に火の明かりが見えてくる。どうやらそこが野営地のようだった。いくつかのテントのようなものの周りに数人の人がいて、周辺を見張っている者や料理をしている者、布を敷いて休んでいる者もいる。キャンプのようだとユウトは思った。

 ガラルドは洞窟の入り口でのやり取りと同じような会話を見張りと行い、キャンプへ入っていく。ユウトもそれに着いていくと相変わらずの視線を感じる。こんな自分を連れているのだからガラルドにも注目が集まっているのだが全く気にすることはなく動揺など微塵も見せない。

 野営地に入ってからもガラルドは何人かに声を掛けて服や靴を集めている。そして集め終わるとユウトへ渡し、布でできた簡素なテントをあてがわれそこで着替えるように促された。服や靴は単純な構造でユウトでも手間取らず着込むことができた。

「ありがとうガラルド。とりあずこれで少しは落ち着くよ」

「そうか。次は医者だ」

「あ、ああ。わかった」

 医者がこのキャンプに同行していることにユウトは少し驚いた。ここまでの短い間に見た人たちのユウトに対する反応の素早さ、不服そうでもガラルドの言うことに従う聞き分けの良さからみんなただものではないとユウトは感じていたが、装備は統一されておらず軍隊には見えない。しかし医者までついてきているというのは予想外でユウトは思っていた以上にこの武装集団は大がかりで大規模なのではと考えた。

 この異形の身体を医者に見せて容態を確認するか、人であることのお墨付きをもらうのだろうとユウトは予想する。

 そんなことを考えながら少し歩くと大きい天幕を張ったテントに着いた。ガラルドがまず中に入りそれに続いてユウトも入る。テントの中は清潔感があり外とはまた変わった匂いがしていた。いくつかベッドのようなものや折りたたまれまとめられた布など簡素ではあるがここが救護所であることがわかる。

 そして木箱を利用した台の傍らに座っている人が一人。白い服を着こんだ男が折り畳み式のように見える椅子に腰かけている。その男はガラルドを視界に入れるやれやれといったあきれた様子で声を掛けた。

「お怪我ですね。ガラルド隊長」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした

藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると 土地を蝕む邪気となって現れる。 それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。 派手な奇跡は起こらない。 けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。 ――その役目を、誰一人として理解しないまま。 奇跡が少なくなった。 役に立たない聖女はいらない。 そう言われ、私は静かに国を追放された。 もう、祈る理由はない。 邪気を生み出す原因に目を向けず、 後始末だけを押し付ける国を守る理由も。 聖女がいなくなった国で、 少しずつ異変が起こり始める。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 私がなぜ祈らなくなったのかを。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった

雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。 天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。 だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。 鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。 一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。 朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。 悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。 目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...