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生存戦略
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「まず、正直な所感を言わせてもらえば君の身体はゴブリンになっていると思う。ただね、厳密にはゴブリンそのものと断言はできない。それは魔力波は確かにゴブリンなんだけどかなり変わった波動を感じるからなんだ。いろいろなものが混ざっているというか意図的な調整を施されている感じがする」
自身がゴブリンであると告げられてもユウトはあまり動じなかった。これまでの周りの人たちの反応からモンスターにしか見えない容姿をしているのだろうと想像していたためだった。
ユウトの落ち着いた様子を観察しながらヨーレンはさらに続けた。
「だからもし君の人としての身体を改造して今のゴブリンのような姿になったと仮定したなら元の人としての身体に戻すことはほぼ不可能だと僕は思う」
もう人としての身体に戻ることはできないという意味だとユウトは捉えた。自分の知っている体に戻ることができない可能性も覚悟していたユウトだったがそれでも体は緊張してこわばり、心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。希望は限りなく減り続けている。
「大丈夫か?」
ユウトの傍らで一緒に話を聞いていたガラルドがユウトの様子を観て尋ねる。ユウトはガラルドから声を掛けられたおかげか狭くなっていく視界から引っ張り戻された。
「・・・大丈夫。すまない。それでヨーレン。オレはこれからどうしたらいいだろう?人に戻れる可能性がほぼないのならモンスターとして殺されるだろうか」
「・・・うーん。かなり難しい質問だね。君はかなり希少な存在だ。ゴブリンでありながら人としての記憶を持ち、問題なく意思疎通ができる。少なくとも僕はそんな例を知らない。それにゴブリンなんだけどこれまでのゴブリンとも違った魔力波を持っていることを考えても検体としての価値は計り知れない。君を欲しがる研究者はかなりいると思うよ。君の意志を無視してでも捕えようとする者さえいるだろうな」
チョーカーがある限り逃げることは困難。このまま連れていかれれば実験動物扱い。二つの問題がユウトへ重くのしかかる。ただ、ガラルドと対峙した時に比べれば今すぐ命を落とすような状況ではなかった。さっきは頭が真っ白になりかけたがユウトはもう一度しっかり頭を回転させ打開策を考える。
(実験動物になるしかないということはそれしか現状の自身には価値がないということ。それ以外に役に立たない存在であるということ。なら実験動物以上の価値があると示さないといけない。しかも生きているだけで周りからいい顔されないからオレの評価はマイナスからスタートだ。どうする。今の手札は何があるだろう。ゴブリンの身体。ガラルドを一度手助けした借り。・・・チョーカーか。これのせいでいつ殺されてもおかしくないんだな。いや、これはもしかしたら・・・)
しばらくだまっていたユウトをガラルドとヨーレンは静かに待っていた。そして何かを思いついたように尋ねる。
「なぁ。ここの人達はどういう集まりなんだ?戦闘集団で間違いはないか?」
唐突なユウトの質問に少し気圧されるようにヨーレンが答える。
「うん。戦闘集団に間違いはないだろうね。小鬼殲滅ギルドの実行部隊だ」
そう聞くとユウトはさらに言葉を続ける。
「このギルドにオレも加えて欲しい!」
意気揚々で名案とばかりに提案する。
ヨーレンはユウトの提案に目を見張り考え込んだのち、この提案に対しての感想を語り出した。
「突拍子もないが良い案だとは思う。このギルドの発言力はなかなかのものだから後ろ盾と身分を証明するには十分だけど・・・」
ここまで言ったあとヨーレンはさらに思案し、言いにくそうに言葉をつづけた。
「一番の問題はこのギルドに所属する構成員のほぼすべてはゴブリンに対して憎悪の感情を持っていることだ。下手をすれば君はギルドメンバーに後ろから刺されることだってありうる」
ヨーレンの言葉を聞いても大してユウトは驚かない。短い時間ではあったがここまでの道すがら自身に向けられる殺意を考えればユウトには当然だった。
「だから丁度いいんだ。このギルドに所属している限りいつでもオレを殺すことができる。このチョーカーがある限り。いつでも殺すことができるからこそ今すぐ殺さない。もったいないと思っている限り猶予が生まれる。それにゴブリンを最も憎む組織の下にいる事で他の誰かがオレに手を出せばギルドを敵に回すかもしれないと牽制することもできる」
実験動物になる危険性よりこのギルドのメンバーに殺される危険性の方が高いともユウトは考えていた。それなら正式にこの組織の傘下に入ってしまえば『いつでも殺せる』状態になる。すると別の問題『いつ殺す』のかにすり替えられる。ユウトの希少性をヨーレンが保証してくれるからこそ『いつ殺す』のか問題は決着がつくまで時間がかかるはずだと予想した。時間を稼ぎ、その間に生き延びるための知識と技術を身に着け、評価を得る。これがユウトが導き出した生存戦略だった。
ヨーレンは「確かにそうかもしれないが・・・」と頭が痛そうな様子でつぶやくと深く悩みだした。
一時の静寂にユウトは緊張しながらヨーレンの意見を待っていたが突然ガラルドが口を開いた。
「いいだろう。ユウト。お前のギルド参加を認める」
ガラルドが突然言い放ったギルドへの参加許可にヨーレンは慌てた。
自身がゴブリンであると告げられてもユウトはあまり動じなかった。これまでの周りの人たちの反応からモンスターにしか見えない容姿をしているのだろうと想像していたためだった。
ユウトの落ち着いた様子を観察しながらヨーレンはさらに続けた。
「だからもし君の人としての身体を改造して今のゴブリンのような姿になったと仮定したなら元の人としての身体に戻すことはほぼ不可能だと僕は思う」
もう人としての身体に戻ることはできないという意味だとユウトは捉えた。自分の知っている体に戻ることができない可能性も覚悟していたユウトだったがそれでも体は緊張してこわばり、心臓の鼓動が早くなっていくのを感じる。希望は限りなく減り続けている。
「大丈夫か?」
ユウトの傍らで一緒に話を聞いていたガラルドがユウトの様子を観て尋ねる。ユウトはガラルドから声を掛けられたおかげか狭くなっていく視界から引っ張り戻された。
「・・・大丈夫。すまない。それでヨーレン。オレはこれからどうしたらいいだろう?人に戻れる可能性がほぼないのならモンスターとして殺されるだろうか」
「・・・うーん。かなり難しい質問だね。君はかなり希少な存在だ。ゴブリンでありながら人としての記憶を持ち、問題なく意思疎通ができる。少なくとも僕はそんな例を知らない。それにゴブリンなんだけどこれまでのゴブリンとも違った魔力波を持っていることを考えても検体としての価値は計り知れない。君を欲しがる研究者はかなりいると思うよ。君の意志を無視してでも捕えようとする者さえいるだろうな」
チョーカーがある限り逃げることは困難。このまま連れていかれれば実験動物扱い。二つの問題がユウトへ重くのしかかる。ただ、ガラルドと対峙した時に比べれば今すぐ命を落とすような状況ではなかった。さっきは頭が真っ白になりかけたがユウトはもう一度しっかり頭を回転させ打開策を考える。
(実験動物になるしかないということはそれしか現状の自身には価値がないということ。それ以外に役に立たない存在であるということ。なら実験動物以上の価値があると示さないといけない。しかも生きているだけで周りからいい顔されないからオレの評価はマイナスからスタートだ。どうする。今の手札は何があるだろう。ゴブリンの身体。ガラルドを一度手助けした借り。・・・チョーカーか。これのせいでいつ殺されてもおかしくないんだな。いや、これはもしかしたら・・・)
しばらくだまっていたユウトをガラルドとヨーレンは静かに待っていた。そして何かを思いついたように尋ねる。
「なぁ。ここの人達はどういう集まりなんだ?戦闘集団で間違いはないか?」
唐突なユウトの質問に少し気圧されるようにヨーレンが答える。
「うん。戦闘集団に間違いはないだろうね。小鬼殲滅ギルドの実行部隊だ」
そう聞くとユウトはさらに言葉を続ける。
「このギルドにオレも加えて欲しい!」
意気揚々で名案とばかりに提案する。
ヨーレンはユウトの提案に目を見張り考え込んだのち、この提案に対しての感想を語り出した。
「突拍子もないが良い案だとは思う。このギルドの発言力はなかなかのものだから後ろ盾と身分を証明するには十分だけど・・・」
ここまで言ったあとヨーレンはさらに思案し、言いにくそうに言葉をつづけた。
「一番の問題はこのギルドに所属する構成員のほぼすべてはゴブリンに対して憎悪の感情を持っていることだ。下手をすれば君はギルドメンバーに後ろから刺されることだってありうる」
ヨーレンの言葉を聞いても大してユウトは驚かない。短い時間ではあったがここまでの道すがら自身に向けられる殺意を考えればユウトには当然だった。
「だから丁度いいんだ。このギルドに所属している限りいつでもオレを殺すことができる。このチョーカーがある限り。いつでも殺すことができるからこそ今すぐ殺さない。もったいないと思っている限り猶予が生まれる。それにゴブリンを最も憎む組織の下にいる事で他の誰かがオレに手を出せばギルドを敵に回すかもしれないと牽制することもできる」
実験動物になる危険性よりこのギルドのメンバーに殺される危険性の方が高いともユウトは考えていた。それなら正式にこの組織の傘下に入ってしまえば『いつでも殺せる』状態になる。すると別の問題『いつ殺す』のかにすり替えられる。ユウトの希少性をヨーレンが保証してくれるからこそ『いつ殺す』のか問題は決着がつくまで時間がかかるはずだと予想した。時間を稼ぎ、その間に生き延びるための知識と技術を身に着け、評価を得る。これがユウトが導き出した生存戦略だった。
ヨーレンは「確かにそうかもしれないが・・・」と頭が痛そうな様子でつぶやくと深く悩みだした。
一時の静寂にユウトは緊張しながらヨーレンの意見を待っていたが突然ガラルドが口を開いた。
「いいだろう。ユウト。お前のギルド参加を認める」
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