ゴブリンロード

水鳥天

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強引

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「いいんですか、勝手に認めてしまって。他のメンバーの意見も聞かずに決めてしまっては軋轢が生じます。組織が揺らぎますよ!」

 ユウトもヨーレンの言う通りだと思った。ユウトはこのギルドへ加わりたいという提案を審議するだけでかなりの時間がかかると予想していた。ギルドへ加わる事が許されるにせよ許されないにせよ。

 しかし、ガラルドは今はっきりとギルドに入ることを認めた。ガラルドがただモノではないとは感じていたがヨーレンのうろたえ様からしてユウトが感じていた以上の大物で影響力を持っているらしいことがわかる。

 そうなるとヨーレンの心配もうなずける。ガラルドの一存で決めてしまえば確実に反感を買うはずだった。その反感がユウト自身へ向けられる可能性もある。かえって危険性を高めてしまうことにユウトは焦る。

「お願いする立場のオレが言うのもおかしいが、しっかり他のメンバーと話し合った方がいいと思うぞ。オレを快く思っていない者がほとんどだろ」

 ユウトはヨーレンの意見を後押しし、ガラルドの独断を踏みとどまってもらおうとした。だがどうやらガラルドには気を配ったヨーレン、ユウトの二人に全く気にする様子もない。

「ユウトは今後のゴブリン討伐に必ず使い物になる。この容姿はゴブリンを欺きやすく斥候・潜入として使いやすい。使える可能性があるならそれを試してみる価値はある。本人の意思で同じ姿のゴブリン退治を手伝おうというのだから交渉の手間が省けた。不利益を及ぼすなら殺すまでだがまだ今は不利益はない」

 淡々と語るガラルドの様子をみてユウトは本当に躊躇なく殺されるのだろうと容易に想像できてしまい背筋がこわばるのを感じた。

「あなたがそこまで言うなら構いませんが・・・隊員のことも少しは気を遣ってくだい。たとへ隊長の決断でも今回は納得できない者は必ずいるはずですから」

 半ばあきらめた様子でヨーレンはガラルドへ忠告をした。そしてユウトへ語り掛ける。

「と、いうことです。ユウト、君はこれよりこの小鬼殲滅ギルドのメンバーとして認められました。君の身の安全はギルドマスターでもあるガラルドが保証することになる。あらためてよろしく、ユウト。困難はこれからも続くだろうけど、できる限り僕は君を助けよう」

 励ますようなヨーレンの言葉。ヨーレン本人はそれほど意識してユウトに寄り添った感情はなかったかもしれない。しかしユウトにとってこの世界に来てからの向けられ続けた攻撃的な態度や意志からすればその言葉は思いがけないものだった。これまで張り詰めていた気持ちが少し緩みユウトは目頭が熱くなる。

「ありがとう、ヨーレン。こちらこそよろしく頼む」

 ユウトは感慨にふけりスキができていたのかもしれない。背後に迫るガラルドの気配に気が付くことができなかった。

 ガシっと力強くユウトの二の腕がつかまれる。そしてグイっとユウトの意志を無視して腕から体が引っ張られた。あまりの強引さはユウトは一瞬、命の危険を感じてしまうほどだ。

「ど、どうした?!」

 なかば引きずられながらひっぱられ続けるユウトがガラルドへ尋ねる。

「今のままでは使い物にならない。すぐに装備をそろえて明日から修練を行う。ついてこい」

 まっとうな理由ではあるがあまりの強引さにユウトはあきれてしまう。力強くつかまれた腕を振りほどく気力もわかずなすがままずるずると引きずられて救護テントを後にした。



 昼間でさえ薄暗い森は日が沈むとその暗さをより一層深める。

 木々の枝葉の隙間から星の明かりでさへ差し込むような暗闇に荒い息遣いと落ち葉を掻き分け獣が走っている。たまに立ち止まると周囲の匂いを嗅ぐように地面へ頭を近づけ、また駆け出す。

 そして獣は見つけた。それは一匹のゴブリン。ゴブリンは追われているのを知っていたのか必死に走っている。

 獣はその必死さをあざ笑うかのようにゴブリンの走る速度に合わせて距離を取って並走した。そののちゴブリンが息を切らせて速度が落ちたのを見計らい襲い掛かる。

 一瞬のうちに命を刈り取られたゴブリンは悲鳴を上げる間も与えられない。その場にはバラバラの肉片だけ残っていた。

 ゴブリンだったものを見つめ一拍の間をおいたのち、獣はまた闇夜へ駆け出しその姿を消した。
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