19 / 213
セブル
しおりを挟む
そう言うとヨーレンはテントから出ていった。
「そんなに寝てたのか」
確かにだるさがあるとはいえ体の調子は不調といえるほどではなく二、三日ほど徹夜して睡眠をとった後の寝起きといった感覚。せいぜい丸一日寝ていた程度だと思っていた。よくわからないことだらけのゴブリンの身体だったが丈夫さにかけてはありがたいとユウトは感心する。
それで足元でそわそわしていたクロネコテンを抱き上げベッドの上に降ろしてやる。手触りはとてもよく毛が高級品として扱われるのも納得できる。ただ予想以上にふかふかしていて骨や筋肉が感じられず、見た目より重たいぬいぐるみを持ち上げているような錯覚をユウトは感じた。
「さて、お前をどうしたもんかな」
ユウトはベッドの上で座りなおし、ネコクロテンと向き合う。
「えっとえっと・・・いろいろ役に立って見せますです。えーっと、潜入とか得意です。三日間ばれずにおそばにいましたし・・・」
三日間この救護テントに潜んでいたという話が気になりユウトは考えを巡らす。この魔物に以前のような攻撃意志があるのならユウト自身に危害を加えるタイミングは必ずあったはずだった。
「オレが寝ていたこの三日間の様子はどうだった?」
ユウトは本当に潜んでいたのか、攻撃意志はなかったのかを試す質問をしてみることにした。
「はい。ボクの意識が回復してすぐにボクの上で気を失っていたユウト様を二人組が運び出しました。一人はレナという女、もう一人は甲冑姿の男です。ユウト様のお名前はこのときのレナの呼びかけで知りました。ボクはそのすぐあとに焦げた体から抜け出してあとを追いました」
クロネコテンは淡々と語っている。
「ここは人が多く目につきやすかったのでユウト様からいったん離れます。隙をみて潜入し、あちこち探してこのテントで治療を受けているユウト様を見つけました。それから今までこのテントに潜んでました。
えっとそれでヨーレンがユウト様へ治癒術を定期的にかけてました。他に使い古された鎧の男が一度見に来て、レナが数時間おきにここに来てはユウト様の身体を拭いたり左腕の傷・・・包帯を取り換えたりしていました」
報告に気になる点はなく、概ねユウトの予想していた内容と変わらない。ユウトはうーんとうなり悩んだ。
「えっとえっと、まだ魔力が少なくてできることは少ないでけど、魔力が溜まれば変身して移動の脚になったり戦力にもなります!」
必死に売り込みをかけるようにクロネコテンはユウトへアピールをする。ユウトには自身の面接での思い出と重なりどこか懐かしさを覚えた。ユウトは結審する。
「わかった。お前を採用しよう。家来だと少し仰々しいから部下で。あと様付けもやめてくれ。呼び捨てが気になるならさん付けで頼む。それで名前はあるのか?」
「ありがとうございます!ユウトさん!えっと名前は持っていません。お好きなように呼んでもらってかまいせん」
クロネコテンはキラキラさせ期待感でいっぱいの瞳でユウトを見つめている。
「名前はないと不便だしな・・・うーむ。クロネコ、クロテン・・・セブルでどうだろう」
「わわわ!とても気に入りました!今後セブルと名乗らせてもらいます!」
セブルはくねくねと身体を動かしだし、小躍りをしているようだった。
とりあえず目の前の問題に一区切りつけたユウトは身体のだるさを思い出す。
「じゃあセブル。オレはもうひと眠りすることにするよ。何か危険が迫ってると判断したら起こしてくれ」
そう言うとユウトはいそいそとベットに横になる。
「了解しました!あ、ボク毛布になれますよ」
セブルは小さく飛び上がり四肢を伸ばすと敷物の毛皮のように平たく伸び、ユウトの身体に覆いかぶさる。その触り心地はユウトの体験したことないくらい柔らかくきめ細かい。毛質まで変わっているようだった。
ユウトは少し驚いてやめさせようと思ったがセブルの毛布はこれまで使っていたものよりことさら暖かく快適で、その誘惑に勝てずあきらめて眠りについた。
ユウトがしばらく眠りに着いてから救護テントの中をいそいそとうかがうレナの姿があった。
「ヨーレンさんは起きたって言ってたけど・・・」
レナには黒い何かを覆い被ったユウトを見つける。どうやらまた寝たのだと思いいたったが黒いものが気になって近づいた。ある程度近づくと黒いものは毛布だとわかる。四隅は脚になっているが頭が見当たらない。あまりの毛並みの良さにつられて触ってみようと手を伸ばすと触れる寸前にゅっと猫のような耳と顔が現れた。
「ッ!?」
レナは声にならない驚きで一瞬硬直する。
「ぃーぅ」
猫の頭は音にならない吐息のような小さい声で鳴くと頭を隠した。
レナには何が起こったのかわからなかったが、邪魔をするなと言っている気がして静かに救護テントを後にした。
「そんなに寝てたのか」
確かにだるさがあるとはいえ体の調子は不調といえるほどではなく二、三日ほど徹夜して睡眠をとった後の寝起きといった感覚。せいぜい丸一日寝ていた程度だと思っていた。よくわからないことだらけのゴブリンの身体だったが丈夫さにかけてはありがたいとユウトは感心する。
それで足元でそわそわしていたクロネコテンを抱き上げベッドの上に降ろしてやる。手触りはとてもよく毛が高級品として扱われるのも納得できる。ただ予想以上にふかふかしていて骨や筋肉が感じられず、見た目より重たいぬいぐるみを持ち上げているような錯覚をユウトは感じた。
「さて、お前をどうしたもんかな」
ユウトはベッドの上で座りなおし、ネコクロテンと向き合う。
「えっとえっと・・・いろいろ役に立って見せますです。えーっと、潜入とか得意です。三日間ばれずにおそばにいましたし・・・」
三日間この救護テントに潜んでいたという話が気になりユウトは考えを巡らす。この魔物に以前のような攻撃意志があるのならユウト自身に危害を加えるタイミングは必ずあったはずだった。
「オレが寝ていたこの三日間の様子はどうだった?」
ユウトは本当に潜んでいたのか、攻撃意志はなかったのかを試す質問をしてみることにした。
「はい。ボクの意識が回復してすぐにボクの上で気を失っていたユウト様を二人組が運び出しました。一人はレナという女、もう一人は甲冑姿の男です。ユウト様のお名前はこのときのレナの呼びかけで知りました。ボクはそのすぐあとに焦げた体から抜け出してあとを追いました」
クロネコテンは淡々と語っている。
「ここは人が多く目につきやすかったのでユウト様からいったん離れます。隙をみて潜入し、あちこち探してこのテントで治療を受けているユウト様を見つけました。それから今までこのテントに潜んでました。
えっとそれでヨーレンがユウト様へ治癒術を定期的にかけてました。他に使い古された鎧の男が一度見に来て、レナが数時間おきにここに来てはユウト様の身体を拭いたり左腕の傷・・・包帯を取り換えたりしていました」
報告に気になる点はなく、概ねユウトの予想していた内容と変わらない。ユウトはうーんとうなり悩んだ。
「えっとえっと、まだ魔力が少なくてできることは少ないでけど、魔力が溜まれば変身して移動の脚になったり戦力にもなります!」
必死に売り込みをかけるようにクロネコテンはユウトへアピールをする。ユウトには自身の面接での思い出と重なりどこか懐かしさを覚えた。ユウトは結審する。
「わかった。お前を採用しよう。家来だと少し仰々しいから部下で。あと様付けもやめてくれ。呼び捨てが気になるならさん付けで頼む。それで名前はあるのか?」
「ありがとうございます!ユウトさん!えっと名前は持っていません。お好きなように呼んでもらってかまいせん」
クロネコテンはキラキラさせ期待感でいっぱいの瞳でユウトを見つめている。
「名前はないと不便だしな・・・うーむ。クロネコ、クロテン・・・セブルでどうだろう」
「わわわ!とても気に入りました!今後セブルと名乗らせてもらいます!」
セブルはくねくねと身体を動かしだし、小躍りをしているようだった。
とりあえず目の前の問題に一区切りつけたユウトは身体のだるさを思い出す。
「じゃあセブル。オレはもうひと眠りすることにするよ。何か危険が迫ってると判断したら起こしてくれ」
そう言うとユウトはいそいそとベットに横になる。
「了解しました!あ、ボク毛布になれますよ」
セブルは小さく飛び上がり四肢を伸ばすと敷物の毛皮のように平たく伸び、ユウトの身体に覆いかぶさる。その触り心地はユウトの体験したことないくらい柔らかくきめ細かい。毛質まで変わっているようだった。
ユウトは少し驚いてやめさせようと思ったがセブルの毛布はこれまで使っていたものよりことさら暖かく快適で、その誘惑に勝てずあきらめて眠りについた。
ユウトがしばらく眠りに着いてから救護テントの中をいそいそとうかがうレナの姿があった。
「ヨーレンさんは起きたって言ってたけど・・・」
レナには黒い何かを覆い被ったユウトを見つける。どうやらまた寝たのだと思いいたったが黒いものが気になって近づいた。ある程度近づくと黒いものは毛布だとわかる。四隅は脚になっているが頭が見当たらない。あまりの毛並みの良さにつられて触ってみようと手を伸ばすと触れる寸前にゅっと猫のような耳と顔が現れた。
「ッ!?」
レナは声にならない驚きで一瞬硬直する。
「ぃーぅ」
猫の頭は音にならない吐息のような小さい声で鳴くと頭を隠した。
レナには何が起こったのかわからなかったが、邪魔をするなと言っている気がして静かに救護テントを後にした。
0
あなたにおすすめの小説
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる