45 / 213
空中戦
しおりを挟む
ユウトは魔鳥に向けて山なりの軌道で宙を舞う。ディゼルの魔術盾の威力調整、方向調整は完璧だったがユウト自身の態勢は若干回転をしていた。
足場のない無重力状態の中でもユウトは視線を魔鳥に向けたまま魔剣を振るタイミングを見計らい態勢を整える。
その時体の内側から雪崩のように精気が膨れ上がる感覚に襲われる。この異変は直前に飲み込んだ丸薬がその効果を発揮しだしたのだとユウトは解釈した。
精気が満たされるとともにユウトの感覚はどこまでも鋭敏さを増し、時の流れが緩やかになっていく。
迫るユウトに気づいたのか不安定な態勢にも関わらずユウトに向けて頭を向ける魔鳥。その魔鳥の一挙一動からユウトはすぐ先の未来を予想し事態の深刻さに気付いた。
ユウトはすぐさま魔剣に力を込め光の刃を展開させる。ディゼルの剣を断った時のように徹底的に出力を圧縮、さらにまだ遠い魔鳥の頭めがけ刃を伸ばした。
横なぎに振るった魔剣は魔鳥をとらえる。黄銅色の装甲板に確かな傷を刻んだ。
だが足りない。魔鳥の装甲は流動し魔剣の刃が触れる個所を厚くさせることでユウトの一振りを凌ぎ切った。
魔鳥の頭は展開を始め魔力が収束していく様をユウトはゆっくりと流れる時間の中で見つめることしかできない。無防備な空中、防御手段を持たないユウトは魔鳥の放つ光帯を体のどの部位を犠牲にして凌ぐか、ということを考えるしか手段が残されていなかった。
もう光帯が発射されるかというその時、ユウトの視覚は視野の隅で不自然に動く物体をとらえる。緩やかな円錐形した物体が回転しながら異様な速度で一直線に進行し魔鳥の本体を打った。
円錐の物体は魔鳥の体を貫通こそしなかったもののその衝撃は魔鳥全身を揺さぶり今にも光帯を放とうと狙いを定めていた魔鳥の頭部をユウトからずらした。
そして光帯は放たれる。熱を感じる近さでユウトの近くを横切った。
魔鳥に与えられた衝撃は取り繕った安定の均衡を揺さぶる。魔鳥は体を大きくうならせもう一度崩れた態勢を取り戻そうとしてその体は大きく回転を始めた。
瞬間ユウトは察知する。これまで隠されていた魔槍の傷が覗くと予見できた。
放物線を描くユウトは空中で態勢を崩した魔鳥の真上にまで迫る。最初で最後のチャンスをものにしようと狙い定めて魔剣を振るった。
伸びた刃は傷をとらえて抉り斬る。魔鳥の装甲は厚みを増す間もなくユウトの魔剣は内部へ確かな損傷を与えた。
魔鳥の首元から下は装甲の彩度が一気に下がり動きも止まる。浮遊するための機能も停止したように見え、きりもみしながら落下を始めた。
魔鳥は落下しながらもまだ動く頭部と首をしならせる。最後の一撃とばかりに頭部発射口は開かれたままユウトへと向けられた。
ユウトは間髪いれず再び光魔剣の斬撃を浴びせ続ける。残りの魔力を出し切るような連撃に魔鳥の装甲は耐えきれず剥がれ落ちていき頭部の結晶体を露出させた。
最後の一撃とばかりにユウトは力を振り絞り結晶体へ光の刃で斬りつける。結晶体に亀裂が刻まれそこを起点にひびが入り粉々になって飛び散った。
飛び散った結晶体の中心には今だ赤々と輝く磨かれた石が現れる。ユウトの体も飛ばされた勢いを失い落下を始めていた。赤い石は意思を持ったように落下の中でユウトの目の前まで近づき輝きを失う。思わずユウトは空いた手で石を掴んだ。その瞬間ユウトは水面に落ちる。
城壁の上で一部始終を傍観していた者たちはあっけに取られ水面に落ちた魔鳥が打ち上げる水柱を息を飲んで見つめる。
「どこッ?!ユウトは!」
ハッと気づいてまず声をあげたのはレナだった。
クロノワはすぐさま船を出すよう指令を出す。あたりの兵士たちもあわただしく一斉に動き出した。
レナは水しぶきが霧のように舞う水面を注意深く見つめる。橋上ではセブル、ディゼルが橋の欄干ギリギリまで身を乗り出し水面を見ていた。セブルは今にも水面へ飛び込もうとするほど乗り出している。
ユウトの姿は未だ発見できない。すると河岸の方から水面の下を移動する何かがレナの目に飛び込んできた。
「何?アレ」
丸みを帯びた卵のようなシルエットの何かは水面下をセブルのトップスピード並みの速さで後方に白い尾を残しながら移動している。その水中移動物体は魔鳥の水没地点へ近づくと影が消えた。
しばらくしてとユウトが水面から現れる。
しかしその様子はは不自然だった。
ユウトの体はほとんどが水面上から出ている。何かしら水中から押し上げられているようだった。
ユウトはそのまま橋脚まで移動すると橋脚からせり出した基礎の部分に降りる。レナにはそれ以上の詳細は遠すぎて見えなかった。
「よかった。無事みたい」
誰に告げるでもなくレナはつぶやく。何があったのかはわからなかったがユウトの無事を目視して緊張した肩の力が抜けた。
足場のない無重力状態の中でもユウトは視線を魔鳥に向けたまま魔剣を振るタイミングを見計らい態勢を整える。
その時体の内側から雪崩のように精気が膨れ上がる感覚に襲われる。この異変は直前に飲み込んだ丸薬がその効果を発揮しだしたのだとユウトは解釈した。
精気が満たされるとともにユウトの感覚はどこまでも鋭敏さを増し、時の流れが緩やかになっていく。
迫るユウトに気づいたのか不安定な態勢にも関わらずユウトに向けて頭を向ける魔鳥。その魔鳥の一挙一動からユウトはすぐ先の未来を予想し事態の深刻さに気付いた。
ユウトはすぐさま魔剣に力を込め光の刃を展開させる。ディゼルの剣を断った時のように徹底的に出力を圧縮、さらにまだ遠い魔鳥の頭めがけ刃を伸ばした。
横なぎに振るった魔剣は魔鳥をとらえる。黄銅色の装甲板に確かな傷を刻んだ。
だが足りない。魔鳥の装甲は流動し魔剣の刃が触れる個所を厚くさせることでユウトの一振りを凌ぎ切った。
魔鳥の頭は展開を始め魔力が収束していく様をユウトはゆっくりと流れる時間の中で見つめることしかできない。無防備な空中、防御手段を持たないユウトは魔鳥の放つ光帯を体のどの部位を犠牲にして凌ぐか、ということを考えるしか手段が残されていなかった。
もう光帯が発射されるかというその時、ユウトの視覚は視野の隅で不自然に動く物体をとらえる。緩やかな円錐形した物体が回転しながら異様な速度で一直線に進行し魔鳥の本体を打った。
円錐の物体は魔鳥の体を貫通こそしなかったもののその衝撃は魔鳥全身を揺さぶり今にも光帯を放とうと狙いを定めていた魔鳥の頭部をユウトからずらした。
そして光帯は放たれる。熱を感じる近さでユウトの近くを横切った。
魔鳥に与えられた衝撃は取り繕った安定の均衡を揺さぶる。魔鳥は体を大きくうならせもう一度崩れた態勢を取り戻そうとしてその体は大きく回転を始めた。
瞬間ユウトは察知する。これまで隠されていた魔槍の傷が覗くと予見できた。
放物線を描くユウトは空中で態勢を崩した魔鳥の真上にまで迫る。最初で最後のチャンスをものにしようと狙い定めて魔剣を振るった。
伸びた刃は傷をとらえて抉り斬る。魔鳥の装甲は厚みを増す間もなくユウトの魔剣は内部へ確かな損傷を与えた。
魔鳥の首元から下は装甲の彩度が一気に下がり動きも止まる。浮遊するための機能も停止したように見え、きりもみしながら落下を始めた。
魔鳥は落下しながらもまだ動く頭部と首をしならせる。最後の一撃とばかりに頭部発射口は開かれたままユウトへと向けられた。
ユウトは間髪いれず再び光魔剣の斬撃を浴びせ続ける。残りの魔力を出し切るような連撃に魔鳥の装甲は耐えきれず剥がれ落ちていき頭部の結晶体を露出させた。
最後の一撃とばかりにユウトは力を振り絞り結晶体へ光の刃で斬りつける。結晶体に亀裂が刻まれそこを起点にひびが入り粉々になって飛び散った。
飛び散った結晶体の中心には今だ赤々と輝く磨かれた石が現れる。ユウトの体も飛ばされた勢いを失い落下を始めていた。赤い石は意思を持ったように落下の中でユウトの目の前まで近づき輝きを失う。思わずユウトは空いた手で石を掴んだ。その瞬間ユウトは水面に落ちる。
城壁の上で一部始終を傍観していた者たちはあっけに取られ水面に落ちた魔鳥が打ち上げる水柱を息を飲んで見つめる。
「どこッ?!ユウトは!」
ハッと気づいてまず声をあげたのはレナだった。
クロノワはすぐさま船を出すよう指令を出す。あたりの兵士たちもあわただしく一斉に動き出した。
レナは水しぶきが霧のように舞う水面を注意深く見つめる。橋上ではセブル、ディゼルが橋の欄干ギリギリまで身を乗り出し水面を見ていた。セブルは今にも水面へ飛び込もうとするほど乗り出している。
ユウトの姿は未だ発見できない。すると河岸の方から水面の下を移動する何かがレナの目に飛び込んできた。
「何?アレ」
丸みを帯びた卵のようなシルエットの何かは水面下をセブルのトップスピード並みの速さで後方に白い尾を残しながら移動している。その水中移動物体は魔鳥の水没地点へ近づくと影が消えた。
しばらくしてとユウトが水面から現れる。
しかしその様子はは不自然だった。
ユウトの体はほとんどが水面上から出ている。何かしら水中から押し上げられているようだった。
ユウトはそのまま橋脚まで移動すると橋脚からせり出した基礎の部分に降りる。レナにはそれ以上の詳細は遠すぎて見えなかった。
「よかった。無事みたい」
誰に告げるでもなくレナはつぶやく。何があったのかはわからなかったがユウトの無事を目視して緊張した肩の力が抜けた。
0
あなたにおすすめの小説
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる