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朝日
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ユウトは地上に降り立つと振り返り自身を水中から押し上げた謎の物体を凝視する。曲線をたたえた不自然なほど精密な楕円の球面が水面からのぞいていた。まるで顔のようにも見える目や口のようなものを備えている。しかしどれも記号的でユウトにはロボットのキャラクターのように見えた。
ユウトはソレと一時の間向き合っていたが声が近づいてくるとソレは水面下に沈みその姿は消えてしまった。
ユウトは気が抜けてしまい地面にへたり込んでしまう。強く握りしめられていた両手の力が抜けた。右手に魔剣、左手には赤い石。どちらも着水の衝撃で手放すことはなく少しほっとした。
声はさらに近づきそれが自身を呼ぶ声だとユウトはようやく気づく。その声はディゼルとセブルだった。
座り込んだ場所からユウトは橋を見上げると丁度ディゼルとセブルが橋の上から顔を出す。セブルは間髪入れず橋脚をつたいユウトの元へ飛び降りてきた。
「ケガありませんかユウトさん!魔力の残量はどうですか?」
矢継ぎ早にセブルはユウトに質問しながら座り込んでいるユウトの体に顔を近づけ確認する。
「大丈夫だよセブル。かなり危なかったけどなんとかなった。河に落ちた時は全然体が浮かび上がんなくて結構焦ったけど」
一通りユウトの体を見回し終え、セブルは一安心とユウトの目の前に座る。
「ユウトさんを浮かび上がらせたアレはなんだったんでしょう」
「わからない。まったく異質だった。戦った魔鳥とも何か違うしオレを攻撃するようなそぶりも何もなかった。
セブルは魔鳥の態勢を崩した攻撃を見たか?」
「はい。何かが高速で飛来して魔鳥にぶつかったのが何とかわかりました。そのあとドンっていう音が」
「そうか・・・あれも今のヤツがやったのかな」
ユウトは考え込む。何かつながりそうな感覚はあったが疲労感が思考を疎外した。
「とにかく一旦もどりましょう。濡れたままでは体調を崩します」
セブルはそう言う体をユウトにまとわりつかせ液体のように変身したのち元のトラのような形態に戻る。ユウトはその背中で固定されいた。そのままセブルは降りてきた時のように垂直な橋脚を足から伸ばした毛で掴みながらするすると登りきる。橋上にたどり着くとディゼルを始め馬に乗った兵士たちが一足早く駆けつけていたようでユウトの周りに集まった。
ディゼルが声をかけてくる
「ケガは・・・なさそうだな。よかった。
まったく君の攻撃は見事だった」
「ディゼルこそ。ぶっつけ本番であの正確な打ち出しに対応してくれたよ」
「まだ確認中だが魔鳥は完全沈黙しただろう。あとは任せてもらって問題ないとクロノワ隊長から指示があった。
僕たちは砦へ戻ろう」
「ああ。わかった」
ユウトの返事を聞いてセブルはすぐに砦へ向かって進みだす。ユウトは少し驚き慌てて背後を振り返りディゼルへ向けて声をあげた。
「先に戻ってる!」
ディゼルは苦笑いしながら片手をあげて返事をした。
そしてセブルは徐々に速度を上げて行く。水に濡れていたユウトには少し肌寒い風だったが昇ったばかりの日の光は温かく心地がよかった。
朝日に照らされた大石橋と河と砦は影を強く伸ばし、とても綺麗だとユウトは感じる。魔鳥へ向かって突撃するときには全くそんなことを考える余裕はなかった。
真っすぐ伸びている大石橋の先から何人もの兵士とすれ違う。馬に乗った者や歩いている者もいたがそのうちの何人かはユウトを見るとにこやかに手をあげて目線をユウトへ向けた。
ユウトはどことなくこそばゆい感覚になりながらも手をあげて返す。
そうして砦へ戻る途中、前方からただならぬ緊迫感をまとった馬が全力疾走で迫る。ユウトが目を凝らして見るとそれはガラルドだった。ガラルドはユウトに目もくれず通り過ぎていく。どこか和やかな空気が漂う橋上においてガラルドの雰囲気は異質だった。
どこか胸をざわつかせる感覚があったが残り少ないであろうセブルの丸薬の効き目や自身の状態も考えユウトはそのまま砦へと向かうことにする。どこかで機会を見つけてガラルドに何があったのかを訪ねようと決めた。
砦に戻ってからユウトの時間はまたたく間に過ぎ去る。
クロノワへの報告では魔鳥を身近に見た所感とユウトを助けた謎の物体についての詳細を語り、そのあとはヨーレンから体に不備がないか検査。そして最もユウトが感動したのは温かい湯を張った風呂につかることができたことだった。
水で濡らした布で体を拭くか水を浴びるかしかできなかったユウトにとってはとても贅沢なあったかい湯につかるという行為に魔鳥戦ですり減った精神が癒される。心も体もさっぱりしたユウトは日も高いうちに本来宿泊する予定だった部屋で早々に眠りについた。
ユウトはソレと一時の間向き合っていたが声が近づいてくるとソレは水面下に沈みその姿は消えてしまった。
ユウトは気が抜けてしまい地面にへたり込んでしまう。強く握りしめられていた両手の力が抜けた。右手に魔剣、左手には赤い石。どちらも着水の衝撃で手放すことはなく少しほっとした。
声はさらに近づきそれが自身を呼ぶ声だとユウトはようやく気づく。その声はディゼルとセブルだった。
座り込んだ場所からユウトは橋を見上げると丁度ディゼルとセブルが橋の上から顔を出す。セブルは間髪入れず橋脚をつたいユウトの元へ飛び降りてきた。
「ケガありませんかユウトさん!魔力の残量はどうですか?」
矢継ぎ早にセブルはユウトに質問しながら座り込んでいるユウトの体に顔を近づけ確認する。
「大丈夫だよセブル。かなり危なかったけどなんとかなった。河に落ちた時は全然体が浮かび上がんなくて結構焦ったけど」
一通りユウトの体を見回し終え、セブルは一安心とユウトの目の前に座る。
「ユウトさんを浮かび上がらせたアレはなんだったんでしょう」
「わからない。まったく異質だった。戦った魔鳥とも何か違うしオレを攻撃するようなそぶりも何もなかった。
セブルは魔鳥の態勢を崩した攻撃を見たか?」
「はい。何かが高速で飛来して魔鳥にぶつかったのが何とかわかりました。そのあとドンっていう音が」
「そうか・・・あれも今のヤツがやったのかな」
ユウトは考え込む。何かつながりそうな感覚はあったが疲労感が思考を疎外した。
「とにかく一旦もどりましょう。濡れたままでは体調を崩します」
セブルはそう言う体をユウトにまとわりつかせ液体のように変身したのち元のトラのような形態に戻る。ユウトはその背中で固定されいた。そのままセブルは降りてきた時のように垂直な橋脚を足から伸ばした毛で掴みながらするすると登りきる。橋上にたどり着くとディゼルを始め馬に乗った兵士たちが一足早く駆けつけていたようでユウトの周りに集まった。
ディゼルが声をかけてくる
「ケガは・・・なさそうだな。よかった。
まったく君の攻撃は見事だった」
「ディゼルこそ。ぶっつけ本番であの正確な打ち出しに対応してくれたよ」
「まだ確認中だが魔鳥は完全沈黙しただろう。あとは任せてもらって問題ないとクロノワ隊長から指示があった。
僕たちは砦へ戻ろう」
「ああ。わかった」
ユウトの返事を聞いてセブルはすぐに砦へ向かって進みだす。ユウトは少し驚き慌てて背後を振り返りディゼルへ向けて声をあげた。
「先に戻ってる!」
ディゼルは苦笑いしながら片手をあげて返事をした。
そしてセブルは徐々に速度を上げて行く。水に濡れていたユウトには少し肌寒い風だったが昇ったばかりの日の光は温かく心地がよかった。
朝日に照らされた大石橋と河と砦は影を強く伸ばし、とても綺麗だとユウトは感じる。魔鳥へ向かって突撃するときには全くそんなことを考える余裕はなかった。
真っすぐ伸びている大石橋の先から何人もの兵士とすれ違う。馬に乗った者や歩いている者もいたがそのうちの何人かはユウトを見るとにこやかに手をあげて目線をユウトへ向けた。
ユウトはどことなくこそばゆい感覚になりながらも手をあげて返す。
そうして砦へ戻る途中、前方からただならぬ緊迫感をまとった馬が全力疾走で迫る。ユウトが目を凝らして見るとそれはガラルドだった。ガラルドはユウトに目もくれず通り過ぎていく。どこか和やかな空気が漂う橋上においてガラルドの雰囲気は異質だった。
どこか胸をざわつかせる感覚があったが残り少ないであろうセブルの丸薬の効き目や自身の状態も考えユウトはそのまま砦へと向かうことにする。どこかで機会を見つけてガラルドに何があったのかを訪ねようと決めた。
砦に戻ってからユウトの時間はまたたく間に過ぎ去る。
クロノワへの報告では魔鳥を身近に見た所感とユウトを助けた謎の物体についての詳細を語り、そのあとはヨーレンから体に不備がないか検査。そして最もユウトが感動したのは温かい湯を張った風呂につかることができたことだった。
水で濡らした布で体を拭くか水を浴びるかしかできなかったユウトにとってはとても贅沢なあったかい湯につかるという行為に魔鳥戦ですり減った精神が癒される。心も体もさっぱりしたユウトは日も高いうちに本来宿泊する予定だった部屋で早々に眠りについた。
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