ゴブリンロード

水鳥天

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開始

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「ユウト。無事カ?」

 ユウトの脳内にヴァルの声が響く。

「ああ、大丈夫。まだ戦える。大魔獣の核を見つけた」
「空ダナ。今ノ攻撃ヲ仕掛ケタ位置カ。シカシ我ノ探知能力デハ認識デキナカッタ」
「ヴァルでも見つけられない?セブル、ラトムは今の攻撃の主は見えた?」

 ユウトは声に出してセブルとラトムに尋ねたが、どちらもわからないと返答を受けた。

 周囲に気を配りながらユウトは考えを巡らす。自身も確かに見た、というより大まかな場所を感じた、と言った方が正しいことに気づいた。おそらくこの戦場において核の位置を大まかにでも把握し、それを破壊しうる威力のある攻撃ができるのはユウト自身しか考えられない。ラトムでは発見から破壊までまかせるには時間がかかりすぎるだろうと予想した。

 ユウトは自身の出来ること、仲間たちが出来ることを想像する。それを駒としてどう組み合させれば破壊できるのか試行錯誤した。限りなく犠牲を減らしたい願望と、犠牲を伴わなければ達成の難しい条件の間で回答を模索する。その思考の時間さへ有限であり、早急な答えを求められていることも自覚していた。

「よし、覚悟は決まった」

 そう言ってユウトは空を見上げる。青空と流れる雲しか見えない空が光った。大魔獣の核が放ったであろう光の線が落ちてくる。それはユウトの方ではなく四姉妹と前線部隊のいる方向だった。

 落下する高速の一撃は巨石が受け止め、拡散して消える。それまで黒柱を受け止めるため地上付近を浮遊していた巨石は今、高度を上げていた。

「ヴァル。ヨーレンはどれくらい持ちこたえられそうだと言ってる?」

 声に出しながら自身の思考の中でヴァルに語り掛ける。間をおいてユウトの脳内にヴァルの視覚と聴覚を感じ取った。

「しばらくはもつと思う。けど有余はない。確実に削られてる」

 ユウトは焦りを隠さないヨーレンが杖を掲げて話すのを見て聞き取る。

「わかった。それじゃあヴァル。今からオレの考えた作戦を伝える。時間がないけどその場にいるみんなに伝えて確認を取ってくれ」

 ユウトはヴァルに自身の発案した作戦内容を伝える。それはヴァルを通してヴァルの周りにいる護衛隊に伝えられた。その確認を取る間にも大魔獣の攻撃が止むことはない。大魔獣の核による一方的な攻撃は続き、勢いは落ちたものの黒柱の動きもいまだ健在だった。

 返答を待つ間にもユウトは降り注ぐ光線を避け、伸びる黒柱を切り落としていく。

「確認ヲ取ッタゾ」
「どうだった?」
「全員、了承シタ」

 駆け続けるユウトの脳内にヴァルの声と視界が送られてきた。

 その光景は全員の返答。それぞれ頷き、了承してくれる声だった。ユウトは気持ちが昂るのを感じる。胸の中心が熱くなり、鼓動が増した。

「やろう。作戦開始!」

 ユウトの掛け声にヴァルが真っ先に動き始める。ヴァル本体を留めている爪が外れ、ぽんとヴァルの卵型した本体が鉄の身体から跳ねると、野太い両手で挟み掴まれるた。そして片手に乗せられヴァルの身体は身を捻らせ、本体をユウトのいる星の大釜の底に向けて投げた。

 ヴァルはある程度滞空したのち地に落ちたが、勢いそのままに大釜の底に向けて正に転げ落ちていく。そして態勢を整え、身を起こすと浮き上がり、前傾姿勢で移動した。残された身体の方は牛のような形に戻り、身を盾にしながら黒柱の相手を行い始めている。ヴァルはユウトの近くまで来ると移動をやめ、高速で回転を行い整地を行い始めた。

「ヴァル、どれくらいかかる?」
「マダカカル。今、全体工程ノ三分ノ一ト言ッタトコロダナ」
「場所はわかるけど距離まではわからない。徹底的に力を溜めてくれ。全力で頼む」
「了解。我ノ本気ヲ披露スルトシヨウ」

 ヴァルの声を聞きながらユウトは太い黒柱をまた一本断つ。ユウトの早くなる呼吸から吐き出される息が白く色づいていた。

「ユウトさん。周りの様子が・・・大魔剣は大丈夫でしょうか」

 セブルの声に気付いてユウトはあたりを見回す。そこには霜で白く染まった草が緑を取り戻していくところだった。次にユウトは大魔剣を見る。そこにはまだ白い霜がかかり、その柄を握る手甲から籠手にまで及んでいた。

「まずいな・・・過剰に機関が働きすぎてる。制御盤に負荷がかかりすぎたか・・・さっきの攻撃の熱にやられたのか」
「最後に取っておくために使用は控えた方がいいかもしれないっス」
「そうなると、護衛部隊の圧力が増すけど・・・堪えてもらうしかないのか」

 そう言いながらユウトは苦々しく口元をゆがめる。そして大魔剣を左手で逆手に持ち右手で光魔剣を取り出した。

「何とか光魔剣だけで対応するしかないな」

 そう言って駆けだすと黒柱に連撃を浴びせて焼き切る。大魔剣と比べて手間がかかり対処できる太さにも限界を感じていた。しかしそれでもユウトは時間を稼ぐため駆ける。ヴァルの周りから離れすぎないよう気を付けつつ、ときどき降り注ぐ光線を避け、ユウトは休むことなく動き続けた。
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