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捜索
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うねり、鞭うつような太い黒柱であってもヨーレンの操る巨石であれば質量の暴力でねじ伏せる。潰し、跳ねのけながら黒柱の行く手を阻んだ。
遠く移動を繰り返す巨石を物見矢倉の面々は眺める。矢倉の上から見下ろす大釜の中は混とんとしていた。中心から伸びるいくつもの黒柱は釜の底で暴れまわっている。遠く伸びるものもそのほとんどは大釜中腹の前線部隊に向かっていた。
しかしその他の場所にも黒柱は確かに伸びている。そう言ったものは調査騎士団、ゴブリン殲滅ギルトが処理を行い大釜の外へと黒柱があふれるのを防いでいた。
その内、打ち漏らした細い黒柱が物見矢倉の足元、即席の木製城壁に激突する。その衝撃は物見矢倉全体をかすかに揺らして軋ませた。どよめく声が上がる。ドゥーセンの後ろに控えていた侍女の老婆がドゥーセンに話しかけた。それを横目に見たマレイは反応する。
「ドゥーセン中央政務官。あなたにはここで最後まで見届けてもらいますよ。今ここで、逃げだすことは許されません。この決戦の顛末を見届けずして何のためにこんなことろにまでやってきたのですか?」
マレイはそう言いながら冷ややかにドゥーセンを横目で見つめた。
その目線を受け止めるドゥーセンはマレイを見つめ返ししばらく黙ってから言葉を返す。
「いいでしょう。私も覚悟を決めました。ここで止められなければ先は見えています。最後まで見届けましょう」
そしてドゥーセンは大釜の底を見つめた。
駆け跳び続けていたユウトは一旦その足を止める。それまでもうもうと打ちあがっていた煙が風に流され、大魔獣の様子が見えそうになっていた。
ユウトに向かって打ち込まれていた黒柱の勢いは弱まり見せている。その分ユウトの周囲には黒毛と草原の緑のまだら模様が形成されていた。
「ラトム、どう?大魔獣の核の場所はわかるか?」
「あれっ?えっと、えっとぉ・・・」
ラトムはユウトの返答に困り口ごもる。
「ちょっとラトム!しっかりしてよっ!」
セブルもしびれをきらすように問い詰めた。
「おかしいっス。どれも一緒で・・・一種類しかないっス。たぶん感じからしてそれはクロネコテンの核っス」
絞り出すようにしてラトムは答える。
「つまり大魔獣の核が、無い?」
「その通りっス!こんな超大型の魔物ならそれだけ大きな核を持ってるはずっス。でも見当たらないっス」
ラトムはユウトの頭上から跳びあがってバタバタと慌てるように翼を羽ばたかせる。
「どういうことなんだ・・・?」
ユウトは立ち尽くして煙の先にいるはずの大魔獣を見つめた。
そこへ強い一陣の風が吹き、煙が一斉に晴れる。そしてそこで見た光景にユウトはたじろぐ。
「なっ、なんだ?何をしている?」
ユウトが見たのは黒々とした大魔獣の本体が大釜の底の大地に木の根を下ろすように黒い身体を食い込ませている光景だった。
大魔獣の身体は脈打ち、何かを取り込んでいるように見える。そこから枝のように黒柱をはやしていた。それは一種の植物のようにも見える。しかし確かにそれは元は大魔獣であったとわかる部位があった。崩れ落ちそうな大あごが空に向けて開け放たれている。ユウトは何か引っかかる感覚があった。
「なんだ?何かが・・・」
ユウトにはどこか見覚えのある感覚。見当たらない核、根を張り脈打つ大魔獣の身体、大きく開けた口、その口から何かが昇っていった気がした。それは未だ立ち上がる煙ではないかと感がる。しかしユウトの感じ取った感覚は見るというより感じたものだった。見えるはずのないもの。
「まさか・・・」
ユウトの顎は上がり身体を逸らせ視線は直上を向いた。兜の溝の間から目を凝らし、絞り切った瞳孔で何かを探す。そして晴天の青空に不自然な点を見つけた。
「ラトム、空をっ」
そうユウトが口走る途中、空に白い閃光が走る。次の瞬間ユウトが見たのは目の前を覆う黒い何かと全身を襲う熱とセブルの声だった。
「跳んでッ!」
ユウトは無我夢中で横に跳ぶ。着地もままならず草の上を転がりうつぶせで止まった。
鼻をつく毛の焦げた匂い。ユウトにはそれが自身を覆ったセブルの物だとすぐに気づいた。視界は開け、セブルは元居たユウトの首周りに収まる。
「ユウトさん、大丈夫でしたか?」
「オレは大丈夫だ。それよりセブルはどうなんだ?ラトムも」
ユウトは不意打ちをもらった焦りを隠せず早口にセブルとラトムに尋ねた。
「ボクは・・・まだまだ平気です。ちょっと毛が燃えた程度です」
「オ、オイラは熱には強いのでぜんぜん大丈夫っス!」
ユウトはひとまず胸を撫でおろしすぐに立ち上がり周囲と自身を確認する。幸いなことに大魔剣は握ったままで、見る限りの損傷は無かった。自身の身体にも欠損はないものの全身に焼け焦げたような跡が見て取れる。そしてそれまで自身が立っていた場所を見た。
そこは円形にくぼみ燃えた草や大魔獣の毛が焼け焦げている。ユウトは肌に感じるものがあり、咄嗟に跳んだ。立っていた場所に光の柱が立つ。それは大石橋で戦った魔鳥の攻撃に似ていた。
遠く移動を繰り返す巨石を物見矢倉の面々は眺める。矢倉の上から見下ろす大釜の中は混とんとしていた。中心から伸びるいくつもの黒柱は釜の底で暴れまわっている。遠く伸びるものもそのほとんどは大釜中腹の前線部隊に向かっていた。
しかしその他の場所にも黒柱は確かに伸びている。そう言ったものは調査騎士団、ゴブリン殲滅ギルトが処理を行い大釜の外へと黒柱があふれるのを防いでいた。
その内、打ち漏らした細い黒柱が物見矢倉の足元、即席の木製城壁に激突する。その衝撃は物見矢倉全体をかすかに揺らして軋ませた。どよめく声が上がる。ドゥーセンの後ろに控えていた侍女の老婆がドゥーセンに話しかけた。それを横目に見たマレイは反応する。
「ドゥーセン中央政務官。あなたにはここで最後まで見届けてもらいますよ。今ここで、逃げだすことは許されません。この決戦の顛末を見届けずして何のためにこんなことろにまでやってきたのですか?」
マレイはそう言いながら冷ややかにドゥーセンを横目で見つめた。
その目線を受け止めるドゥーセンはマレイを見つめ返ししばらく黙ってから言葉を返す。
「いいでしょう。私も覚悟を決めました。ここで止められなければ先は見えています。最後まで見届けましょう」
そしてドゥーセンは大釜の底を見つめた。
駆け跳び続けていたユウトは一旦その足を止める。それまでもうもうと打ちあがっていた煙が風に流され、大魔獣の様子が見えそうになっていた。
ユウトに向かって打ち込まれていた黒柱の勢いは弱まり見せている。その分ユウトの周囲には黒毛と草原の緑のまだら模様が形成されていた。
「ラトム、どう?大魔獣の核の場所はわかるか?」
「あれっ?えっと、えっとぉ・・・」
ラトムはユウトの返答に困り口ごもる。
「ちょっとラトム!しっかりしてよっ!」
セブルもしびれをきらすように問い詰めた。
「おかしいっス。どれも一緒で・・・一種類しかないっス。たぶん感じからしてそれはクロネコテンの核っス」
絞り出すようにしてラトムは答える。
「つまり大魔獣の核が、無い?」
「その通りっス!こんな超大型の魔物ならそれだけ大きな核を持ってるはずっス。でも見当たらないっス」
ラトムはユウトの頭上から跳びあがってバタバタと慌てるように翼を羽ばたかせる。
「どういうことなんだ・・・?」
ユウトは立ち尽くして煙の先にいるはずの大魔獣を見つめた。
そこへ強い一陣の風が吹き、煙が一斉に晴れる。そしてそこで見た光景にユウトはたじろぐ。
「なっ、なんだ?何をしている?」
ユウトが見たのは黒々とした大魔獣の本体が大釜の底の大地に木の根を下ろすように黒い身体を食い込ませている光景だった。
大魔獣の身体は脈打ち、何かを取り込んでいるように見える。そこから枝のように黒柱をはやしていた。それは一種の植物のようにも見える。しかし確かにそれは元は大魔獣であったとわかる部位があった。崩れ落ちそうな大あごが空に向けて開け放たれている。ユウトは何か引っかかる感覚があった。
「なんだ?何かが・・・」
ユウトにはどこか見覚えのある感覚。見当たらない核、根を張り脈打つ大魔獣の身体、大きく開けた口、その口から何かが昇っていった気がした。それは未だ立ち上がる煙ではないかと感がる。しかしユウトの感じ取った感覚は見るというより感じたものだった。見えるはずのないもの。
「まさか・・・」
ユウトの顎は上がり身体を逸らせ視線は直上を向いた。兜の溝の間から目を凝らし、絞り切った瞳孔で何かを探す。そして晴天の青空に不自然な点を見つけた。
「ラトム、空をっ」
そうユウトが口走る途中、空に白い閃光が走る。次の瞬間ユウトが見たのは目の前を覆う黒い何かと全身を襲う熱とセブルの声だった。
「跳んでッ!」
ユウトは無我夢中で横に跳ぶ。着地もままならず草の上を転がりうつぶせで止まった。
鼻をつく毛の焦げた匂い。ユウトにはそれが自身を覆ったセブルの物だとすぐに気づいた。視界は開け、セブルは元居たユウトの首周りに収まる。
「ユウトさん、大丈夫でしたか?」
「オレは大丈夫だ。それよりセブルはどうなんだ?ラトムも」
ユウトは不意打ちをもらった焦りを隠せず早口にセブルとラトムに尋ねた。
「ボクは・・・まだまだ平気です。ちょっと毛が燃えた程度です」
「オ、オイラは熱には強いのでぜんぜん大丈夫っス!」
ユウトはひとまず胸を撫でおろしすぐに立ち上がり周囲と自身を確認する。幸いなことに大魔剣は握ったままで、見る限りの損傷は無かった。自身の身体にも欠損はないものの全身に焼け焦げたような跡が見て取れる。そしてそれまで自身が立っていた場所を見た。
そこは円形にくぼみ燃えた草や大魔獣の毛が焼け焦げている。ユウトは肌に感じるものがあり、咄嗟に跳んだ。立っていた場所に光の柱が立つ。それは大石橋で戦った魔鳥の攻撃に似ていた。
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