190 / 213
頂点
しおりを挟む
大魔剣は自身すら飲み込んで、限界まで魔力を圧縮させ続ける。そして光の柱を最後の一押しとして限界を超え、その機能は失われた。それと同時に圧縮魔力の枷は外れる。ため込まれた膨大な魔力は反転して膨張し、光と熱と衝撃波となって全方向へと放出された。
星の大釜に残された人々は天空を仰いでいる。地位も種族も老若男女を問わずその視線はユウト達の軌跡の先へと向けられていた。
そして刹那、すべてが白く覆われる。広がる青空に稲妻が閃いた。
人々にどよめきが起こる。すると間を置き、地を震わす重たい轟音が降り注いだ。
その強烈な音におののくようにしてハイゴブリンの四姉妹はレナにしがみ付く。レナはそんな四姉妹にそっと手を添えながら横たわる草原から視線を外さず空の変化をとらえようとしていた。
「ユウト・・・」
レナがぽつりと名を呼ぶ。そばでリナがはっとして何かに気づいた。
「大魔獣が、崩れていく」
そのリナの声に気づいてレナは視線を落とすと星の大釜の底を見る。そこにはレナ達の魔槍によって吹き飛ばされながらも脈打ち、形作っていた黒いモノが溶けるように地を流れ始めていた。
「じゃあ、ユウトはやったの?」
レナは緊張をにじませながらリナへと尋ねる。
「ええ・・・おそらく。確証はないけれど」
煮え切らない表情でリナはまた空を見上げた。
それにつられるようにしてレナもまた、視線を上げる。いまだ変化を見せない遠い青空を凝視した。
ユウトは瞳をゆっくりと開く。ぼやけた意識の中で自身の状態を意識した。
風が切るような音を聞き、軋む全身の筋肉を感じてようやく呼吸を思い出す。ハッと息を吐いて薄い空気を吸い込んだ。自身の身体は仰向けに自由落下を始めている。はっきりとした視界が捉えたのは濃紺の空に広がる染みだった。それは遠く四散して広がる大魔獣の核であるとユウトは気づく。達成感と安堵感が全身を駆け巡った。
しかしそれは余韻を残さず一瞬でかき消える。ユウトの思考は後先考えなかった現状の打破へと向けられていた。
ユウトは仰向けの体制からぐるりと半回転して着実に迫りくる地上へと相対する。その時ようやくどれほどの距離を昇って来たのかを認識することになった。霞んだ緑の大地に雲のまだら模様が浮かぶ。まったく見慣れない光景にユウトの内心に焦りが広がった。
「セブル、ラトム、ヴァル!大丈夫か?聞こえるか?」
ユウトはどうにか口を開いて声を発する。
「はぃ・・・なんとか」
まず、セブルの声が聞こえた。
その声は弱弱しい。ユウトの全身を覆っていたはずのセブルの身体は小さくなってユウトの首元にいた。
「オイラも大丈夫っス。でも持ってる魔力はかなり少なくなってしまったっス」
次にラトムの声が聞こえて来る。するとユウトの目の前に飛翔するラトムが姿をあらわした。そしてすぐに視界の外に消えたかと思うとユウトの落下速度は弱まる。それはラトムがユウトの腰の帯をつかみ翼を広げたことで抵抗を増したためだった。
「我モイルゾ」
ユウトの脳内に声が響くと徐々に近づく物体があることにユウトは気づく。それがヴァルであることをユウトはすぐに気づいた。ヴァルはユウトの真下で落下速度を調節し、ある程度の距離を保っている。ユウトは全員の声を聞いて、いっぱいいっぱいだった気持ちに少し余裕を感じることができた。
「・・・よしっ。ヴァル、大魔獣の核はどうなった?」
「我ノ観測ト、地上ノ外部装置ノ情報カラ、破壊シタモノト判断スル」
「わかった」
ヴァルの報告からユウトは大魔獣のことを思考の隅に追いやり、気持ちを切り替える。
「オレ達にはまだやることが残ってる。まずは無事に星の大釜に降り立つことだ。みんな手は少ないと思うけど力を貸してくれ。ヴァル、星の大釜の場所はわかるか?」
「問題ナイ。我ガコレヨリ誘導スル。我ノ直上ヲ維持セヨ」
「ラトム、調整を頼んだ。それと着地の時に落下速度を和らげてほしい。できる分でかまわないから」
「了解っス。がんばるっス!」
立て続けにユウトは指示を出した。
「セブル」
「は、はいっ」
一拍の間をおいてユウトはセブルに声をかける。
「セブルにはまだ大仕事が残ってる。だから今は休んでいてくれ」
「・・・はい」
セブルは疲労と緊張の中にさみしさをにじませた声で返事を返した。
「セブル、ありがとな。先に、言っておきたい」
ユウトはセブルへ静かに言葉を続ける。
「えっ?」
「大魔獣の核に対する最後の一撃。あれほどの威力とは思わなかった。きっとオレもだめだったはずだ。それがこうして無事でいられるのは、セブルが守ってくれたからだろ?」
ユウトはちらりと自身の腕を見た。
その装甲はただれている。しかし手袋などは少し焦げ跡が残る程度だった。
「いつも心配してくれて、オレの無茶に付き合ってくれてありがとう。次はセブルの望みを叶える番なんだ。今は見守っていてくれ」
ユウトの首元にいる小さくなったセブルは身体を震わせる。
「はいっ・・・もちろんです」
セブルは答えてユウトの首元を柔らかく伸ばした毛で覆った。
星の大釜に残された人々は天空を仰いでいる。地位も種族も老若男女を問わずその視線はユウト達の軌跡の先へと向けられていた。
そして刹那、すべてが白く覆われる。広がる青空に稲妻が閃いた。
人々にどよめきが起こる。すると間を置き、地を震わす重たい轟音が降り注いだ。
その強烈な音におののくようにしてハイゴブリンの四姉妹はレナにしがみ付く。レナはそんな四姉妹にそっと手を添えながら横たわる草原から視線を外さず空の変化をとらえようとしていた。
「ユウト・・・」
レナがぽつりと名を呼ぶ。そばでリナがはっとして何かに気づいた。
「大魔獣が、崩れていく」
そのリナの声に気づいてレナは視線を落とすと星の大釜の底を見る。そこにはレナ達の魔槍によって吹き飛ばされながらも脈打ち、形作っていた黒いモノが溶けるように地を流れ始めていた。
「じゃあ、ユウトはやったの?」
レナは緊張をにじませながらリナへと尋ねる。
「ええ・・・おそらく。確証はないけれど」
煮え切らない表情でリナはまた空を見上げた。
それにつられるようにしてレナもまた、視線を上げる。いまだ変化を見せない遠い青空を凝視した。
ユウトは瞳をゆっくりと開く。ぼやけた意識の中で自身の状態を意識した。
風が切るような音を聞き、軋む全身の筋肉を感じてようやく呼吸を思い出す。ハッと息を吐いて薄い空気を吸い込んだ。自身の身体は仰向けに自由落下を始めている。はっきりとした視界が捉えたのは濃紺の空に広がる染みだった。それは遠く四散して広がる大魔獣の核であるとユウトは気づく。達成感と安堵感が全身を駆け巡った。
しかしそれは余韻を残さず一瞬でかき消える。ユウトの思考は後先考えなかった現状の打破へと向けられていた。
ユウトは仰向けの体制からぐるりと半回転して着実に迫りくる地上へと相対する。その時ようやくどれほどの距離を昇って来たのかを認識することになった。霞んだ緑の大地に雲のまだら模様が浮かぶ。まったく見慣れない光景にユウトの内心に焦りが広がった。
「セブル、ラトム、ヴァル!大丈夫か?聞こえるか?」
ユウトはどうにか口を開いて声を発する。
「はぃ・・・なんとか」
まず、セブルの声が聞こえた。
その声は弱弱しい。ユウトの全身を覆っていたはずのセブルの身体は小さくなってユウトの首元にいた。
「オイラも大丈夫っス。でも持ってる魔力はかなり少なくなってしまったっス」
次にラトムの声が聞こえて来る。するとユウトの目の前に飛翔するラトムが姿をあらわした。そしてすぐに視界の外に消えたかと思うとユウトの落下速度は弱まる。それはラトムがユウトの腰の帯をつかみ翼を広げたことで抵抗を増したためだった。
「我モイルゾ」
ユウトの脳内に声が響くと徐々に近づく物体があることにユウトは気づく。それがヴァルであることをユウトはすぐに気づいた。ヴァルはユウトの真下で落下速度を調節し、ある程度の距離を保っている。ユウトは全員の声を聞いて、いっぱいいっぱいだった気持ちに少し余裕を感じることができた。
「・・・よしっ。ヴァル、大魔獣の核はどうなった?」
「我ノ観測ト、地上ノ外部装置ノ情報カラ、破壊シタモノト判断スル」
「わかった」
ヴァルの報告からユウトは大魔獣のことを思考の隅に追いやり、気持ちを切り替える。
「オレ達にはまだやることが残ってる。まずは無事に星の大釜に降り立つことだ。みんな手は少ないと思うけど力を貸してくれ。ヴァル、星の大釜の場所はわかるか?」
「問題ナイ。我ガコレヨリ誘導スル。我ノ直上ヲ維持セヨ」
「ラトム、調整を頼んだ。それと着地の時に落下速度を和らげてほしい。できる分でかまわないから」
「了解っス。がんばるっス!」
立て続けにユウトは指示を出した。
「セブル」
「は、はいっ」
一拍の間をおいてユウトはセブルに声をかける。
「セブルにはまだ大仕事が残ってる。だから今は休んでいてくれ」
「・・・はい」
セブルは疲労と緊張の中にさみしさをにじませた声で返事を返した。
「セブル、ありがとな。先に、言っておきたい」
ユウトはセブルへ静かに言葉を続ける。
「えっ?」
「大魔獣の核に対する最後の一撃。あれほどの威力とは思わなかった。きっとオレもだめだったはずだ。それがこうして無事でいられるのは、セブルが守ってくれたからだろ?」
ユウトはちらりと自身の腕を見た。
その装甲はただれている。しかし手袋などは少し焦げ跡が残る程度だった。
「いつも心配してくれて、オレの無茶に付き合ってくれてありがとう。次はセブルの望みを叶える番なんだ。今は見守っていてくれ」
ユウトの首元にいる小さくなったセブルは身体を震わせる。
「はいっ・・・もちろんです」
セブルは答えてユウトの首元を柔らかく伸ばした毛で覆った。
0
あなたにおすすめの小説
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
才能に打ち砕かれた日から、僕の最強は始まった
雷覇
ファンタジー
ワノクニ、蒼神流・蒼月道場。
天城蒼真は幼き頃から剣を学び、努力を重ねてきた。
だがある日、異世界から来た「勇者」瀬名隼人との出会いが、すべてを変える。
鍛錬も経験もない隼人は、生まれながらの天才。
一目見ただけで蒼真と幼馴染の朱音の剣筋を見切り、打ち破った。
朱音は琴音の命で、隼人の旅に同行することを決意する。
悔しさを抱えた蒼真は、道場を後にする。
目指すは“修羅の山”――魔族が封印され、誰も生きて戻らぬ死地へと旅立つ。
知識スキルで異世界らいふ
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ
『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』
KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。
日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。
アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。
「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。
貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。
集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。
そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。
これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。
今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう?
※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは
似て非なる物として見て下さい
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる