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何となく夜も更新。
――横抱きにされ、会場の人々の冷やかしの視線を浴びながら、ジェラルドとガランは自分たちの小さな家に戻ってきた。
リビングは出ていったままに散らかっている。そこに鎮座しているソファに座らされた。
結婚前からあるこのソファは生地を張替えしたが、ずっとこの家にあった。ジェラルドとガランの始まりを見守り、子どもたちの成長を見守ってきた。
「ガラン…」
家に戻っても拳を握り込み、俯いたままのガランの隣にジェラルドは座った。
「どこから話せばいいか」
まずは自分の出生のことだろうか。皇帝陛下の末の息子としてうまれ、8歳に狩人登録し、旅をし始めたこと。それから、ガランと出会うまでの、魔獣たちの話…。
「……俺なんてすぐ騙せるとでも思っていたのでしょう?」
ぽつりとつぶやかれた声にジェラルドは目を見張る。
「俺なんて、大人で高貴なあなたから見れば、騙せると思ってたんでしょう?」
顔を上げたガランのアイスブルーの瞳は潤んでいた。
「な、何を言ってるんだ、ガラン!」
「だって、俺、あなたの事何も知らなかったんですよ?こんなに長い間一緒にいたのに。幸せだったのに…あなたがどこに誰かなんて、気にしたこともなかった…」
この10年、ガランは幸せだった。不思議なグミによって妊娠させられ結婚した経緯はあるが、ジェラルドの愛に包まれて、子どもたちに恵まれて、ガランは幸せだった。
「俺にとっては、あなたが全部ハジメテだったから、自分の事ばっかりであなたの事なんて、何も知ろうとしなかった」
ジェラルドには与えられてばかりだった。与えられることが当然だと思い、ジェラルドを知ろうとしなかったのではないか…ガランは自分が情けなくなった。
再び俯いたガランの手をジェラルドの大きな掌が包んだ。
「ガラン、俺の話を聞いてくれるか?」
紫紺の瞳がガランを真摯に見下ろしていた。
「ガランも知っているだろうが、俺はずっとSSS級の狩人として世界中を旅していた。ひとりでどんな危険な場所でも赴いていた。
――幸いにも、俺は強かった。魔獣を倒せば倒すだけ自分が強くなっていくのを感じたし、『銀のジェラルド』と呼ばれ、どんどん高慢になっていった。俺がどんな振る舞いをしようと誰もとめることができなかった。俺は一時期、次期皇帝と目されていたからな。世界は自分のためにあると思ってたんだ。その結果、サラマンダー事変を起こした」
「でも、あの時はもうあなたは懺悔していて…」
「ああ。あの夜、塔の上でお前に心情を吐露したことで、俺は生まれ変わることができた」
「そんな、大したことは…」
あの夜、ガランが出くわしたのは、ひとりの傷ついた狩人だった。自分した行いをしっかりと受け止め、責任を感じていた。
「言っただろう、ガラン。あの時の俺は『責めるでもなく、慰めるように、ただ寄り添ってくれた』。それだけでよかったんだ。ガランはいつでもこんな俺を受け止めてくれた。12歳も年上なのに、一方的な恋をして追いかけきた俺に、チャンスを与えてくれた」
そっと肩を抱き寄せ、ジェラルドはガランの額に唇をつける。
「皇帝の弟だと知られたくなかったのは、単純に俺のエゴだ。俺の身分が知られてしまうと、ガランに違う世界の人間だと思われてしまう。喩え子どもたちがいても、心の隙間ができてしまう…そう思い込んで、10年が経ってしまった…。
――お前とこの村で再開でき、俺は幸せだった。喩え俺のエゴで始まった関係だとしても…。そんな俺はもう、お前の側にいてはいけないか?」
「そんなわけないでしょう!あんたは子どもたちの父親だし、俺の夫だし!」
ガランは腕を伸ばして、ジェラルドの首に縋り付いた。
「俺が愛するのはジェラルドだけです。あなたがどこの誰であるかなんて構わない…」
それが答えだ。ジェラルドが何者であるかなど、ガランにとってはどうでもいい。
――ただ傍にいて、愛し愛される…。それだけが、ふたりにとって大切なことだった。
――横抱きにされ、会場の人々の冷やかしの視線を浴びながら、ジェラルドとガランは自分たちの小さな家に戻ってきた。
リビングは出ていったままに散らかっている。そこに鎮座しているソファに座らされた。
結婚前からあるこのソファは生地を張替えしたが、ずっとこの家にあった。ジェラルドとガランの始まりを見守り、子どもたちの成長を見守ってきた。
「ガラン…」
家に戻っても拳を握り込み、俯いたままのガランの隣にジェラルドは座った。
「どこから話せばいいか」
まずは自分の出生のことだろうか。皇帝陛下の末の息子としてうまれ、8歳に狩人登録し、旅をし始めたこと。それから、ガランと出会うまでの、魔獣たちの話…。
「……俺なんてすぐ騙せるとでも思っていたのでしょう?」
ぽつりとつぶやかれた声にジェラルドは目を見張る。
「俺なんて、大人で高貴なあなたから見れば、騙せると思ってたんでしょう?」
顔を上げたガランのアイスブルーの瞳は潤んでいた。
「な、何を言ってるんだ、ガラン!」
「だって、俺、あなたの事何も知らなかったんですよ?こんなに長い間一緒にいたのに。幸せだったのに…あなたがどこに誰かなんて、気にしたこともなかった…」
この10年、ガランは幸せだった。不思議なグミによって妊娠させられ結婚した経緯はあるが、ジェラルドの愛に包まれて、子どもたちに恵まれて、ガランは幸せだった。
「俺にとっては、あなたが全部ハジメテだったから、自分の事ばっかりであなたの事なんて、何も知ろうとしなかった」
ジェラルドには与えられてばかりだった。与えられることが当然だと思い、ジェラルドを知ろうとしなかったのではないか…ガランは自分が情けなくなった。
再び俯いたガランの手をジェラルドの大きな掌が包んだ。
「ガラン、俺の話を聞いてくれるか?」
紫紺の瞳がガランを真摯に見下ろしていた。
「ガランも知っているだろうが、俺はずっとSSS級の狩人として世界中を旅していた。ひとりでどんな危険な場所でも赴いていた。
――幸いにも、俺は強かった。魔獣を倒せば倒すだけ自分が強くなっていくのを感じたし、『銀のジェラルド』と呼ばれ、どんどん高慢になっていった。俺がどんな振る舞いをしようと誰もとめることができなかった。俺は一時期、次期皇帝と目されていたからな。世界は自分のためにあると思ってたんだ。その結果、サラマンダー事変を起こした」
「でも、あの時はもうあなたは懺悔していて…」
「ああ。あの夜、塔の上でお前に心情を吐露したことで、俺は生まれ変わることができた」
「そんな、大したことは…」
あの夜、ガランが出くわしたのは、ひとりの傷ついた狩人だった。自分した行いをしっかりと受け止め、責任を感じていた。
「言っただろう、ガラン。あの時の俺は『責めるでもなく、慰めるように、ただ寄り添ってくれた』。それだけでよかったんだ。ガランはいつでもこんな俺を受け止めてくれた。12歳も年上なのに、一方的な恋をして追いかけきた俺に、チャンスを与えてくれた」
そっと肩を抱き寄せ、ジェラルドはガランの額に唇をつける。
「皇帝の弟だと知られたくなかったのは、単純に俺のエゴだ。俺の身分が知られてしまうと、ガランに違う世界の人間だと思われてしまう。喩え子どもたちがいても、心の隙間ができてしまう…そう思い込んで、10年が経ってしまった…。
――お前とこの村で再開でき、俺は幸せだった。喩え俺のエゴで始まった関係だとしても…。そんな俺はもう、お前の側にいてはいけないか?」
「そんなわけないでしょう!あんたは子どもたちの父親だし、俺の夫だし!」
ガランは腕を伸ばして、ジェラルドの首に縋り付いた。
「俺が愛するのはジェラルドだけです。あなたがどこの誰であるかなんて構わない…」
それが答えだ。ジェラルドが何者であるかなど、ガランにとってはどうでもいい。
――ただ傍にいて、愛し愛される…。それだけが、ふたりにとって大切なことだった。
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