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case2:螺旋工場の恋。アイツに処女を奪われる前に、脱DTしようとしただけなのに!
大団円?
しおりを挟む「いててて…」
――工場の隣の自宅にもどった榮は玄関扉を開いた。
「ただいま…と」
煮物の良い匂いがする。台所を覗くと、妻が煮物の味見をしているところだった。
「あれー?はやかったね」
「まあ、色々あってな」
「折角筑前煮持っていくついでに一緒に飲もうと思ったのに」
「いまはやめとけ。あいつら、真剣な話があるみたいで…」
真剣な話というか、体で語り合っているというか…とにかく、今邪魔をしたら、大地に殺される。
「え、じゃあ、ついに大地くん、ミコっちゃんに告白したの?」
冷蔵庫からとりだした麦茶を飲んでいた榮はぶっと吐き出した。
「こ、告白って、なんでそれを…」
「だって、昔から大地くんミコッちゃんにメロメロだったじゃない?高校の時も、アルバイトしてるミコっちゃんを見に来てたし、結局就職先にうちを選んだのだって、一緒にいたいからでしょ?やっぱりメロメロとじゃない」
メロメロは死語じゃないかと思うが、同い年なので何も言えない。
「良かったねえ。じゃあ、今は若いふたりを邪魔しちゃだめね。やだ、生BLがこんなに近くで拝めるなんて…しかも二人とも美男なのに…」
昨今流行しているBLドラマに妻はハマっていた。
「そうだ。お赤飯も炊きましょうか。明日、ふたりにもっていってあげて」
「おお…。明日な」
実はミコトの童貞は俺が奪ってしまったのだが…。久しぶりの受け入れる側のセックスは榮にもダメージがあった。先のローションを仕込んであったお陰で、何とか間接的な大地の鬼ピストンにも耐えることができたが、ミコトは大丈夫だろうか。
少し心配になる榮であった。
――翌日、紙袋にタッパーを二ついれ、榮は工場の二階に上がった。
「おーい、入るぞ」
榮がガチャリと玄関を開けると、リビングにいたのは胡坐をかいた大地と、体面で座って体を預けているミコトだった。大地はシャツとスウェットを履いているが、ミコトはシャツのみで下半身は丸出しだった。
「昨日はどうも」
何でもないことのように大地が榮に声をかける。
「筑前煮と赤飯持ってきてやったぞ」
「今、もらいに行きます」
大地はなぜか、ミコトを抱えたままよいしょと立ち上がる。やっぱりまだつながったままだ。そして、駅弁フォックのまま、榮に近づいてくるのだ。
「おいおい、大丈夫かよ」
「こいつ軽いんで余裕っす」
「そういう問題か?」
「ん…あれ…社長だ…おはようございます」
揺さぶられるうちにミコトも目覚めたようだ。
「おはよう、ミコト」
「ほら、ミコト、社長から紙袋受け取って」
「はーい、ってうん?って、まだ入ってる…!」
「こら、動くな。落とすぞ」
この高さから振り落とされたら腰を強打する。その恐怖からミコトは大地にぎゅっと抱きついた。
「いい子だ、ミコト」
だがキスは顔をそらすことで拒んだ。そして涙目で榮を見る。
「社長ぉ…たすけてぇ。あの後からずっと、俺、大地にハメられっぱなしで俺、大地に、ころされ…んぐっ!」
「なんだって?」
ミコトが助けを求めた途端、ミコトの足ごと下半身を支えていた大地の手が緩み、ずずっとミコトがずり落ちる。
「ひぃいい!」
ミコトは悲鳴を上げる。ミコトの体を支えているのは、大地の滾ったペニスだけだ。一瞬だけだが、串刺し状態になり、ミコトは大地に必死に抱きついた。
「ふええ…うそだよお…大地のでかチンコすきぃ…ミコトに意地悪しないでぇ…」
えぐえぐと泣きながら抱き着くミコトを抱えなおし、大地は雄臭く笑う。
「まあ、すっかりメスの顔になっちゃって。よく一晩でここまで行けたな」
「長年の片思いの結果です。こいつにはきっちり、受け止めてもらわないと」
「ふええ。お腹パンパン…」
ぼろぼろと泣き出す。自分の腹を見下ろして、『赤ちゃんできたぁ』と頭の緩い発言をする。
「仕方ないだろ、まじでお前名器なんだから。こんなことなら、中学で出会った時に犯しとけば良かった」
長年の執着を滲ませて大地が言う。
「がんばれミコト…。色んな意味で…」
哀れになってしまい榮がミコトの髪を撫でると、ミコトがにこりと笑った。
「えへへ」
頭を摺り寄せてくるミコトに本当にわかっているのだろうかと思いながらも、これ以上邪魔をしたら、大地がブチ切れるだろう。
「じゃ!」
榮は部屋を後にする。何はともあれ、うまくいって良かった。
榮にとってはミコトも大地も大切な仲間なのだ。幸せになって欲しい。
――翌日…、日曜日の朝に、大地が自宅に訪れた。
「おお、どうした、大地。みことは?」
「疲れて寝てます」
何でもないことのように言うが、大地の太い首にもキスマークがいくつも付いている。
妻が大地のために茶を用意する。
「すいません。昨日は赤飯まで頂いて。これ、お礼です」
「おら、大沢屋の羊羮じゃない。大地くんおめでとう。ミコッちゃんとお幸せにね」
「ありがとうございます。大事にします」
妻が羊羹を切り分けるため台所に引っ込むと、榮は大地に尋ねた。
「そういえば、お前らの出会いって?ミコトが施設育ちってのは聞いたことあるけど」
「中学から一緒です。高校もあいつと一緒にいたくて、地元の高校選びました。本当は一緒に就職したかったんですけど、流石に親に泣かれてしまって…」
大地はなかなかに実家が太いと聞いている。
「親御さんはミコトとのこと知ってるのか?」
「もちろん。中学からよく俺の家に来てましたし。ミコトはあの顔であの性格ですからね、無骨な俺が、あいつに夢中になってるのも、ずっと知ってて、応援してくれてました」
「へえ、そうなのか…」
確かにミコトのあの人懐っこい性格は、すぐに受け入れられそうだ。そのうちにお茶請けとして、妻が羊羹を並べてくれる。
大沢屋の羊羹は絶品だった。大地もパクパクと食べ、茶をすすると立ち上がった。
「そろそろ帰ります。ミコトが起きると思うんで」
「ああ、労わってやれよ」
「はい」
大地は一礼すると、ミコトの待つ部屋へ戻っていった。
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