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第四章 新しい時代
二
――湯が沸いたところで、俺はインスタントコーヒーを紙コップに入れてお湯を注いだ。
「おお、サンキュ」
コーヒーを受け取った基樹は一口飲んで、はあと息を吐く。
「で、今度のストーカーはどんなやつなわけ?お決まりの台詞は?」
「基樹…」
歯に衣を着せぬ発言に苦笑いする。そりゃあ、もう20年の付き合いだ。今までのことは全て知っている。
「ストーカーとかじゃないんだけどさ…その、『前世で結婚していた』っていわれて」
「ほらでた、常套句」
「いや、でも今回はちょっと違って…」
『前世から結ばれている』とか『運命なんだ』とは確かに言われたことがある。だが今回は少し違うというか…。
あんなにリアルな前世の話などあるだろうか。出会いから、セックスの様子まで…そう、体の関係を持ってしまったのだった。
「基樹、お前って『前世』とか信じてる?」
「また、ストーカーに変なこと吹き込まれたか?」
俺は幼い頃からストーカーに付きまとわれていた。彼らは言葉巧みに俺の関心を引こうとしていたが、いつも基樹が目を覚ましてくれていた。
「あの時のストーカーじゃないってことだよな?」
「多分…。『ようやく出会えた』とか言われたし。
――正直、ストーカーとか陰湿な感じはしなかった」
上條たちは多比良コーポレーションに勤めているといっていたし、恐らく激務だろう。ストーカーをする暇などないだろうし、陰湿なことなど縁がなさそうだ。
去年彼女にフラれた原因も、ストーカーだった。彼女のマンションのポストに、俺に『近づくな』と手紙がいれられたのだそうだ。警察に届け出ることも考えたが、彼女は報復が怖いと俺との別れを選んだ。よくよく聞くと、度々嫌がらせらしきものがあったのだという。
「彼女とは縁がなかったんだよ。そう思うしかないだろ?」
「そうだけど…俺は彼女と幸せになるつもりだったんだ」
学生時代に出会い、俺のことを好きでいてくれた。長い付き合いだったし、結婚まで考えていたので、俺は当然ショックだった。
――一緒に生きていたいと思ったのに、一緒に生きていけないのだ。
「あれ…?」
頭の隅でカチリと音が鳴った。
「郁人、どうしたんだ?」
「え?いや、なんでも…つっ!」
頭を打ち付ける痛さに、俺は頭を抱える。
思い出してはいけない…。…いや、違う。思い出さないと、俺はまた『あの子』を守れない。
「あの子…?」
ふいに流れ込んでくる記憶に、俺の頭痛はひどくなる。
「郁人?どうした!?」
「基樹…?」
基樹の顔に別の表情が重なる。誰だこの男は…いや違う、俺はこの男を知っている。
『リア…!リア…!!』
誰かが泣いている。必死に、誰かに助けを求めている。
『苦しい、助けて…!!せめて…『この子』だけでも…!』
胸が締め付けられた。イディアスが愛する男に助けを求めている。
この記憶は、この想いは…。
――俺は混乱するまま、その場に倒れ込んだ。
「おお、サンキュ」
コーヒーを受け取った基樹は一口飲んで、はあと息を吐く。
「で、今度のストーカーはどんなやつなわけ?お決まりの台詞は?」
「基樹…」
歯に衣を着せぬ発言に苦笑いする。そりゃあ、もう20年の付き合いだ。今までのことは全て知っている。
「ストーカーとかじゃないんだけどさ…その、『前世で結婚していた』っていわれて」
「ほらでた、常套句」
「いや、でも今回はちょっと違って…」
『前世から結ばれている』とか『運命なんだ』とは確かに言われたことがある。だが今回は少し違うというか…。
あんなにリアルな前世の話などあるだろうか。出会いから、セックスの様子まで…そう、体の関係を持ってしまったのだった。
「基樹、お前って『前世』とか信じてる?」
「また、ストーカーに変なこと吹き込まれたか?」
俺は幼い頃からストーカーに付きまとわれていた。彼らは言葉巧みに俺の関心を引こうとしていたが、いつも基樹が目を覚ましてくれていた。
「あの時のストーカーじゃないってことだよな?」
「多分…。『ようやく出会えた』とか言われたし。
――正直、ストーカーとか陰湿な感じはしなかった」
上條たちは多比良コーポレーションに勤めているといっていたし、恐らく激務だろう。ストーカーをする暇などないだろうし、陰湿なことなど縁がなさそうだ。
去年彼女にフラれた原因も、ストーカーだった。彼女のマンションのポストに、俺に『近づくな』と手紙がいれられたのだそうだ。警察に届け出ることも考えたが、彼女は報復が怖いと俺との別れを選んだ。よくよく聞くと、度々嫌がらせらしきものがあったのだという。
「彼女とは縁がなかったんだよ。そう思うしかないだろ?」
「そうだけど…俺は彼女と幸せになるつもりだったんだ」
学生時代に出会い、俺のことを好きでいてくれた。長い付き合いだったし、結婚まで考えていたので、俺は当然ショックだった。
――一緒に生きていたいと思ったのに、一緒に生きていけないのだ。
「あれ…?」
頭の隅でカチリと音が鳴った。
「郁人、どうしたんだ?」
「え?いや、なんでも…つっ!」
頭を打ち付ける痛さに、俺は頭を抱える。
思い出してはいけない…。…いや、違う。思い出さないと、俺はまた『あの子』を守れない。
「あの子…?」
ふいに流れ込んでくる記憶に、俺の頭痛はひどくなる。
「郁人?どうした!?」
「基樹…?」
基樹の顔に別の表情が重なる。誰だこの男は…いや違う、俺はこの男を知っている。
『リア…!リア…!!』
誰かが泣いている。必死に、誰かに助けを求めている。
『苦しい、助けて…!!せめて…『この子』だけでも…!』
胸が締め付けられた。イディアスが愛する男に助けを求めている。
この記憶は、この想いは…。
――俺は混乱するまま、その場に倒れ込んだ。
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