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狂い咲き6
しおりを挟む定時になると、会社を飛び出し、私は彼との待ち合わせ場所に急いだ。
彼と腕を組み、夜の街を歩く。
誰もが私を羨むような目で見ている。
なんて素晴らしい彼だろうか。
私は彼と会うたびに舞い上がっていった。
有頂天になるばかりの私をさらに彼は喜ばし続けた。
いくら背伸びをしても来ることもできないだろう一流ホテルで食事を楽しむ。彼はいつだってプレゼントをかかさない。
値札を見て躊躇う高価なものを気軽に彼は私に買い与えてくれる。
ショーウィンドーで私が足を止め、眺めていると、彼は躊躇いもなくプレゼントをしてくれた。
あの当時だけを考えると、胸が締めつけられるほどに苦しくなる。
舞い上がり続ける私を彼は、どんな思いで見ていたのだろうか。
考え出すだけで、悔しさが込み上げてくる。
身体ばかりでなく、心まで弄ばれてしまった。
そう思うのに、未だに彼から買い与えられた物を捨てられずにいる。
なんて、バカな女だろう。
三連休が近づこうとする二日前、彼から誘われた。
「君にみせたいものがある」
彼は私をペンションに誘った。
当然、彼を疑うわけもなく、彼と一緒に過ごせると思うだけで私は嬉しくて喜んで快諾した。
ペンションに出かける前日の夜は、嬉しくて眠れないほどだった。
言葉数が少ない彼だけど、話題が豊富で、ペンションに向かうドライブは飽きることがない。
一生、乗ることがないだろう高級車に乗り、私は彼と過ごせる三日間に心をときめかしていた。
彼はとても落ち着いていて、どこも不審がる素振りはない。
先を急いでいるわけでもなく、サービスエリアで、私が欲しがる物を彼は当たり前のように買ってくれた。
「どこか、寄り道をしようか」とも聞いてきたほどだ。
でも私は、早く彼と二人きりになりたくて、私のほうが先を急いでいた。
あれほどの悪夢が待ち構えているとも知らずに。
ペンションに着いても、彼は、なにも態度を変えないでいた。
ただ、着替えの入った鞄を取り出そうとすると、「後でいいよ」と言った。
「おいで」
彼から手を差し伸べられ、私は一瞬、躊躇したが、ペンションの前に車は留められたわけだし、別に鞄なんて、いつでも取りに行けると疑わなかった。
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