狂い咲き

necropsy

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狂い咲き23

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「たくさん殴られたけど、その数の分、考えさせられた。今、あなたを前にしても、こうしていられるのは、あのひとのお陰なの。お願い、わかって」


 私は必死に彼に願い出た。


「お願いだから」


 男は、「よせよ」と言ったが、私は男を憎んでいない。


 感謝しているとは、とても言えない。だけど、男がしたことは、あくまでも彼の命令を忠実に遂行する為。私の考えの甘さに、つい手を上げただけだ。


 もし、誰が悪いとしたら、もちろん彼だ。


 必死に願い出る私の顔を彼はしっかりと見ると「下がれ」とだけ言った。


 男は私の顔を見ると「この、バカが!」と言わんばかりの目を向けた。が、彼に深々と頭を下げると、「申し訳ありませんでした」と言い、立ち去って行った。


 男が立ち去ると彼が私に歩みよって来た。


 優しく頬を撫でると、口元にできた傷に、くちびるをよせてきた。


「逢いたかった」


 彼の言葉に、私は悩みながらも頷いた。


 私は大きく息を吸い込むと、ありあまるほどの勇気を振り絞り、彼にはっきりと言った。


「あなたのしたことを許してはいない」


 彼のくちびるが、ふと、私のくちびるに触れた。彼は私のシャツを引き裂いた。


 私の首筋に彼のくちびるが、ゆっくりと滑り落ちていく。


 私は静かに目を閉じ、彼の言葉を待った。


「好きだ」


 男が言ったとおり、彼は、一年前のことをまったく悪いとは思っていない。


 今の今でさえ、シャツを引き裂き、私の動向を窺うような素振りを見せている。


「本当に好きなら、どうしてこんなことができるの?」


 それを言葉に出してしまうのは簡単だ。が、彼には愚問の一つにしか過ぎないだろう。


 押し殺すばかりの嫉妬が、私の着衣を引き裂くことで、辛うじて、彼の平常心を保とうとしているように思えるほどだ。


 あの男に連れ去られたからこそ、私はまだ、怖さに震えながらも彼のされるがままでいられる。


 ただ今は、彼にされるがまま、じっと大人しくしているのが賢明に思える。


 彼を罵り、罵倒するのは簡単だ。


 でも、感情に飲まれまいとしている彼を見守るのが今は必要な気がする。
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