狂い咲き

necropsy

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狂い咲き49

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 失って気づくことがあるとしたら、今だ。


「しっかりして」


 私は彼に覆いかぶさるように彼を抱きしめた。


 温まりきっていた浴室内が冷え切り彼の体温もまた低い。


 頭の中では「救急車」の文字が浮かびながらも、なぜだか、私は動けないでいた。


 彼がもし、このまま死んでしまったら、ペンションに火をつけ彼と死んでしまおう。


 私は彼が意識を取り戻すのを待った。冷えた彼の身体を温めるように私は彼の鼓動を静かに聞く。ただ、彼に凭れ続ける。


 じょじょに彼の鼓動の高鳴りを感じる。


 彼が薄っすらと目を開けた。彼の手が力なく私を抱きよせた。




 しばらく目を閉じていた彼だが、彼は冷えた湯を温めなおすスイッチを押した。


「玲子の素顔もいいな」


 私は彼の声に思わず顔を赤らめた。


 彼は先ほどの出来事が嘘のように何事もなかった顔をしている。


 ほどよく湯が暖まると彼はスイッチを止めた。


「玲子は俺の傍にいればいい」


「でも」


「言っただろう。好きにすればいいって」


 彼の指先が私の身体をなぞっていく。彼の声が囁きに変わる。


「罰が欲しいのなら、好きなだけ与えてやる」


 彼の指先が私の傷口に爪を立てた。彼の囁きに思わず私は息を飲んだ。彼の指先が傷口すらも疼かせていく。


 彼は私が身をよじらせ動かすほどに、さらに身体を疼かせてくる。


「罰が欲しい?」


 彼の問いかけに私は違った戸惑いを浮かべる。


 彼は私の手を力強く握ると立ち上がった。私にバスローブを羽織らせると彼は私を彼の自室として使っている部屋に連れて行った。


 何気なく置かれている全身を映し出す鏡の前に彼は私を連れる。


 彼は私に羽織らせたバスローブを脱がすと照明を落とした。


 月明かりに浮かぶ傷跡に彩られた自らの痛々しさに思わず目を逸らした。


「ほら」


 彼の声に、私は逸らしていた目をまた、前に向けた。


「罪が欲しい?」




 彼のくちびるが首筋をなぞる。思わず目を閉じると彼は、「もっと罰が欲しい?」と囁きかけてくる。


 戸惑う私のくちびるに彼のくちびるが重なる。


 私は彼に言われるがまま、淫らに揺れ動く彼を鏡をとおしてみる。自らの目で彼のすべてを目で追う。
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