狂い咲き

necropsy

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狂い咲き60

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 運ばれたセットメニューに私は目を輝かす。



 スキー場といったら割高なカツカレーのイメージが私の中にあった。



 しかし、ここのセットメニューは一流とまでいかなくても、手が込んでいる。



 それっぽく見えるだけなのかと思ったらナイフで切るなり肉汁があふれでてきた。



 ファミレスで安いステーキ肉を切るような格闘もない。



 すっとナイフをあてただけで肉が切れる。くちにしてみると、くちの中に広がる濃厚な脂身が塩だけで味つけされたシンプルな味わいと重なり思わず唸る。



 後味は雪どけのようにあっさりとしていて、また次が欲しくなる。



 グルメ番組ではないが、思わず私の顔がほころぶ。



 パンとライスを選べたが、ライスのほうがよかったな。



 女性用に少し小さめのサイズを店主に勧められた。彼は私より二まわり大きなサイズにライスを選んでいた。



 この美味しさなら彼と同じサイズでも、あっさりと食べられそうだ。



 黙々と食べる私の顔を彼は嬉しげに見ている。



 私は子供のように「美味しい」を連ねる。



 彼は松坂牛が有名なら伊賀牛もまた違った美味しさだと話してくれる。



 私は彼に頷きながら松坂牛など食べたことがない。



 半額のお弁当セールで負けたときの焼きそば弁当の悔しさ。



 明日こそは一番人気のとんかつ弁当を勝ち取ってやると思うほどに私はグルメではない。



 接客がひと段落した店主が顔をほころばす私に話しかけてきた。



 セッメニューに私は烏龍茶を選んだ。飲み干す美味しさが、彼が連れて行ってくれた湧き水の美味しさを感じさせる。



 店主に聞いてみると、やはり。あの場所は知られていないだけで、ヒカリゴケがあるそうだ。



 夏場になると蛍の幻想的な光とヒカリゴケが放つ金緑色の色が重なりあい、とても神秘的だと教えてくれた。



 マスコミがなんどとなく取材に訪れたが、頑として地元のひとは、それを教えることはない。



 マナーが悪いお客には店主も絶対に教えないそうだ。



 お客が店を選ぶのなら店主がお客を選んでもいいと言う。店主の口振りに店主であるプロ意識を私は強く感じる。



 それを裏付けるこの美味しさ。
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