伴奏曲

necropsy

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伴奏曲11

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 このリングは神父以外けっして触れてはいけない。遠巻きに見ていた神父が安藤に説明をしてくれた。
 この結婚式が終わったらまた少しでいいからあずさのことを聞けないかと安藤は神父に尋ねると神父は頷いてくれた。

 神父はウエディングアーチをくぐる花嫁に目を細めている。誓いを言い、ウエディングアーチをくぐったら「おめでとう」だ。
 しかしここで挙式をしたカップルは二度と別れることができない試練があるとも神父が言っていた。
 そんな難儀なウエディングアーチをわざわざくぐる必要があるのか安藤は不可思議でならない。


         *

「あのね」
 あずさはジョンに話しかけ続ける。ジョンはいつものように荷馬車から海原に命じられたがままを貯蔵庫に運び入れていた。
 まとわりつくあずさを払いのけるジョンを見ているとあずさは日本語がわかるのではないかとさらにジョンにまとわりついていた。
 ジョンはむすっとしたまま手を休めない。さすが海原の女だけある。「俺を犬呼ばわりか」なにを聞いても答えないジョンにあずさがジョンと勝手に呼びかけていた。

     *

「そうお急ぎにならず」
 結婚式は洋式だが宗派などあってないようなものだ。
 日本人であっても教会で結婚式をする。教会のように建てられた結婚式場までもがある。外国人だから仏教で挙式をしていけないわけではない。
 誓いが終わり、華やかなパーティーへと移り変わろうとしたとき神父を安藤が追いかける。
「微笑ましいではありませんか」
 安藤にとっては挙式などどうでもいい。彼女がいない歴は万年床並だ。
 華やいだ雰囲気に相応しい美味しいものが食べられる。それは嬉しいのだがガツガツと「おかわり!」などとはいえない。
 シェフが肉汁たっぷりのステーキ肉などを焼いてくれるがそうも食べてばかりもいかないだろう。
「少し疲れました」
 木立に置かれたベンチに神父が腰掛けた。年齢を聞くのもどうかと安藤は思う。もう80歳を軽く過ぎていても可笑しくないように安藤は感じられる。日本語は流暢だ。この島の主のような存在。安藤がわかるのは英語であろう語学と日本語を神父が話せる程度の認識しかない。
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