伴奏曲

necropsy

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伴奏曲12

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 神父の横に神父の世話をするものがいる。ターニャと呼ばれている。日本語は多少たどたどしいが神父の影響か日本語はそれなりに話せる。神父が倒れたときターニャがこの島の主となる。
 日本のように敢えて終戦記念日を作る必要はない。あずさのことはこの島では子供に読み聞かせる絵本のようになっている。自転車でぐるりとこの島を周って思ったが、ジクソーパズルのようにあずさを散りばめた逸話が残されていた。
 新婦がウエディングアーチをくぐった。正しくいうなら柳のように垂れた亜熱帯独自の房のようなカーテンをくぐった。
 安藤ならそう描き表現する。潮風に揺れる房に散りばめられた花が悲しくも煌いてみえるから不思議だ。
 今にも「あのね」と、あずさが話しかけてきそうな気がして安藤にはならない。
 ハワイにあるようなハイビスカスの木立のなかに後から植えられただろう木立がウエディングアーチの変わりになっている。
 添え木をしたのだろうか。どこかここには風変わりな木立に見える。
 なにかが語りかけてきそうでこない。ターニャは名前が可愛らしく感じるがは元傭兵だ。女性コマンドが本当に実在していたとは安藤はとても信じられないでいた。
 もう一人のあずさとも呼ばれている。小麦色に焼かれた肌が瑞々しい。戦争孤児の世話をターニャは率先している。顔に大きな切り傷が残っている。安藤が推測する年齢は40代半ばだ。
 ターニャはこれからを祈り捧げて生きていくと言う。戦争孤児達に惜しみない母性を与え続けている。戦争孤児達も本当の母親にようにターニャに懐ききっている。
 ここにはいつ勃発してもおかしくない内戦に怯え慄いた日々などない。生まれ過ごした日から内戦の日々であったターニャにとって戦うことは当たり前の出来事であった。傭兵を生業としている日本人がいると聞いて安藤は驚いた。驚く安藤にそんなことで驚いていたらバウンティハンターですら有名な日本人がいる。
 なにも驚くことではないとターニャに言われるとたしかにそうなのだが、相手を一発叩いただけで傷害になる。法治国家である日本で生まれ育った安藤は知識だけはあるがまさかの思いだ。しかし、ここにたどり着くまでに内戦に逃げ惑う難民達の多くを安藤は数えきれないほど見てきた。
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