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第15話~え?嫌な気配?~

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元人間の変なアライグマ改め翼と一緒に旅をする事になった俺だが、1つ問題がある。

どこに行けばいいかわからない…
土地勘もないし場所もわからない…川沿いを進んでいるが全く見当たらない。
どうしよう、このままでは本当に野宿確定だ。
正直野宿はまだいい、問題は寝てる間に魔物に襲われる事だ。

この辺りはたいした魔物がいないとは言っても安全とは言い切れない。
寝てる間にやられましたなんて洒落にならない。
そんなことを俺が頭の中で考えている時にこのアライグマは俺の右肩に乗っかり欠伸をしながら寝ていやがる、
思いっきりぶん投げてやろうかこいつと何度も思っては抑えてを繰り返し歩いていた。

「なあ、翼お前さっきから人の肩で寝てるけど自分で歩けよ」
「んぁ?何でやねん?こんな丁度いい場所があるのにどうして歩かなあかんねん?」
「丁度いいって…乗っかられてる方の身にもなれよ」
「別にええやんけ!それに歩くと肩もこるし寧ろ揉んでほしいわ!それに肩に動物が乗っかってるなんてアニメの主人公みたいやろ?」

アニメの主人公って…
うん、こいつは絶対にいつかどこかに捨てよう
そう静かに心から誓った。
そもそもアライグマが肩こるのかよ!いや、厳密には魔物だけどさ…
そんなやり取りをしながら翼と話しながら歩いていたが翼はアニメや漫画、読書をするのが趣味で小説というより文献とか歴史を調べるのが好きだったらしい、
仕事で色々な人間や話しをするから知識は持っていた方がいいと思って色々調べてたらしい。
確かに翼の話しは聞いていて興味があるし面白くて惹かれる所があるが、アライグマが話してるって言うシュールさが何とも言えないが。
そうやって話しながら進んでいったが結局街は見つからないまま、日が沈んでしまいこれ以上進むのは危険なので結局野宿をすることになった。
とりあえず焚き火をしなくちゃいけないが薪は歩きながら少しずつ拾ってアイテムボックスに収納していたから問題ない。
こういう時にアイテムボックスがあると非常にありがたい。
因みに万が一用に武器用の木も拾ってあるがそれでもちょっと固めの頼りなさそうな木ではあるが…出ないことを祈るしかない。

師匠は持っていたが翼は持っていなかったのは魔物の身体だからだろうか?そこはよくわからない。とりあえず薪用の木と火打ち石を出し火をつけた。
この火打ち石はこの国(ケルン王国)に向かうまでの間の野営地で師匠に絡んできた人達から奪った…もとい、いただいた物資の中に入っていた。師匠が俺のアイテムボックスに入れておけと言った物の中にあったのだが、ここで役に立つなんて師匠には感謝だな。他にもポーションとか簡単な食料もありもしかしたら師匠は最初から渡そうと思ってたのかな?いや…まさかね、

時間がかかってしまったが火も何とかついた。元の世界ならライターやマッチで簡単に出来るがこの世界にそんなのはないから文明の利器というのは有り難いものだと改めて感じたし、夜になると冷えるから火があるのは暖まるし落ち着く。

次は飯にしようと思うが食べるのはこの世界ではポピュラーな携帯食の干し肉だが元いた世界に似ているジャーキーとは違いシンプルに塩漬けで硬い。
そのまま喰う事も出来るがスープやお湯に入れて少し柔らかくしてから喰うのがこの世界では普通らしい。
俺も噛みきれないので湯の中に入れて柔らかくしながら食べた。シンプルな味だが身体も暖まりそこそこ満足だ。
隣にいる翼は顎が強いのかそのまま食べている。
一応腹も膨れて俺たちは横になりながらこれからの事を話していた。

「とりあえずこのまま川沿いに進んでみようと思うけど翼はどう思う?」
「それでええんちゃう?下手に進路を変えるよりかは川沿いを進んだ方がまだ可能性はあるやろ」
「だよな。ところでお前一応魔物でアライグマなんだから遠くの声や音が聞こえないのか?」
「んな無茶言うなや!今まで人間やったんやぞ、そこからすぐに耳がよくなるわけないやんけ!聞こえてもこの辺りの音や気配がなんとなく聞こえる位や!」
「なんとなくかよ、聞こえたら人がいるとか分かるし、街の場所とかもわかると思ったのに、これで実は魔物が近づいてましたってなっても気づかずにやられちゃうじゃないか」
「そんな事言うても出来んもんはしゃあないやろ。後なアライグマは犬よりも聞こえる音は低いから犬みたいに期待しても無駄やで?」
「え?そうなのか?ってか何でそんなことまで知ってるんだよ?」
「そんなん、相手と話す時何の話で盛り上がるかわからんやろ?覚えてても損はないわ」
「まぁ確かにそうだけどな、じゃああまり期待はしない方がいいって事か。一応聞くけど今周りに何かいるとかないよな?」
「さっきも言うたやろ?なんとなくしか聞こえへんって。それにこの辺りはヤバそうな気配はないってお前が言うとっ、た…や、ろ…」

話してた翼が急に黙った

「?翼どうしたん…」
「うるさい!」

静かな声でそれでもはっきり聞こえるように近くの森の方を見つめながら翼が喋った

「何か来るで」
「!何かって何だ?」
「それは分からん!せやけどなんとなくしか感じない俺が感じるほどの嫌な気配やで!明らかにヤバそうなやつや!」

翼がそう言うので俺はアイテムボックスから武器用に用意してた木の棒を持つ。
正直こんなんで戦えるかは分からないけど無いよりマシだし、最悪逃げるしかない。
翼も気配を感じる森の方をずっと見ている。
俺も森の方を見ていたが、その気配の正体が森の方から静かに出てきた。
それは暗い森の中から赤い不気味な2つの光が見えてきた。
だがその光は1つ2つと増えていき、月明かりの光でその全体像が見えてきた。
それは全身が黒い毛並みに覆われた狼…いや狼のような魔物だった。
その数は10体以上いたが全ての目が俺達を見つめていた。
これはまずい。逃げるしかないと考えたが俺はあのファングベアの時のように恐怖で足が震えて動けなかった…。
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