異世界に来た整体師は実は最強!?

白兎

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第58話~え?えぇぇ!?~

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俺はエレイン様の身体を治すために施術を始めた。
まずはベッドにうつ伏せに寝かしたエレイン様の脚を調べてみたが、右脚が左脚に比べ明らかに短くなっていた。
目視だけで約1.5cm。
人間の脚は大体1cm以上差があると危険水準と言われている。
エレイン様の場合それを遥かに越えている。歪みだけで見ればかなり強いという事だ。

俺はカルテに詳細を書き脚からほぐしていった。
ハムストリングスからふくらはぎにかけて力加減を変えていきながらほぐしていくのだが長年激務に追われていた為か硬いだけじゃなく浮腫もかなり酷い。
正直よく今まで無事にいられたなと思う。
それだけこの人は無理をしていたんだ…
そして骨盤周りに腰と押していくがこっちはもっと酷い、うつ伏せの状態でも腰が反っているのが分かる
これは中々に手強いというより予想以上だ!
正直このままほぐしたとしても良くなる所か揉み返しが起きてしまう
だから特に細心の注意をはらいながらほぐしていかないといけない「広背筋」だけでなく「腰方形筋」「腸腰筋」「脊柱起立筋群」あらゆる筋肉が限界を迎えている。
腰周りだけでなく、首肩周りまで酷い状態だ…
この人は一体今までどれだけ無理をしていたんだろう、このまま放っておいたら間違いなく壊れてしまう。
そんな事は絶対にさせないしさせたくない。
だが長時間ほぐすのは良くない。
やり過ぎるとかえって反動で身体がついていけずそのまま動けなくなってしまう事とある。
そこで俺は今回はまず身体をほぐしていく事を重点にした。
矯正も今回は行わず骨盤だけでなく肩も含めた関節の可動域を広げ痛みを除く「モビライゼーション」を行う。
基本的にはリハビリテーションで行われる事が多いが今回はそれを採用した。
いきなり矯正ではなくまずは身体をほぐし馴染ませてから行った方がいいからだ。
今日はそうやって整え後日改めて矯正を入れていく事にした。

施術してから約1時間
俺は施術を終了しエレイン様をゆっくり起き上げた。

「エレイン様、どうですかお身体の感じは?」
「…とても軽いです。今まで感じた事がない位軽いです!」

エレイン様は涙目になりながら喜んでくれた。そのまま立ち上がり腰の状態も確認していた。

「まだ痛みや違和感が残っていますが…それでも今までに比べたら全然楽になってます。」
「良かったです。実は今回の処置はエレイン様の身体全部を治したわけではないんです。」
「?アオイ殿それはどういう意味でしょうか?」
「はい、まずエレイン様の身体は…」

俺はエレイン様にどんな身体で今がどんな状態なのかを説明した。
エレイン様はしっかり話を聞いてくれて納得してくれた。

「ご説明頂きありがとうございます。私の身体はそういう状態だったのですね…」
「はい、正直このまま放っておいたらそれこそ大変な事になっていたかもしれません。」
「そうですね、ですがこうしてアオイ殿が助けてくれました。改めてお礼を言わせてください。」
「い、いえそんなお礼なんて…自分は整体師として当然の事をしたまでです。それにまだ終わりではありませんこれからまたお身体を整えて矯正等を行わないといけませんのでエレイン様には出来るだけ無理せずお身体を休めてほしいのです。」
「そうでしたね、ですが私はこの街の領主休んでばかりもいられません。」
「分かっています。ですからいくつか約束事をお願いします。」

俺がエレイン様に言ったのは4つ。

~長時間同じ体勢でいない事。
~必ず所々で小休止を入れて休む事。
~下を見すぎない事。
~軽くでもいいので運動をする事。

以上の事を守ってもらい3日後にもう一度施術を行う事を伝えた。

エレイン様は快く承諾してくれ一先ず今日の施術はこれで終了した。
俺は部屋を出て再びメイドさんに部屋に案内され中にいたネフリティスさんに出迎えられた。
それを察知したのかヘイルダンさんも俺の部屋に訪ねてきたので2人に事の詳細を話し、3日後に再び施術する事を伝え終わり次第カルムの街へ戻ろうという話しでまとまった。
どのみちこの街にずっといられるわけではないし、あっちでも待っている患者さんもいるからね。それにリノンを整体師として育て何かあった際任せられるようにしていきたい。そうすれば今回みたいな事があってもお店を留守にせずに済むし患者さんも困らないはずだ。
ヘイルダンさんも賛成してくれているし問題はないだろう。
そういった事を話していると扉をノックする音が聞こえ扉が開くと先程のメイドさんが入ってきてエレイン様と一緒に夕食をどうぞと言われた。

俺達は断ることなどできないし夕食を一緒にすることにした。

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

夕食はとても美味しかった。
特に肉はホントに美味かった
何でも鹿に似た魔物の肉を使っていて高級品らしいが臭みもなく味もしっかりしていていくらでも食べれそうだった。
以前レナール王国でも食べたけどあっちは味が濃すぎたけど今日のはいい味加減だった。また食べてみたいものだ。
俺達は街に滞在中はここで寝泊まりしてくださいと言われお言葉に甘えたがネフリティスさんは相変わらず俺の隣で寝ているのだがいい加減慣れてきてる自分もいるのでもう開き直ることにした。

勿論手は出してません!!

それから3日後まではあっという間だった。

ヒンバーグは初めてだから色々見て回って買い物をした。流石王国からの交流地だけあって見たことのない物が多かった。
特に食材はカルムにはない珍しいフルーツや野菜も多く折角だからかなり買った。
そして一番目を引いたのが「魚」だった。

気づかなかったがヒンバーグの北側には大きな湖が広がっていて、そこでは魚が沢山捕れ、港の漁師みたいな人達がいるようで毎朝新鮮な魚が届くようだ。
勿論即大量に買った。見た目も白身魚っぽいのでもしかしたらムニエルとかにしたら美味しいかもしれない!
お店の人もこんなに買って大丈夫か?と心配してたが俺にはアイテムボックスがある為問題ない。
そうして色んな物を買いつつ服も買った。
いくつか気に入った服もあったのでそれらを購入し俺だけでなくつばさ達用の服やネフリティスさんのも一緒に購入した。
ネフリティスさんもいつも似たような服を着ているからたまには違うタイプの服もと勧めたらとても喜んでいたので良かった。
意外と色々と購入してお金も大量にかかったが一応懐には余裕があるのでたまにはいいよね?

当然観光ばかりだけでなく俺はエレイン様の所に行きストレッチ等アドバイスをしながらバランスを整えるようにしていた。
そして約束の3日後。
俺は改めてエレイン様の施術を行った。
まだ3日というのもあって最初の時に比べれば筋肉はとても柔らかく、負担も減っていた。
これなら矯正も大丈夫と判断し、俺はエレイン様に矯正をかけた。

ーボキボキッ!ー

「!!」
「!!」

突然凄い音が鳴りメイドさん達がびっくりしていたが当の本人が平気そうだったのを見て呆然としていた。
骨盤に背骨の矯正が終わり、俺はエレイン様に確認してみた。

「エレイン様どうですか?」
「生まれ変わったように軽いです!痛みも殆ど感じません!」
と感動してくれてた。
どうやら上手くはまってくれたみたいで俺も安心した。

「良かったです。上手くいったみたいですね」
「アオイ殿のおかげです。本当に感謝しかございません。痛みのない身体なんて一体何年ぶりでしょう…」

と感動したのか涙を流していた。
そこまで喜んでくれたなら俺もやって良かったと思うよ。
これが整体をやってて一番嬉しい事かな

「喜んでいただけて何よりです。ただ今後これで出ないというわけではありませんので日頃からお約束した事を守りつつ定期的にお身体を整えていきましょう」
「分かりました。確かにこの状態が続くなら定期的に続けた方がよろしいですわね。またギルドに依頼を出してお願いしますね。」

そうエレイン様と約束して俺はそろそろカルムに帰ろうと思ったらせめてお昼を一緒にと引き留められてしまった。
無碍には出来ないので昼食を一緒に食べることになったのだが…まさかあんな事が起きるなんて…


ご馳走になった昼食もやはり美味しかった。
そしてその時エレイン様がメイドさんに声をかけると今回の依頼の報酬ともう1つ巻物みたいな物を持ってきた。
?と思い中身を確認すると「授与」と書いている

「エレイン様、これは?」
「そちらはそのままの通りで爵位の授与です。アオイ殿は本日より子爵の称号を与えます。」
「え?子爵…?あ、あ、あ、あのエレイン様?誰が子爵になるんですか?」
「?ですからアオイ殿ですよ?」


え、えぇぇぇぇぇぇ!?
何それ!?俺が子爵?どういう事?!
俺は思考回路が追いつかず思わずネフリティスさん、ヘイルダンさんを見たが
ネフリティスさんは驚きと共に恍惚の顔していて、ヘイルダンさんは何か顔色が青くなってるし予想外な顔してるし、

いや、一番予想外だと思ってるの俺ですからね!!
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