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1,はじまり
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「ヴァイオレット・ローレン!
私はそなたとの婚約破棄をここに宣言する!」
ライトに反射して光輝く金色の髪に鋭く射抜く紅い瞳、そして1度見たら忘れないであろう美貌の青年が声高々に告げる。
その声を発した青年は、ドレスや紳士服を身に纏う沢山の人々が踊る広い会場内で、間違いなく僕に向けて指をさしていた。
青年のほうに視線を向けると、彼の側には栗色のふわっとウェーブがかった髪に空色の瞳を持つかわいらしい少女が佇んでいる。
怯えるように涙目で彼の後ろに控える少女の小さな口元が一瞬、にっこりと歪むのが見えた。
*
ハッ!喉の乾きで目を覚ます。時計の針を見ればまだ3時よりも早い時刻を指していた。
汗で体に張り付いたパジャマが気持ち悪くて身を起こすと、目元が涙で濡れている事に気づく。
「今のは、夢…?」
夢にしてはやけに鮮明に思いおこされる情景に何故だか心が苦しくなる。とにかくまだ朝日も登っていない早い時間なので、僕はもう一度眠りにつこうと布団に身体を沈めた。
ここで少しだけ自身の話をしようと思う。
僕は九条 菫怜、明日から高校生活を迎える15歳だ。
入学をするのは私立聖城学院高等学校という男子校であり、この学院はいわゆるセレブが通っている金持ち学校として有名である。そんな高校に通うことになる僕も実はそこそこの家柄だったりする。
最初は中学からの顔見知りが多い地元の高校に通おうと考えていたのだが、両親の勧めや成績が良かった事も含め最終的にこの学院に行くことを選んだ。というよりも担任である先生が折角なら…と、あまりにも懇願するものだから選ばざるえなかったという方が正しいかもしれない。
学院は実家から車で1時間程の距離にあるため、明日からは寮での生活が基本となる。地元を出る機会が少なかった僕からしてみれば、両親のもとを離れるのは大変心細い。しかし新しい生活が始まることへの楽しみな気持ちの方がより大きい。
そんな期待を胸に抱いたまま、明日へ向けて再び意識を手放した。
*
入学初日の朝。
白地に金の刺繍が入ったいかにもなブレザーを身に纏い、自宅を後にする。今日は雲一つない青空で、麗らかな日差しが心地よい。
学院に到着すると、またいかにもな大きい正門が待ち構えていた。割と都市に近い場所に位置する学院のはずなのだが、周りは木々で囲まれており、学院の入り口が見えづらい。どれぐらい敷地あるんだろう、これ。
「母さんたち、裏門から入るから菫怜とはここで一旦お別れね!荷物は直接、寮に引き渡しておくわ」
そう言って車を降ろされた僕は、同じく新入生であろう生徒たちの背中を追うように敷地に足を踏み入れる。友達、できると良いな。
入学式。
式が始まるや否や、校長先生の長い祝辞が始まった。この話の長さだけはどこの学校も一緒なんだなとクツクツと笑いがこみ上げてくる。
そういえば両親が話していたことをふと思い出したが、幼い頃に一緒によく遊んでいた幼馴染もこの学院に通うらしい…。
幼馴染とは7歳のときに会ったのが最後、幼馴染の海外への引っ越しが決まった事でそれから一度も会っていない。数年の間は手紙でやり取りをしていたのだが、成長するにつれて自然と連絡も途絶えてしまっていた。
折角なら同じクラスだと良いな~久々に積もる話も沢山あるし、そんな事を考えている間に校長の長かった話が終わり、新入生代表の挨拶へと移る。
「続いて、新入生代表”東條 暁人”」
先程まで思い出していた幼馴染の名前が呼ばれたことにびっくりして咄嗟に壇上を見上げる。
成長していて思い出の彼とはだいぶ違う姿をしているが、あの頃の面影を少なからず感じる容姿に彼だ!と僕は嬉しくなった。
……あれ?
嬉しい、勿論嬉しいという喜びを感じているはずなのに、何故かその感情とは別に胸の辺りがジワジワと痛み出すのを感じる。
何かを忘れている。そんな気がするのは何故だろう、過去で彼と何かがあっただろうか。
過去?いや違う、過去よりももっと前───
途端に昨夜見た夢が頭をよぎる。
そんなハズない!嘘だ!違う!
僕であって僕じゃない私が心の中で叫んでいる。
───だって、見間違えるはずもない。
目の前の壇上に立つ幼馴染…彼は前世で私を断罪した元婚約者、その者の姿なのだから。
私はそなたとの婚約破棄をここに宣言する!」
ライトに反射して光輝く金色の髪に鋭く射抜く紅い瞳、そして1度見たら忘れないであろう美貌の青年が声高々に告げる。
その声を発した青年は、ドレスや紳士服を身に纏う沢山の人々が踊る広い会場内で、間違いなく僕に向けて指をさしていた。
青年のほうに視線を向けると、彼の側には栗色のふわっとウェーブがかった髪に空色の瞳を持つかわいらしい少女が佇んでいる。
怯えるように涙目で彼の後ろに控える少女の小さな口元が一瞬、にっこりと歪むのが見えた。
*
ハッ!喉の乾きで目を覚ます。時計の針を見ればまだ3時よりも早い時刻を指していた。
汗で体に張り付いたパジャマが気持ち悪くて身を起こすと、目元が涙で濡れている事に気づく。
「今のは、夢…?」
夢にしてはやけに鮮明に思いおこされる情景に何故だか心が苦しくなる。とにかくまだ朝日も登っていない早い時間なので、僕はもう一度眠りにつこうと布団に身体を沈めた。
ここで少しだけ自身の話をしようと思う。
僕は九条 菫怜、明日から高校生活を迎える15歳だ。
入学をするのは私立聖城学院高等学校という男子校であり、この学院はいわゆるセレブが通っている金持ち学校として有名である。そんな高校に通うことになる僕も実はそこそこの家柄だったりする。
最初は中学からの顔見知りが多い地元の高校に通おうと考えていたのだが、両親の勧めや成績が良かった事も含め最終的にこの学院に行くことを選んだ。というよりも担任である先生が折角なら…と、あまりにも懇願するものだから選ばざるえなかったという方が正しいかもしれない。
学院は実家から車で1時間程の距離にあるため、明日からは寮での生活が基本となる。地元を出る機会が少なかった僕からしてみれば、両親のもとを離れるのは大変心細い。しかし新しい生活が始まることへの楽しみな気持ちの方がより大きい。
そんな期待を胸に抱いたまま、明日へ向けて再び意識を手放した。
*
入学初日の朝。
白地に金の刺繍が入ったいかにもなブレザーを身に纏い、自宅を後にする。今日は雲一つない青空で、麗らかな日差しが心地よい。
学院に到着すると、またいかにもな大きい正門が待ち構えていた。割と都市に近い場所に位置する学院のはずなのだが、周りは木々で囲まれており、学院の入り口が見えづらい。どれぐらい敷地あるんだろう、これ。
「母さんたち、裏門から入るから菫怜とはここで一旦お別れね!荷物は直接、寮に引き渡しておくわ」
そう言って車を降ろされた僕は、同じく新入生であろう生徒たちの背中を追うように敷地に足を踏み入れる。友達、できると良いな。
入学式。
式が始まるや否や、校長先生の長い祝辞が始まった。この話の長さだけはどこの学校も一緒なんだなとクツクツと笑いがこみ上げてくる。
そういえば両親が話していたことをふと思い出したが、幼い頃に一緒によく遊んでいた幼馴染もこの学院に通うらしい…。
幼馴染とは7歳のときに会ったのが最後、幼馴染の海外への引っ越しが決まった事でそれから一度も会っていない。数年の間は手紙でやり取りをしていたのだが、成長するにつれて自然と連絡も途絶えてしまっていた。
折角なら同じクラスだと良いな~久々に積もる話も沢山あるし、そんな事を考えている間に校長の長かった話が終わり、新入生代表の挨拶へと移る。
「続いて、新入生代表”東條 暁人”」
先程まで思い出していた幼馴染の名前が呼ばれたことにびっくりして咄嗟に壇上を見上げる。
成長していて思い出の彼とはだいぶ違う姿をしているが、あの頃の面影を少なからず感じる容姿に彼だ!と僕は嬉しくなった。
……あれ?
嬉しい、勿論嬉しいという喜びを感じているはずなのに、何故かその感情とは別に胸の辺りがジワジワと痛み出すのを感じる。
何かを忘れている。そんな気がするのは何故だろう、過去で彼と何かがあっただろうか。
過去?いや違う、過去よりももっと前───
途端に昨夜見た夢が頭をよぎる。
そんなハズない!嘘だ!違う!
僕であって僕じゃない私が心の中で叫んでいる。
───だって、見間違えるはずもない。
目の前の壇上に立つ幼馴染…彼は前世で私を断罪した元婚約者、その者の姿なのだから。
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