復讐と約束

アギト

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第1章 復讐の芽生え

第一話 平和の崩壊・復讐の芽生え

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 警備をしていた魔物から、
「勇者一行が攻めてきました!!」
と報を受けた。サタンは、
「そんな馬鹿な!私と奴との『契の腕輪』が壊れてないぞ!」
と怒鳴った。「契の腕輪」は、百年前サタンと勇者ウルの平和宣言した時に使用されたものだ。その効果は、互いの契約を守っている限り不老不死になる。ただし、契約を破れば腕輪が壊れ、契約者が死んでしまう。つまり、「契の腕輪」が壊れていないという事は、互いにまだ契約を守っていることになる。それに、
「奴等が契約を破るメリットがない。」
サタンの言うとおりだ。わざわざ命を捨ててまで、魔物達に敵対する動機は今はないからだ。
「ですが、現に奴らは攻めてきています。サタン様、ソフィア様、ショウ様、奴らを食い止めますのでお逃げください。」
「いや、お前らも逃げていい。命優先、さっさと逃げるぞ!」
「それは…でき…ま…せ……ん。」
「それは…どういう意味だ。」
「もう…しわけ……せ…ん」
とテレパシーが切れた。サタンは、怒りを抑えて、
「ソフィア、ショウ早く逃げるぞ」
「はい!さぁショウ行くよ。」
「うん」
と三人は走り出した。

 下に降り、城の門番をしていた獣人が馬を三馬待たせていた。そして、
「こちらを御使ください!!」
「ありがとよ」
と言い、サタンとソフィアは馬に乗り、ショウは城の門番と一緒に乗った。そして城の外へと全速力で向かった。しかし、
「テリトリー開放」
と後ろから聴こえた。すると、城から城の外へと通じる門までを覆い尽くす結界が張られた。
「クソ!ここまで膨大な結界を張るなんてどんな魔道士だよ。」
と門番が言っていると、
「天魔斬・三流」
と斧を持った男が斧を振り下ろした瞬間、大地に三つの亀裂を走らせた。その斬撃は、三馬ともに当たった。その結果、サタン達は馬から落ちてしまった。
「うぐっ大丈夫か」
「何とか」
「はい、ショウ様もお怪我はありませんか。」
「うん、ありがとう」
「お話の途中で悪いな~」
と声をかけてきた。目の前に8人の人間とエルフがいた。勇者、戦士、魔道士と並んでいた。そして、
「お前が魔王だな。」
と真ん中にいた男が、サタンを指して言った。
「だったらなんだ。」
「お前を倒し、世界に平和を取り戻す。」
「悪いが、俺を倒しても平和なんかにならないぞ。」
「そうか、言い残したいことはそれだけか。」
と言って、詠唱を始めた。すると獣人が、勇者たちの前に出て、
「風切爪・翔風」
と爪に風を纏わせ、勇者一行の前で下の地面に放ち、土煙を起こした。その際に、獣人が
「私が時間を稼ぎます。今のうちに逃げてください。」
と言った。サタンは、
「しかし、結界がある。どちらにしろ無理だ。なら、俺が死んだほうがいい。」
と下を向いて言った。だが獣人は、
「貴方様が死んでどうする!ソフィア様は?ショウ様はどうするんですか!」
とサタンに向かって叱った。
「し、しかしお前は」
「そもそも門番に明日があるとは限らない。そんな私に気遣いは無用ですよ。結界に関しては私がなんとかします。信じて下さい。」
と言って、土煙の中勇者一行に立ち向かっていった。それと同時に、
「ソフィア、ショウ行くぞ!」
「はい」
「うん」
と言って、振り向かずに三人は走り出した。

 獣人ーセンキは、勇者一行に立ち向かっていった。
「風切爪!!」
と先程の技を使った。しかし、戦士はそれを素手で簡単に止めた。
「先程は不意だったから油断したが、大した事のない技だな。」
「斧はどおした?それがなければ大したことないだろ。」
「斧は、魔道士に収納魔法で持ってもらっている。それに俺は、こっちの方が得意でな。」
「そうかよ。」
と言い、センキは短刀に魔力を流し、戦士の顔に切りかかった。戦士はセンキを手から放した。そして、センキは距離を取った。
『おそらく、結界の主は魔道士であるあの女だろう。しかし、この中のひとりでも殺してしまったらサタン様が死んでしまう。』
そう「契の腕輪」の契約により、互いの殺生を禁じられている。それは、サタン以外にも適用される。その為、反撃はできても決め手に欠けるのだ。
『だがラッキーだ。あいつが杖を媒介に魔法を使っていて、それなら杖を壊せば結界は解ける。』
そう考え、センキは戦士に攻撃をしようとした。それにカウンターを食らわそうと、
「無我の境地」
と魂が抜けたかのように立ち尽くした。そしてセンキが拳を振るより先に、戦士の拳が百発食らわされた。だが、
『ん!?何だ感触が無さすぎる』
違和感を感じた。そして、殴られたセンキは白くなり風のように消えた。
「ちょっと、どこに!?」
「ここだ。」
と魔道士の後ろにセンキはいた。そして杖を破壊した。すると結界が解かれた。そして戦士は、
「一体何をした?」
と質問をした。センキは隠す気なく話した。
「最初から戦っていたのは、土煙のときに作った身代わりだ。当の俺は、隙ができるまで木の影に隠れていたんだよ。」
「なるほどな~魔物にもこんな器用なことができるやつがいるとは嬉しいよ。前まではこんなに強いやつはいなかった。ちょっと本気出すか!!」
と戦士は構えを変えた。敵を誘ってるような構えだったが、一切の隙がなかった。それとセンキはあることに気付く、
「他の七人が消えてる!」
と勇者たちが消えてることに気付いた。戦士は、
「んなことはどうでもいいじゃねぇか、俺を滾らせろ!!!」
と言った。センキも構え、
「お前等を倒して、サタン様達のもとに行かしてもらおう。」

 サタン達は、城門に向かって走っていた。城門は、緊急時には予め登録していた者以外は別の場所に転送される仕組みにしている。その為、城門を通れば逃げ切れる。
「二人とももう少しだ。頑張れ!」
「はい」
サタンは、ショウを抱いて走っていた。ソフィアもその後を追って走っていた。その後ろに、海賊の装束を着た男が、
「逃さんぞ」
と後ろからチャクラを投げ、サタン達の行く手を阻んだ。更に、追撃で踊り子姿の女が、
「マジックは好きかい?イリュージョンファイヤー」
と炎がうねりながら、大蛇の形に変わり三人を襲った。踊り子は、髪をなびかせ、
「死んだかな?」
と呑気な事を言った。その後に5人が追いつき、勇者が、
「まだみたいだな。」
「はぁ~あれを見て…ヒヒヒっ、そうこなくっちゃ~」
炎が弱まると、そこにはソフィアが両手を出しサタンとショウを守っていた。
「こんな熱い炎、ショウに当たったらどうすんの!」
「かあさん」
「ソフィア」
ソフィアは、両手を振りながら言った。そして、
「あなた、ショウを連れて逃げて」
と言った。そして指輪を外そうとするのをサタンが止めた。
「頼む。やめてくれ、お前が戦う理由も必要もないだろ。」
「有るわよ。ショウと愛しのサタン様を守るため。そもそも、私は貴方のメイドよ。主を守るのがメイドの役目だしね。」
とソフィアはいつもと変わらない笑顔で言った。サタンは、
「ソフィア」
と涙を流し、ショウを連れて走った。それを見たソフィアは、指輪を外し、本来の力を開放した。

 ソフィア、元サタンのメイドであり妻である。人間でありながら、魔物を凌駕する身体能力と五感を持っている。更に所有スキルは100を越える。その力は、七魔将軍と同等の力を持っていた。指輪を外したソフィアは、元々所有していたスキルを使用出来るようになった。
「ここから先は、通さない。」
とソフィアは背を低く落とし構えた。勇者は、
「さっきの奴より手強いな」
と呟いた。そして四人前に出た。踊り子、海賊、エルフと武人が出た。
「さっき殺しそこねたからね~今度は確実に殺す!!」
「あの構え、龍殺しの型だな。まだあの型を使えるやつがいることに驚きだ。手合わせ願いたい。」
「回復役は必要でしょ。」
「あの指輪『不老不死の指輪』だな。要らねぇなら貰ってやるよ。」
ソフィアは冷静に見ていた。そして、風が通るのと同時に、ソフィアは動いた。
「龍喰らい」
とエルフに当てた。そして、
「四人なんてケチなこと言わなくても、全員で構わないわよ。かかって来なさい。」
と汚物を見るような冷酷な目で言い放った。しかし、勇者は、
「そんな言葉は、残りの三人を倒してからにしな。」
その言葉と同時に、3人が襲いかかった。踊り子は、
「フラフランダンス」
と身体を揺らしながら、ソフィアの周りを囲った。そして、鏡を出し、
「ミラーマジック」
発動させた。ソフィアは、少しフラつき始めた。
『何これ』
すると、踊り子は自慢げに、
「そろそろ効いてきたようね。フラフランダンスは相手に幻覚を見せる。ミラーマジックは、相手を精神崩壊させる。このスキルコンボで狂わない奴なんていないわ。」
と言っていた。その間に武人がソフィアに斬り掛かってきた。ソフィアは回避し、拳をついたがかわされた。
「あら、まだ反撃する気力があるなんて驚きだわ。」
「某の剣を回避するのも見事だ。」
「だけど、もう限界でしょ!!」
と武人がソフィアにまた襲いかかってきた。
「水煙」
水煙、踊り子とのコンボ技である。踊り子が相手を撹乱させ、武人の不規則の剣戟を打ち込む。
「お前の命頂戴する。」
とソフィアの首に斬り掛かった。しかし、一切避ける素振りを見せずソフィアは、攻撃をまともに食らった。すると刀身が折れた。
「何?!」
それに気を取られている隙に、
「剛砕拳」
と武人の頭に食らわせた。武人は、その場で気を失った。踊り子は、
「嘘でしょ!ありえな…」
とホザクうちに、踊り子にも同じ技をみぞおちに喰らわせた。そして、ソフィアが説明しだした。
「私は、100以上のスキルを使用出来るの。その中の一つ、硬質化がある。その強度を操って武人さんの攻撃を防いだの。」
「あ、あたしのは?」
「そもそも掛かってない。最初はふらっときたけど、それだけ」
「化物か!」
「失礼ね。あなたと同じ人間よ。」
と話していると、海賊がチャクラを投げ、
「エンドレスループ」
と薄い鐵工線を使い、ソフィアを追った。ソフィアは、全く焦りの表情を見せず、
「神体能力開放」
と言うのと同時に、ソフィアの姿が消えた。そして、
「神体能力は、自身の寿命を削る事で一時的に神を越える身体能力を得ることのできるスキル。まぁ、これ使えるようになるには、禁忌を何個も超えないといけないからオススメはしないけどね!!」
と海賊のみぞおちに思いっきり決めた。そして、勇者に向かって、
「もう一度言うわよ。全員で構わないわよ。かかって来なさい。」
と言い放った。勇者は、
「お前には、本気で相手しないといけなさそうだな。」
と剣を抜いた。それに続き、賢者と霊獣使いが続いた。

「はぁはぁ、もう少しで城門だぞ。」
とサタンは走りながら、ショウに言った。ショウは、サタンの顔を見て、
「とうさん、かあさんのところに行って」
「へ?」
「行って!」
と真剣な顔で言った。サタンは戸惑った。
「ショウ、父さんはね戦えないんだよ。だから…」
「かんけいない!」
「!!」
「かあさん大事じゃないの?」
とショウはサタンに言った。サタンは目をつぶり、心呼吸して、
「ショウの言うとおりだ。父さん行ってくる。ちゃんと一人で城門に向かうんだよ。」
と言って、道を引き返した。ショウは、一人で城門に向かった。

「はぁはぁ、これが勇者の力」
とボロボロになり、肩を抑えて言った。勇者は、
「所詮は、ただの人だな。」
と剣を振り下ろそうとした瞬間、
「シャドーボックス」
とソフィアを黒い箱が覆った。そして立て続けに、
「喰らえ、シャドーウルフ」
と無数の狼が後ろの影から出てきた。
「ぐっ何だこれは!」
「おのれ、サタン!」
「慌てるな」
と混乱していた。そして、ソフィアを助け出し、
「あなた…ごめんなさい。」
「謝るのは俺の方だ。すまないな。さぁ離脱するぞ。影の濁流」
と唱えると、サタンの周りの影が溢れ出し勇者一行を呑み込んだ。

 ショウは、城門の前で待っていた。両親を信じて、
「ん、きた」
とショウは振り向き、息切れしたサタンとボロボロになったソフィアの姿を確認した。そしてサタンは、
「まさか息子に怒られるとはな、我ながらに情けない。」
と苦笑いしながらいった。ソフィアは、
「そう云うところも好きですよ。」
と言った。サタンは、
「そういうのは後だ。ショウ、3人で逃げるよ。さぁ…」
そういった途端、サタンとソフィアから血飛沫が舞った。その後ろには、勇者と黒装束がいた。
「後は子供だけだな。」
とショウは、倒れた両親をみた。サタンは腕を斬り落とされたのと同時に刺され、ソフィアは背を切り刻まれ殺された。ショウは、
「ウァァァァ」
と泣き叫ぶことしかできなかった。サタンは、力を振り絞り、
「烈風波」
と右腕から風を出し、ショウに向けて打った。そのおかげで、ショウは城門の外へと出ることができた。そして、サタンはショウに向かって、
「ショウ約束してくれ」
「だめ、とうさんとかあさんもいっしょに…」
「聴いてくれ、この世界で一体何が起こっているのか、解き明かしてくれ。」
とサタンの決死の言葉を聞き、ショウも涙を拭い、
「うん…わかった」
「ふっはは…いい子だ。」
と言い、笑顔でサタンは目を閉じた。それと同時に「契の腕輪」が壊れた。ショウは、その姿にした張本人を睨みつけ、
「勇者一行、僕はお前を絶対に許さない。絶対に僕がお前らを殺してやる!!覚えとけよ」
と言い放ち、森の中へと走っていった。勇者は、
「その前にお前を殺せばいいだけだ。」
と城門を出ようとした。すると、
「風切爪!!」
と後ろから勇者と黒装束に向かって放たれた。勇者は、その攻撃を剣で弾き返した。
「そよ風同然の攻撃だな。ライトニングスラッシュ」
とセンキに剣に雷を纏わせた斬撃を喰らわせた。センキは、倒れている二人と「契の腕輪」が壊れているのを発見し、
「ウァぁぁぁぁ!!サタン様、ソフィア様」
大声で叫んだ。黒装束が、
「すぐにそいつ等のもとに送ってやる。」
と短刀構えて言った。センキは、血の涙を流しながら、
「もう契約もクソもないな!」
と今まで抑え込んでいた覇気を開放した。

 獣人センキは、かつて七魔将軍一の武闘家であったアルキの側近にして副将をしていた。七魔将軍を解散し、副将の座を降りて門番をしていた。そしてその実力は、当時のアルキからも、七魔将軍の座を譲るという話を度々受けていた。
「黒風白雨」
風を切り裂く攻撃を豪雨の如く浴びせていた。そして黒装束に向かって、
「牙毒」
と方に噛みつき、猛毒を黒装束に注入した。
「ぐっ離れろ!」
「プッお前に注入したのはこの世で最も強力な猛毒マフロウだ。」
「完璧な解毒!何!解毒できない。」
「当たり前だ。そのスキルは、五段階あるすべての毒を解毒できる。しかし、マフロウはその上、六段目に入る毒だからだ。」
「そんな毒有るはずがない。」
毒類とは、それぞれに危険度を分けたものである。

一段・・・数分から数時間の痛みの後自然治癒する毒
二段・・・数時間以上痛むが自然治癒できる毒
三段・・・自然治癒できるが、薬を処方しなければ死ぬ可能性のある毒
四段・・・薬を処方をして治癒するが後遺症が残る毒
五段・・・薬の処方が不可能な毒(現在はほとんど薬を処方できる)
これが共通の毒類である。魔物たちの世界には更に三つ存在する。
六段・・・村一つを脅かせるほどの毒(薬がある毒もある)
七段・・・都市を崩壊できる毒
八段・・・人間・自然環境を崩壊させるほどの毒
マフロウは、六段に当たる毒であるが人を必ず殺せれる上に、化学反応を起こせば世界を崩壊させれるほどの毒である。
「クソ!めまいと吐き気が」
「こちら側の勉強不足だったな。先程までなら解毒薬をやらなくもなかったが、契約を破ったお前らにやる義理はない。」
と吐き捨てた。黒装束が倒れたのを確認し、勇者に牙を向けた。勇者は剣を構え、
「ゾーン」
と言うと、純白のオーラが勇者を包んだ。センキは、
「行くぞ、誓約解除」
と漆黒のオーラを纏い立ち向かっていった。

 ショウはひたすら走っていた。
「ここまで来たらだいじょうぶかな」
「残念だったな」
とエルフが矢を射った。ショウはギリギリで回避した。エルフは木から降りてきて、
「私は子供を殺す趣味はないが、未来のためだ。死んでくれ」
と矢を思いっきり引き、矢を射とうとした。すると、
「霧隠れ」
と森の辺りが霧に覆われた。そして、
「行きますよ。ショウ様」
と謎の魔物に連れて行かれた。

 センキは、立っているのが不思議な位の傷を負っていた。だが、一切倒れようとしなかった。センキと勇者が戦っているさなかに、続々と戦士や魔道士とどんどん参戦していった。勇者は、
「もうお前は十分やった。だから次の一撃で殺してやる。」
そう言うと、剣に純白の雷を纏わせ、
「神殺しの剣技:雷神」
それと同時に、センキの心臓を貫き雷を直撃させた。センキは、全身が黒くなり白目となった。それでも尚倒れようとしなかった。戦士は、
「マジかよ。」
と嬉しそうに近付き、拳を振るおうとした。それを勇者は止めた。
「もう死んでいる。それに第一の目標は達成した。後はサタンの子供を殺すだけだ。そいつは放っておけ」
「そうだな。勿体無いやつだったな~とういうか、アサシンはいつまで寝てんだよ。」
「うぅ…やっと抗体生成ができた。まさか、五段より上があったとはな。」
と体を叩いて、土を払った。
アサシンの固有スキル「抗体生成」は、ありとあらゆる毒の抗体を作ることができる。レベルや耐性により抗体生成にかかる時間は異なる。
「さて、さっさと追うぞ。」
「あぁ、あのレベルが沢山いると思うと楽しくなってきたぜ。」
と戦士は腕を鳴らしながら、城門の外へと出た。続けて勇者たちもその後に続いた。

 勇者一行が出て行ってしばらくして、サタンは目を開け、
「ぐはっ……もう不老不死ではないが、生命力が高すぎるせいでまだ死ななかったか。だがもうじき死ぬな。」
とソフィア、そして立ち尽くしているセンキを見た。
「お前には一番苦しい責を背負わせてしまったな。すまないな、センキ。そして守れなくてすまない、こんな不甲斐ない魔物ですまなかった。ソフィア」
と涙を流しながら、ソフィアに手を差し伸べた。その手をソフィアは無意識に手を取り、
「そう云うところが好きなんですよ。それが貴方の本当の優しさです。」
と言って、息を引き取った。サタンは、
「最後にお前と一緒にいられて幸せだ。ショウ、あとは頼むぞ。」
と言ってサタンも息を引き取った。

 ショウとトラの体で二足歩行で貴族のような服を着ている魔物は、山小屋ので、
「ショウ様、お久しぶりでございます。」
と膝まずき、頭を下げた。 
「もしかして、カシルおじちゃん?」
「はい、三年ぶりで御座います。」
カシル、七魔将軍の剣士で引退してからはショウの稽古をしていた。しかし、三年ほど前にサタン直々に城から出るように命じられて出ていった。
「でも、何でここに」
「サタン様から命令を受け、城を出ました。それから宛もなく旅をしていたんです。それより、先程のエルフは一体なん…!気付かれたようですね。ショウ様はここに居てください。」
そう言い、カシルは家を出た。

 カシルは家を出て、
「そこにいるのは分かってるぞ。」
と葉っぱに氣を注入し木の上に投げた。その先には、エルフがいた。そして、カシルは居合の構えで、
「お前は一体何者だ。何故ショウ様を狙う。」
とエルフに質問をした。エルフは、鼻で笑い、
「そんなの魔王の子だからに決まってるじゃないですか。先程の魔物達もくだらないことを吐いていましが、魔王の血があり続ける限り平和なんかない。」
と長々と自分の主張を吐いた。カシルは、
「下ら無い事だと、お前サタン様たちの何を知っている。百年前で戦いが終わり、復興から信用・信頼を築くために努力された。反感を受けても、笑顔で寄り添うそれがサタン様の成長と優しさだ。それを理解しないお前らのほうが余程下らん。」
剣を抜き、
「ショウ様を狙っている理由はわかった。絶対にショウ様は殺させん。殺したければ、私を殺してからにしてもらおう。」
と言った。エルフも、
「始めからそのつもりですよ。」
と矢を構えた。その瞬間、カシルの姿が消えていた。そして、
「構えと溜めが長すぎる。」
とエルフを一太刀で殺した。エルフは、
「な、何が」
と何が起こったか分からないという感じだった。カシルは、
「ただの一閃でやられるとはな。貴様らもたいしたことないのだな。」
と剣を収めてショウのいる家に入った。

 ショウは、カシルの一連の戦いの動作に見惚れた。
「すごく綺麗な動作だ。」
と呟いた。すると、
「ありがとう御座います。ショウ様」
と後ろからカシルが声をかけた。ショウは、カシルの前で頭を下げて、
「おねがいします。カシルおじちゃん、ぼくをきたえてください。」
と言った。カシルは、
「何があったか説明して頂けますか。」
「はい」
とショウから先程の出来事を聴いた。カシルは、目を変え、
「ショウ様」
「はい」
「城での稽古より厳しくなりますが、覚悟はよろしいですか?」
とショウに容赦ない圧を掛けた。それにショウは負けず、
「ぼくはとうさんとのやくそくをまもりたい。そして勇者一行に必ず復讐する。」
と答えた。カシルは、
「分かりました。では少し場所を変えましょう。ここは見つかりかねない。」
「はい!」
と言って、家を出た。そして心の中でショウは、
『必ず復讐をはたします。そして、今何が起きているのか解き明かします。とうさん、かあさん見守っててくださいね。』
と強く思った。
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