復讐と約束

アギト

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第1章 復讐の芽生え

第三話 訓練の成果

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 ショウとカシルが訓練を始めて、早三年が経っていた。ショウは、一段と魔眼の練度が上がっていた。更には、剣術と武術もカシルと互角にやり合えるくらいになっていた。一方カシルは、新たなスキルを解放し、オリジナルの技を開発していた。
 今二人は、森の中で組手をしていた。
「硬質化:鋼+ソニックブロー:七コンボ」
ショウは、風を切り裂く拳を七連撃を放ったが、カシルも、
「閃光・乱突」
光の速度で突き技を放った。それから互いに距離をおき、
「闘魂注入」
カシルは剣に氣を纏わせた。ショウも、
「アームウェア:ウィンドウ」
右腕に風を纏わせ、二人同時に、
「覇王斬り」
「ジェットブロー」
と放った技がぶつかり、周囲が爆発した。半径100メートルほど崩壊した。カシルはショウに近付き、
「私の教えれるのはここまでです。」
と言った。ショウは、
「ありがとうございました。カシルさん」
と頭を下げて言った。そこからカシルは、声のトーンを落として、
「明日の日の出に最後の訓練をします。ルールは簡単、私に勝ってください。」
そうショウに向かって言った。ショウは、
「はい、あなたを越えて復讐を果たします。」
と目を真っ直ぐカシルに向けていった。

        その日の夜
 ショウとカシルは、別々の場所でご飯を食べていた。ショウは壊した銅像の前で、カシルはそこから30メートル離れた湖にいた。二人は、ご飯を食べ終わると立ち上がり、鍛錬を始めた。ショウは習った型を復習した。
「はぁはぁ、明日カシルさんを越えないといけない。どおしたらいい」
ショウはずっと悩んでいた。カシルに一度も勝ったことがなかった。良くて引き分けが良いところだった。ショウは次に無心で走り始めた。周辺の木々を利用して、
『僕には何が足りない。何がいるんだ。父さんやカシルさんと何が!』
と何かに躓いた。ショウは、足元を見ると、
「これは、ただの…いや、トレントだな。」
トレントの破片があった。それに気付いた瞬間、四方向から木がショウを刺しに来た。ショウは難なく躱し、
「トレント、なにか用か?」
とトレントに質問をした。トレントは顔を出し、
「何かに取り憑かれているような感じがしたから止めたまでです。」
と答えた。ショウは、理解できなかった。
 トレントは、植物系魔物で人・魔物の生命力を吸い取る魔物だ。そして、良質な木を偶に落とすことで有名である。また植物系の魔物は、ありとあらゆる生命の異変に敏感である。
 トレントは、それを気にせず言葉を続けた。
「あなたの悩みは、『何が足りないのか?』ですね。」
「!?どうして、わかった?」
「何、無心で走るやつの大半は、そんな悩みだからですよ。答えがわからないから、無心になれるようにする。ただの心理ですよ。」
「そうか、どうしたらいいと思う?」
「ふ~む、そんな事知りません。ご自分で考えてください。」
「な!だったら何で止めた!」
「ただ、ヒントにできることは知っています。それは…」
と言うと、周りの木々が揺れ始め、霧もかかってきた。

 暫くすると、何やら影がショウに近付いてきた。その影を見たショウは、
「ぼ、僕!どう云うことだ。」
と言うと、影ショウが、
「終の拳:打雷花」
とショウに目掛けて攻撃した。受けた打撃は雷の花を開き、ショウの身体を走った。ショウはまともに喰らい、木にぶつかり倒れた。そこから立ち上がり、
「今のは、終の拳か…でも、そんな技名は無いはずだ。」
終の拳、ソフィア直伝の拳である。技は(奥義を除き)三つしかない代わりに、応用が利きやすく、どんな戦況でも適応できる。ショウは、五歳の時に三つとも習得していた。
楽胴牙:両手を牙のように構え、相手の胴を喰らい尽くすような攻撃。狼のような動きで、足場が少なくても攻撃に転じれる。
反射鏡:相手の攻撃利用して、その倍の威力で返す。謂わばカウンター技である。攻撃の方向を見極めれるようになれば、更に威力が増す。
天海音流:流れるような動きと細かな連撃を同時に食らわせる技である。防御力の高い相手でも、突破口をひらくことができる。
この三つが、ソフィアから教わった技だ。しかし、奴の攻撃は、この三つに当てはまらない。
「一体何を!」
とショウが聞く前に、影ショウは、攻撃を続けた。
「ソニックブロー」
ショウも少し反応が遅れたが、何とか躱し、
「はぁ!!」
と拳をついたが、影ショウは難なくしゃがんで躱し、
「!!」
と足払いをした。ショウは、その場で転び、
「影縛り+針影山」
「ぐぁっ」
と急所を避けて無数の針がショウの体を突き刺した。
『これは一体何なのだ。魔眼でも分からないとは』

 一方トレントは、眠っているショウを見ていた。すると周りのトレントから声を掛けられた。
「何してんだ?この魔族に」
「この子の悩みを解決してあげようと思ってな。」
「それで」
「ヒントになることを今した。掴めるかは、本人次第だけどな」
と話していた。
 トレントがショウにかけたのは、トレントの固有スキル「眠りのうねり」である。このスキルで対象を眠らせ、生命力を吸い取る。また、相手に幸せな夢や悪夢などを見せることができる。今は、ショウに試練の夢を見せている。
「なぁ、目覚まさなかったら、俺が生命力吸い取っていいか?」
「好きにしろ。だが、夜明けまでは待て」
「わかった。」

 ショウは、影縛りから抜け出そうと必死にもがいていたが、抜け出せそうになかった。
『魔眼が通用しない。全然死なない。更に魔力が一切減ってないのを見るに、僕は夢か幻覚のどちらかに陥ったな。ここからどうするか…』
と冷静に見ていると、影ショウは、
「魔剣生成『爆駱刀』」
と魔剣を生成した。
魔剣生成・・・ショウの固有スキルの一つ。自身の魔力と想像力で戦いに適した魔剣を生成する。現保有数は4丁
魔剣で刺そうとした。そこでショウは、
「させるかよ。硬質化:鋼」
と全身鋼と化した身体は、魔剣を弾いた。その隙に、
「ストーム」
とショウの周りで風を起こし、縛りが弱くなったのと同時に抜け出した。ショウは、息を切らしながら考えた。
『トレントの狙いは何だ?僕に何を伝えたい』
ショウは考えた。すると容赦なく影ショウは、
「終の拳:天海音流」
と攻撃してきた。しかしそれをショウは、ジャンプし回避したが、影ショウも飛び、
「ふんぬっ」
ショウを落とした。更に追撃しようと今度は、木を使い縦横無尽に攻撃した。それだけに留まらず、空も蹴り加速した。
『なんて奴だ。!!地形ガン無視かよ!!』
とショウは思った。それと同時に、自身に足りないものに気付いた。
「そうか…そうだったのか!」
と着地し、影ショウの拳をあえて喰らった。しかしすぐさま拳を掴み、
「ありがとよ、お前のおかげで気づけた。」
と影ショウを殴った。影ショウは、態勢を立て直し構えたが、もうそこにショウの姿はなかった。すると後ろから、拳を喰らった。更に、
「ファイヤー」
と火の玉を投げた。それを払い、
「ファイヤーアロー:三矢」
と攻撃を放ったが、ショウは、
「終の拳:反射鏡」
と魔力を纏わせ三矢を弾き、
「ドッペルゲンガー」
ともう一人のショウが現れ、影ショウに、
「ソニックブロー:二重層」
と喰らわせた。影ショウは、木に当たり消えた。

 ショウは目が覚めた。もう少しで日の出と言うところだった。
「マジかよ~」
「いつの間にこんなに集まったんだ。」
とショウが驚いていると、最初にあったトレントが、
「君が夜明けまで覚めなかったら、生命力吸い取っていいという話だったからね。」
と悪びれずに言った。ショウは、溜息はついたが、
「まぁいいか、そろそろ行かないと」
カシルのもとに向かおうとした。トレントは、
「何が足りなかったか、分かったのかい?」
とショウに聞いた。ショウは雲一つない目で、
「あぁ、僕に足りなかったのは『僕らしさ』だ。」
とだけ言って去った。

 ショウは、カシルの待っている湖へと向かった。到着すると、カシルは真剣を持って待っていた。そして、
「ショウ様、これから本気でやりあいます。全身全霊でかかってきてください。」
と真剣を抜き構えた。ショウも構えた。二人が構え風がなびき始めた瞬間二人が消えた。二人の戦っている事以外分からなかった。そして一旦停止し、
「マイテリトリー」
とカシルの半径約三メートルの円が発生した。ショウが円に足を踏み入れた瞬間、カシルが動いた。それに合わせ、ショウも動いた。
「残光閃華」
「終の拳:反射鏡」
と二人の攻撃が衝突し、周りの木々が吹き飛んだ。そこに間髪入れず、ショウは飛び込んできた。カシルは、一太刀で切り裂いた。しかし、
「か、感触がない!」
と言った。そしてショウを見ると、みるみる黒くなり、土に消えた。
「いつの間に!」
そう思っていると、カシルの真上から、
「ソニックブロー+針影山」
とショウの手から無数の影針がカシルを襲った。カシルは、剣で無数の影針を払った。そこからショウは態勢を立て直し着地した。
「まだまだ止まりませんよ。」
「当然です。」
そして、それぞれの得意技に入った。
「剛砕拳」
「蓮楼閣」
そして互いの技がぶつかり、周りの地形が変わった。
土煙が晴れ、カシルは辺りを見渡した。そこには、ショウの姿がなかった。
「どこに行ったんだ?」
「ここです。」
と後ろからショウがカシルの首に手を当て、どこからともなく現れた。
「僕の勝ちですよね?」
とショウは言った。カシルは目を閉じ、
「私の負けです。」
と潔く負けを認めた。

 戦いを終え、話していた。
「いつの間にあんな技使えるようになったのですか?」
「昨日の晩にトレントに会って、少しヒントを貰ってから今日自然とできた。」
「やはり、貴方はサタン様の息子です。」
「それで、最初にどうするの?訓練は終わったんでしょ。」
「そうですね。まずは…」
とカシルが話そうとした瞬間、カシルから血飛沫が吹き出した。それで後ろを見ると、
「お、お前は!!」
「久しぶりだね。魔王の子よ。」
「暗殺者か!」
と黒装束ー暗殺者ーが後ろにいた。ショウは、蹴りをくらわそうとしたが、暗殺者は避けて距離を取った。そこからショウは、
「どうやって背後をとった。不意だったとしても、カシルさんと僕が気付けないはずがない。」
と質問をした。暗殺者は、黒装束を脱ぎ答えた。
「俺のスキル『ステルス』は、自分の姿、気配や足音を消せるんだ。見破る方法もなくはないが、それは戦闘中の話で、不意なら気づけなくて当然だ。」
「母さんを殺した時もそうだったな!」
「あぁ、予め城門で待機しておいて殺した。」
と持っていたサバイバルナイフについた血を舐めながら言った。ショウは構えて、
「最初に復讐するのはお前だ。」
と言葉を放った。暗殺者は、クスクス笑いながら、
「光栄だな。」
と言って、戦闘態勢に入った。
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