復讐と約束

アギト

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第2章 コロッセオ

第八話 コロッセオ開催 予選編

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 コロッセオに着き、受付けを終わらせて、控室へと向かった。
『思ったより、参加者が多いな。ゴブリン、リザードマンそれにエルフまでいるな。後この赤い紙は何だ?66番?』
と思いながら歩いていると、
「あれ?ダルタンさん?」
「ショウ君じゃないか。今度は負けないよ。」
「それは無理ですよ。1週間じゃ変わりませんよ。」
「すごい毒舌だな~でも、せめて君と再戦できるよう頑張るよ。」
「はい、お互い頑張りましょう。」
と言って、控室へと入った。

 ショウは、辺りの魔物と人間を観察した。
『この中で厄介そうなのは、あそこに座っている人間だけだな。』
その座っている人間は、口元をスカーフで隠れている。更には、全く生気のない目をしていた。ショウは、
『恐らく、バーサーカーだな。バーサーカーの特徴は2つある。生気のない目と普段は物静かな事だ。』
バーサーカーは、戦闘に入ると別人のようになる。その強さは、たった一人で都市の軍隊を壊滅させる程だ。
 だが他の周りの奴らは、それを知らずに、
「はっ、ただの人間じゃねぇか。」
「この戦いの祭典に、ただの人間が参加するなんて、無礼にもほどがある。」
「おい、準備運動がてら相手にしてくれや。」
と言われ、バーサーカーは何も言わず、魔物達と外に出た。

 バーサーカーーオーツーは、5人の魔物に囲まれていた。5人の魔物の一体が、
「さぁ、準備運動という名のリンチだ。」
「まぁ、俺らの優しさだよ。有り難く受け止めてくれ。」
そう言うと、オーツに一気に襲い掛かった。オーツは、
「ふぅ~」
と一息つくと姿が消えた。すると、
「ぐぅわぁぁ」
「ば…ばかな」
「あっ…」
と3人の魔物が斬り刻まれていた。オーツは、
「安心しろ。殺す気はない。」
と言い放った。魔物二体は、
「岩砕の型:点消突」
「砂塵嵐」
と攻撃を仕掛けた。しかしオーツは、
「所詮は、児戯程度の技だな。」
と言うと、魔物二体の攻撃より早く手刀で気絶させた。オーツは、ため息をつき、
「やっぱり、戦闘も楽しくなくなってきた。」
と言って、控室へと戻った。

 その建物の裏で、ショウはその一部始終を見ていた。
『あいつ、一度もスキルを使わなかったな。いくらバーサーカーとはいえ、固有スキルすら使わないなんて、想像以上だ。』
ショウは、自身の予想を遥かに越えたオーツを注視した。

 ショウが控室に戻ると、
「えー、コロッセオ参加者は、速やかに下にあるフィールドに集まってください。」
と放送があった。ショウ達は、指定された場所へと行った。
 全員が集まると、一番前に2体の魔物がいた。一体は、狼の風体に首から牙のアクセサリーを付けていた。もう一体は、耳が細長く、黒のタキシードを着ていた。すると、狼の方から話し始めた。
「おほん、今回のコロッセオで審判をさせてもらうウルフマンのサシだ。」
「同じく審判させていただく、吸血鬼のエリート2世です。」
「では、コロッセオのルールを説明する。まず、武器の使用は自由だ。自分に合った武器を使ってくれて構わない。」
「次に、魔法の使用です。今回は魔剣士の方がいらっしゃるので、魔法の使用はありです。ただし、予選以外はね。」
「最後に、制限時間は無制限だ。相手の降伏又は戦闘不能にさせれば勝利だ。以上で簡単な説明は終わるが、なにか質問はあるか?」
と言うと、ショウは真っ先に手を挙げた。それに気付いたサシが当ててくれた。
「何だ?」
「何故予選では魔法を使ってはいけないんだ?」
「その理由は、私から話します。予選で使用する魔石が、『剣技や武技』を無効化するからです。つまり、『魔法』は無効化できないので、万が一を考え使用不可にしたんです。勿論、本選では魔法も無力化するものを使用するので、使っても構いませんよ。」
「分かった。」
ショウは、そこで引き下がった。サシは、
「他に質問はないか?」
と言った。するとオーツが手を挙げた。
「どうした?」
「もし試合中に殺したらどうすればいい?」
「ハッハッハ、話を聞いていなかったのか?戦闘不能もしくは降伏すれば勝利と言っただろ。つまり、戦闘不能っていうのは、殺しも含めてだ。」
「なるほど」
「ただし、降伏した者を殺すのは禁止だ。これは、俺たち戦士の中での暗黙の了解みたいなものだからな。」
「それは構いませんよ。戦意のないやつを殺しても、つまらないだけですから。」
「そうかいそうかい。他はいねぇか?」
と少し間を開けたがいなかったので、
「それじゃ、予選を早速始めていくぞ。」
とサシが言った。すると後ろから、それぞれ別の色のスーツを着た人が出てきた。
「今回の参加者数は、120体だ。だから、一箇所24ずつで行ってもらう。後ろの奴らは、それぞれの予選ブロックへ案内してくれる。」
「ブロックの割り振りは、受付時に渡した紙の色です。紙の色は、スーツの色と合わせているので、その方の案内してくれたブロックで予選が行われます。」
と言われた。

           赤ブロック
 ショウは、赤色のスーツを着ている人間についていった。すると、その人間が止まり、
「ここが予選会場です。」
と言った。そこは、五本の木が生えているだけだった。
「このステージで、どう戦うんだよ?案内人さんよ」
と参加者の一人が聞いた。案内人は、
「では、今から説明を開始させていただきます。ここは、五本の木が生えており、それを上手く利用し戦っていただきます。因みに落ちると、それぞれのギミックが発動します。」
と説明をした。
「どんなギミックがあるんですか?」
「例えば、あの一番奥の木でしたら、下から針山が出てきます。その右隣の木では、毒蛇が噛みついてきます。とまぁ、こんな風なギミックになってます。」
「良い趣味してますね。」
「ありがとうございます。では、次に皆様こちらのくじを引いてください。」
そう言うと、置いてあった箱を取った。それから、一人ずつくじを引いた。案内人は、引き終わるのを確認し、
「では一と書いてある紙を取った人は、闘場へ」
とショウを含め五人が前に出た。
「一発目かよ。」
「やれやれ、こんなヒョロッチィ奴らを相手にしないといけないなんて、最悪だ。」
「おい、それは俺のセリフだ。」
「ふっ、面白くなってきた。」
と言っていた。ショウは、
『さっさと終わらせよ。この程度に本気出したくはないけど』
と心で思った。
 それぞれの木につくと、
「それでは、予選第一回戦を開始します。」
と言うのと同時に笛を吹いた。4人は真っ先にショウを狙った。
「いけすかねぇからな、まずはあのガキからだ。」
「悪く思わないで下さいよ。」
「この世は、弱者から食われるのだ!」
「死ねぇ」
しかしショウは、一切焦らなかった。むしろ、
「早く終われてラッキーです。」
嬉しそうだった。そして、
「フンッ」
と4人同時に、右拳をくらわせた。すると4人は下に落ちていった。それを確認した案内人が、
「勝者66番!」
と大声で言った。ショウは、案内人に向かって、
「案内人さん、質問」
と発した。
「何ですか?」
「残りの奴ら全員で構いません。一気に掛かってきてください。時間の無駄なので」
「つまり、一人で全員を一気に相手したいと?」
「はい、駄目ですか?」
「ハッハッハッ、こんな提案した魔物は久しぶりです。みなさんが構わないなら、私は構いませんよ。皆さんはどうですか?」
と残りの参加者に聞いた。
「舐めやがって!」
「ボコすだけじゃ、気が済まねぇ!!」
とやる気満々だった。案内人は、
「みなさんもやる気ですし、許可します。」
そう聞くやいなや、全員がショウに飛び込んでいった。ショウ、
「終の拳:天海音流」
と全員に無数の拳をくらわせた。そして、参加者全員が下へと落ちていった。案内人は、
「赤ブロック予選通過者は66番!!」
と言い、ショウは案内人のところに行き、
「さぁ、本選にいきましょう。」
「ご案内いたします。」
と言い、案内人は会場へと案内した。

         青ブロック
 ここは、足が浸かるほどの水と泥で構成された闘場となっていた。そこに立っていたのは、仮面を被った魔物であった。
「あとは、あなた一人だけだな。」
「くっ、こんなことあるのかよ。」
と槍を構えて言った。そして、
「神雷乱れ突き」
と雷を纏い無数の突いた。しかし仮面の魔物は、
「くだらない技だ。」
と一閃を決めた。そして、
「青ブロック予選通過者は99番」
と案内人は大声で言った。

         黄ブロック
 こちらのブロックは、シンプルに円形の闘場だった。そこにダルタンが立って、最後の参加者と戦っていた。
「ぐっ、ショウ君と当たらなくてよかったけど…」
「何ブツブツ言っている!戦闘中だぞ!」
とハンマーを持っていたサル系の獣人が言った。
「気にするな、ただの独り言だ。」
「そうかよ!打技:殴剛!!」
と自身の氣を纏わせた全力の技を仕掛けてきた。ダルタンは、それを飛んで避けた。それにより、闘場が壊れた。
「なんて破壊力だ。一発くらったら、死んでしまうな。」
「息つく暇あんのかよ。オッラー!」
とハンマーを横振りでダルタンに攻撃した。しかし、ダルタンはそれをしゃがんで避けた。そこから天井まで飛び上がり、
「奥義:水竜巻」
と自身の槍から水を発生させ、巨大な竜巻となって突っ込んでいった。獣人は、
「チッ、ぐぅわぁぁ」
受け止めようとしたものの、押し負けてしまった。ダルタンは、息を切らしながら、
「何とか勝てたな…」
と言った。案内人は、
「黄ブロック予選通過者5番」

          緑ブロック
 それぞれ色の違うブロックが並んでおり、ランダムに下が抜け落ちる仕組みになっていた。ここでは、
「ふぅ~この程度か、期待外れだ。」
と言いながら、オーツは剣を収めた。オーツは、予選が始まったのと同時に、近くの参加者を殺して回った。その結果、コロッセオ過去最速の通過者となった。因みにかかった時間は、59.1秒だった。案内人は、
「緑ブロック予選通過者83番」

         黒ブロック
 このブロックは、真っ暗闇の中戦っていた。
「五感覚醒:聴覚」
とエルフーリールーがスキルを発動させた。そして、
「弓技:殺戮追尾矢 五矢」
と五本の矢を同時に射った。すると、参加者が、
「がぁぁぁ」
「うぐ…」
などの声が鳴り響いた。
 しばらくして、声が聞こえなくなったのを見計らって、案内人が電気をつけた。そこには、リールが立っていた。そして、
「黒ブロック予選通過者16番」

          会議室
 中に魔物と人間がいた。そして、各ブロックの試合をモニター越しで見ていた。
「今年はレベルが高いな~」
「バクネン、今年の五連覇は無理だろうな。」
「おいおいソウメイ、舐めてもらっちゃ困るぜ。5人中3人はまだまだガキだぜ。ガキに引けを取るほど、老いてはねぇよ。」
 魔物の名はバクネン。コロッセオを4連覇しているオーガだ。一切武器を使わず、スキルや武技を使ったのも数回程度だ。
 隣りにいるのは武人ソウメイ。勇者一行の一人で、独自で編み出した「五獣の型」を使い、ありとあらゆる魔物を葬ってきた。
「まぁ、厄介そうなのは二人いるな。」
「ほう、バクネンともあろう者もそう感じるか。」
「あぁ、あの赤ブロックのヤツだ。魔剣士なのに、武術もなかなかだ。しかも、あの『終の拳』を使えるなんてな。楽しみだぜ。」
「『終の拳』だと…それは確かに面白そうだ。」
 終の拳の由来は2つある。1つは、相手を必ず殺せる威力があるからだ。2つは、習得しようとした者たちが、習得する前に自身の体を壊してしまうからだ。なので、習得しようとする者と技をくらった者の両方の全てを終わらせる拳で「終の拳」と名付けられた。
「それで、もう一人とは誰だ?」
「あの生気のない目をした人間だ。」
「奴が?」
「そうだ。恐らく、禁断の職業『バーサーカー』だ。それもかなりの手練だ。」
「どうしてだ?確かに、過去最速の通過者ではあるが、それ程か。」
と聞くと、バクネンはため息をつきながら、
「はぁ~ソウメイよ。アイツは、この予選で一度もスキルを使ってないんだよ。」
「……!」
とソウメイは、先程の戦っている姿を思い返してみた。
「た…たしかに、それに…」
「ソウメイも気づいたか、奴が武器を使ったのは『一度だけ』だ。」
「いくらバーサーカーとはいえど、そこまでできる奴はそういないだろ。」
「あぁ、だから厄介だと思った。」
と話し合っていた。ソウメイは、
「そろそろ某達も行くぞ。」
「あぁ、ちょっくら暴れるか!」
と笑顔でモニタールームから出た。

 ショウは案内人に誘導され、
「こちらが、本選会場になります。」
と言われた。ショウは、闘場に足を踏み入れると、
「「「「ウォォオ」」」」
と沢山の声が聞こえた。ショウは、
『あれが予選通過者か』
と通過者たちを見た。
『やっぱり、バーサーカーは残ったか。ダルタンさんは、正直意外だ。それにあの仮面の魔物は、得体がしれない。エルフはどうでもいいか。』
そう思っていると、
「会場は盛り上がっているな~」
「これは、某も楽しめそうだ。」
と和服を着たオーガと帯刀している武人が現れた。そして武人は、
「さぁ、本選開始をしようか。」
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