復讐と約束

アギト

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第3章 七魔将軍 アルキ編〜自身のカラを捨てて〜

第十五話 試合開始

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 アルキは、道場裏の庭に呼んだ。そこには、闘うには十分すぎる広さであった。そこにアルキは、一体の門下生に箱を持ってこさせた。その箱は、それぞれ3つ鎖が出ていた。アルキが、
「まず、各々好きな鎖を掴め」
と言った。それに従い各々鎖を掴んだ。それを見て、
「では皆様、そのまま持っておいてくださいね。」
と言いその門下生は構えた。そして、
「セイヤッ!」
と箱を壊した。その鎖には、木板で一~三の数字が書かれていた。アルキがそれを見て、
「それは、闘う順番と相手を指す。つまり、試合の組み合わせはこうなる!」

第一試合 アコVSザギル
第二試合 ウンリュウVSオーツ
第三試合 ラセツVSタカムラ

とアルキは大声で言った。6人は、
「ちっ、ハズレ野郎と闘わないといけねぇのか。ツイてねぇぜ~」
「誰がハズレだ。貴様には地獄の責め苦より辛いものを見せてやろう。」
「誰だろうが構わん。どうせ勝つのは、俺達だ。」
「獣人、人間と落ちこぼれが、調子に乗るなよ!」
「お前ら落ち着け!アルキ師匠の前でみっともないぞ!」
「ザギルさんとオーツさんも、あまり挑発したらダメですよ。」
と闘う前からバチバチだった。アルキは、
「早速、試合を始めよう。っとその前に、簡単なルール説明じゃ。武器の使用は不可、相手を倒せれば勝利、1人一試合だ。」
と説明した。オーツは、不服そうにした。
「けっ、ケチな野郎だぜ。俺が3人まとめて倒してやろうと思ったのによ~」
「まぁそう言うな」
「本当にオーツさんは、戦闘狂ですね。」
とオーツをなだめていた。一方ラセツ側は、
「アルキ師匠の前だ。負けることは許さんぞ!」
「「はっ!」」
と気合を入れていた。すると、眼鏡をかけた痩せ細ったオーガが、
「今回審判をしますクダンです。」
と一礼して、
「では、第一試合 アコVSザギル 前へ!」
とクダンは、声を張って言った。二人は、
「行ってくるか」
「さっさと終わらせてやるよ。」
と前に出た。
「それでは、互いに 礼!」
と一礼した。それを見てから、
「それでは、アコVSザギル 試合始め!」
とクダンが言った。それと同時に、二人がぶつかった。
「貴様には、俺を本気にさせるだけの力量はあるか?」
「笑わすな、お前では俺には勝てない!」
と蹴りを交わし、距離を取った。そして、各々自身の型を取った。それを見たアコは、
「ほう、『月光の型』か…そんな『軟弱な型』を使うとは、俺に勝つ気はないようだな。」
と勝ち誇ったような顔で言った。ザギルは、
「そのように見えるなら、自身の体で試してみろ!」
と怒りを込めて言った。アコは、
「ふんっ、焦らずとも刻ましてやるよ。貴様の身体にな!」
と動き始めた。先程より素早い展開だった。
「月光の型:隠月 朔」
「八獄の型:體焼煉燵」
と技同士がぶつかった。ザギルは、アコの技に耐えきれず、ふっ飛ばされた。ザギルは、
「ん…クソ!押し負けしたか。」
と悔しんでいた。アコは、ザギルに近づきながら言った。
「貴様の使う『月光の型』は、『剣技』であれば十二分に発揮できただろう。しかし、今は『素手』だ。部はこちらにあるということだ。」
「そんな事は、ハナから分かってんだよ!」
「……?」
「分かってるよ。この型じゃ、お前の型には勝て無いことくらい分かってんだよ!」
と立ち上がり、「月光の型」に構えた。そして、
「だが、『お前を倒す』には、この型じゃなきゃ駄目なんだよ。」
とザギルが攻撃を仕掛けた。
「月光の型:劉観月 朧」
「まだ分からないのか!貴様に勝ち目などない!」
と言い、「八獄の型」に構え、
「八獄の型:砥憂苅突」
とザギルに攻撃をした。しかし、ザギルはアコに攻撃を受ける瞬間、技を解除し、
「月光の型:逆さ劉観月 火幻」
とアコの攻撃は空を切った。そう思った瞬間、
「ぐはっ…一体何が起こった。」
とアコは、自身に起きたことを把握できなかった。その後ろで、ザギルがアコに蹴りをくらわせた。
「ぐっ……いつの間に」
「さっきから居たよ。確かに『月光の型』は、剣技じゃなきゃ威力は半減する。だが、それは『凡人』の訓練の積み方だ。」
「何!?」
「真にこの型を極めた者は、剣技だろうが素手だろうが、威力は落ちたりしない。」
「そんな馬鹿なことあるわけない!!」
「あるんだよ。俺の親父は、世界最強の剣士であり、武術家だった。それも、俺と同じ『月光の型』の使い手でな。」
「……ざけ…」
「はぁ?」
「ふざけるな!『八獄の型』こそ、最強の型だ!貴様を殺し、ここで証明してやる!」
とアコは、怒り狂い「鬼人化」を使った。そして、
「八獄の型:奥義 阿炎」
八獄の型最強の技をザギルに目掛けて攻撃をした。しかし、それを待っていたかのように、
「月光の型:奥義」
「月光の型」に構えを取り、
「死ねぇぇぇ!!」
「懣霓」
とアコの技を返した上に、氣を纏わせた拳を一撃だけ放った。するとアコは、その場で気絶した。クダンは、
「アコ 気絶!勝者 ザギル!!」
とザギルの方に手を上げた。オーツとタカムラは、
「まっ、当然だな。」
「凄い!アコさんをこうもあっさりと倒してしまうなんて」
「大した事はない。それに彼奴より強い奴を俺は腐るほど知っている。」
とショウの方を見て言った。一方ウンリュウとラセツはというと、
「しくじりやがった。」
「とっとと、あの雑魚をこの道場から叩き出せ!」
と無慈悲な言葉を言い放った。ショウは、
「幾ら負けたとはいえ、あんな言い方はどうなんですか?」
と少し苛立ちを覚えた。キモンは、
「お前の気持ちはわかるが、『今は』抑えてくれ。」
とショウを少しなだめた。
 クダンがアコをどかし、
「それでは、第二試合 ウンリュウVSオーツ 前へ!」
と声を張って言った。オーツは、
「さぁて、準備運動相手よろしくな!」
とウンリュウに向かって言った。ウンリュウは、
「貴様はあの世で一生準備運動してな!」
と始まる前からバチバチだった。クダンは、
「それでは、互いに 礼!」
と一礼させた。二人は、礼をしたあとに構えた。
「それでは、ウンリュウVSオーツ 始め!」
と言うとオーツは、ウンリュウ目掛けて蹴りを与えようとした。しかし、ウンリュウはそれを受け止め、
「この程度で俺に勝てると思っていたのか?不愉快極まりない。」
とオーツに言った。オーツは、
「この程度か、すぐに分かるぜ!お前を倒してな!」
そう言うと、もう一方の足で蹴りを入れた。そしてすかさず、
「ウォーリャーー!」
氣を纏わせた拳をウンリュウに容赦なくあびせた。ウンリュウは、手を放した。オーツは、そこから距離を取り、「理抗の型」に構えた。
「何だ、その型は?フザケているのか?」
「言っただろ、すぐに分かるってな!つべこべ言わずにかかってこい!!」
「なら、お望み通りにしてやる!」
と「八獄の型」に構えた。そして、
「八獄の型:酷淨」
とオーツに氣を刀状にし、オーツを攻撃した。オーツは、
「理抗の型:瘧終」
と一瞬の隙に無数の拳をくらわせた。ウンリュウは、初撃はくらったものの、次撃のダメージを最小限度に留めた。
「フザケていたわけではなかったようだな。」
「お前もやるな!少しは本気が出せそうで、嬉しいぞ!」
「なら…特殊スキル:鬼人化」
「いいねぇ!かかって…」
とオーツは、ウンリュウの拳をもろにくらった。オーツは、上手く受け身を取り、
「ぷっ、すげぇ速いな~」
『さっきの奴と同じ感覚かと思ったら、此奴のほうが全然速いな。どうすっかな…』
と少し考えた。ウンリュウは、
「早く立て、まだ始まって少ししか経ってないぞ。」
とオーツを見下しながら言った。オーツは、
「誰がこれで終わりだと言った。ぜってぇにぶっ潰す!」
と立ち上がり、「理抗の型」に構えた。ウンリュウは、
「馬鹿なことだ。二度もくらわないぞ。」
と途轍も無い速さでオーツに接近した。オーツはそれに合わせて動いた。そして、
「理抗の型:転伏」
とスピードと自身の力を使い、思いっきりふっ飛ばした。ウンリュウは、
「チッ、どこまで飛ばすんだよ。」
と思いながら、落ちていった。ウンリュウは、何とか受け身を取れたが、
「痛ってぇな、骨2つぐらい折れたな。」
「それにしては、まだやる気充分って面だぜ?」
「当たり前だ、まだやれるからな。」
と構えた。オーツも構え直し、
「八獄の型:焼煉燵」
「理抗の型:帝洸」
と技同士がぶつかり、押し合いになった。すると、周囲が吹っ飛び土煙が舞った。
 土煙が晴れると、ウンリュウが倒れていた。オーツは、ウンリュウを見ながら、
「お前と闘ってもつまんなかったぜ。もっと鍛えておけよ。強くなったら、またやろうぜ」
と自陣に戻っていった。クダンは、ウンリュウが気絶したのを確認し、
「ウンリュウ 気絶!勝者 オーツ!」
とオーツの方に手を上げた。ザギルとタカムラは、ハイタッチして、
「あと一勝すれば、俺たちの勝ちだ。」 
「勝利は目前ですね。」
とタカムラは、オーツのもとに行った。そして、
「オーツさん」
「何だ?」
「自分、絶対に勝ちます!」
「あぁ、ついでに『自分の殻』ぶっ壊してこい!」
「はい!」
とオーツは、タカムラとハイタッチして下がって行った。
 一方ラセツは、
「アコ、ウンリュウ 油断したな。俺がタカムラを殺しても、当然と言われるだけなのにな。」
とおもむろに立ち上がり、ウンリュウの元へ行った。そして、汚物を見るかのように見下し、
「ラ…ラ…セツ…」
「さっさと消えろ!雑魚が!」
と容赦なく蹴り上げてどけた。タカムラは、ウンリュウの側により、
「ラセツさん!さすがに酷すぎますよ!」
とラセツを叱った。しかしラセツは、
「弱い此奴が悪い。そしてそれは、貴様も例外ではないことを教えてやる。」
とタカムラに途轍も無い殺気をあらわにした。ザギルとオーツは、
「ショウが、ソウメイと相対した時に比べたら『全然』だな。」
「あぁ、所詮その程度の奴だった。ってことだな。期待して損したぜ。」
と呑気な事を言った。タカムラは、
「貴方のネジ曲がった性根を自分が正してあげますよ。」
と全く怯むことなく言った。クダンは、タイミングを見計らって、
「それでは、第三試合 ラセツVSタカムラ 前へ!」
と言った。ラセツとタカムラは、互いに前に出た。そしてクダンが、
「それでは、互いに 礼!」
と言い、二人が礼をした。そこから二人は、「八獄の型」に構えた。
「それでは、第三試合 ラセツVSタカムラ 始め!」
とクダンが言った瞬間に、
「「特殊スキル:鬼人化!」」
と二人が鬼人化し、攻撃を仕掛けた。目ではおえない速度で、勝負を展開していた。
「八獄の型:砥憂苅突」
「八獄の型:柔剛 千玄鶴」
と攻撃が衝突した。そこから、ラセツはタカムラに拳をくらわそうとした。タカムラは、それを躱し蹴りをいれた。ラセツは、受け身を取り、直ぐ様蹴りかかった。それをタカムラは、両腕でガードした。
 そして二人は、一度距離を取り、息を整えた。
「タカムラ、何故隠していた?」
「え?何のことですか?」
「恍けるな、俺とここまでやり合えるやつはそう居ない。なのに、貴様は俺とやりあえている。アコとウンリュウでさえ、『初撃』で倒されていたというのにだ。」
「あぁ…そういうことですか。それは違いますよ。」
「何が違うというのだ。」
「自分が強くなったんじゃない。あなた方が『弱く』なったんですよ。自分の知るラセツさんは、ここまで弱くない。」
と言い放った。ラセツは、
「何が言いたい。」
とタカムラに怒りを含めた言い方で聞いた。タカムラは、その回答を真っすぐの瞳で言った。
「貴方、停滞してますよね?」
「な!?」
「図星ですね。強いオーガ程、壁にぶつかった時にどうすれば良いかが分からないんだ。だから、貴方はずっと留まってる。現にラセツさん」
「何だ?」
「『アナタにしか使えない』八獄の型:茉華波渡舞を使わなかったんですか?」
「……!」
ラセツは、言い返す言葉が見つからなかった。

茉華波渡舞・・・一度に氣の刃を無数に飛ばし、相手を失血死に追いやる。極めて残虐な技である。しかし、この技は使ったものも大きな負荷がかかる。そして、この技は「裏八獄の型」と言われ、ラセツしか使えない。また、ラセツは「萬獄山」のオーガでは、珍しい「氷」と「火」を司る二属性のオーガである。

 ラセツは、顔を下に向けて、
「そうかも知れんな、俺は停滞しているかもしれん。だが…」
と素直に認めた。ラセツは、タカムラに面と向かって、
「それでも、俺はお前に勝つ!」
と言い、「八獄の型」に構えた。タカムラは、何も言わずに構えた。
「八獄の型:鐓恐檻」
とタカムに全力の攻撃を放った。タカムラは、
「マイテリトリー」
とテリトリーを開放した。
 ラセツが、
「潰れろ!タカムラーー!!」
と叫びながら突っ込んできた。タカムラのテリトリーに一歩踏み入れた。その瞬間、
「慈大憐変化」
と氣を纏わせた張り手を食らわせたあとに、投げ技を使った。それを見たキモンは、
「その段階まで成長しておったか!」
と驚きを隠せなかった。そして、ラセツの方をタカムラは向いた。ラセツは、まだ立ち上がろうとしていた。
「くっ…俺が止まっていた間に、ここまで強くなっていたんだな。」
となぜか嬉しそうに言った。ラセツは、
「アルキ師匠が、なぜタカムラを入れたのかがわかった気がする。なら俺は…」
と「裏八獄の型」に構えた。
「お前に全力でぶつかる!」
「はじめから自分は、そのつもりですよ。」
と「八獄の型」に構えた。
 そこから二人は、自身の技をぶつけ合っていた。
「裏八獄の型:煦」
「八獄の型:恐檻」
と火と氷の対決が3時間続いた。タカムラは、集中を切らす事なく闘った。ラセツは、今までになく楽しそうに闘った。
 タカムラとラセツは距離を取り、
「裏八獄の型:奥義 茉華波渡舞」
「八獄の型:奥義 阿炎 鬼火達磨」
と互いの奥義がぶつかり、周りが吹っ飛んだ。
 二人は、ボロボロで立っていた。そして、
「お前と闘えて良かった。」
とラセツは倒れ、気絶した。タカムラは、
「貴方に褒めてもらえて、光栄です…」
とタカムラは、フラつき倒れた。それを見たクダンは、
「勝者 タカムラ!」
とタカムラの方に手を上げた。それを聞いたアルキは、
「誰が勝者じゃと!クダン」
と圧を掛けて言った。しかしクダンは、恐れることなく、
「タカムラですよ。アルキ師匠」
と真っ直ぐ面と向かって言った。アルキは、座っていた所から飛んで、ラセツのもとに行った。そして、
「あの若造共に勝ちを譲るなど、許さんぞ!」
とラセツを殴ろうとした。そこをアコとウンリュウが助けた。
「な…なぜ、俺を助けた?」
「ラセツ、すまなかった。お前には重い責任をかけてばかりで…」
「俺達も強くなろうとしても、ラセツみたいになれなかった。そのせいで、苦労をかけっぱなしだった。すまない。」
とアコとウンリュウがラセツに謝罪した。そして、
「アルキ師匠、これ以上ラセツに攻撃を加えようものなら…」
アコとウンリュウが構えて、
「このアコとウンリュウが、相手します!」
と言った。アルキは、
「貴様ら如きが、儂に勝てる要因があると思っておるのか!」
と言った。そこから、氣を纏わせた拳をアコとウンリュウに放った。だが、それが届くことはなかった。
「キモン!なんのマネじゃ!」
「そもそも、俺がここに戻ってきた理由を教えてやるよ。それはな…」
とアルキを思い切り殴った。キモンは拳を握り、
「お前のその腐った根性を叩き直すためだ!やるなら俺が相手してやる!かかってこい!」
そう言い、「神威型」に構えた。アルキは、
「やれるものなら、やってみろ!」
と「八獄の型」に構えた。
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