復讐と約束

アギト

文字の大きさ
上 下
18 / 21
第3章 七魔将軍 アルキ編〜自身のカラを捨てて〜

第十七話 萬獄山の決戦と新たな都市へ

しおりを挟む
 鐘が鳴り響いた。
「何があった!」
「はい、百鬼山の奴らが攻めてきました。」
「何!?よりによって、今か…」
「どうしましょう…」
とアルキと門下生は、頭を抱えた。それを聞いたショウは、
「あっちの数はわかりますか?」
と聞いた。
「100体です。」
「アルキさん、僕がやりましょうか?」
「何?」
「100くらいなら、大した事はない。僕一人で片付けて来ますよ。アルキさんは、お茶でも啜っててください。」
と挑発的に言った。アルキは、
「ふんっ、若造一人に任せれるか!トモン!」
「はい!」
「三から五軍の門下生は、避難誘導だ。それ以上は、迎撃に入ると伝えろ!」
「承知しました!」
と言うと、直ぐ様走り出した。
「貴様に見せてやろう!儂の本気というやつをな」
「楽しみにしておきますよ。」
「いちいち癪に触るやつじゃ、行くぞ!?」
「はい」
とアルキとショウは、100体の群れに向かって行った。

 同じタイミングで、
「あの大群は何じゃ!」
とキモンは驚いた。そこには、手当を受けたタカムラ、ザギルとオーツがいた。
「あれは、百鬼山のオーガ達です。これは厄介ですよ…」
「それはどうしてだ?」
「百鬼山のオーガは、オーガの中でも最強クラスなんです。自分ら萬獄山のオーガ三体がかりで、一体倒せるかくらいですからね。」
とタカムラが言った。オーツとザギルは、
「それは昂ぶってきたぜ!」
「丁度いい、剣技のほうの訓練が疎かになっていたところだ。」
と腕を鳴らしていた。キモンも、
「取り敢えず、片っ端から倒していくか。」
とやる気満々であった。タカムラは、
「じ、じぶんも…」
と一緒に行こうとしたものの、オーツが、
「怯えてんじゃねぇか。無理すんな」
と釘を差した。
「で…でも…」
「安心しろ、絶対に俺等が守ってやるよ!」
とオーツが高らかに言った。そして、百鬼山のオーガ達のもとへ行った。タカムラは、
「うぅ…ぅわぁぁぁ!」
と自身の無力さに、泣き叫んだ。

 百鬼山のオーガ達は、なりふり構わず建物を破壊した。そして、抵抗したオーガは容赦なく殺していった。
「ふっ、今宵も心地の良い悲鳴が聴こえてくるわ。その悲鳴が、酒に良く合うのう~」
「シュドウ様、次はどんな悲鳴がお聴きになりたいですか?」
と左手が血の色に染まったオーガーキドウーが言った。シュドウと言われたオーガは、
「そうじゃな、次は女オーガの悲鳴にしようかの~、出来るか?キドウ」
と酒を揺らしながら言った。キドウは、
「お安い御用で御座います。」
と言うと、すぐに女オーガを見つけ、
「シュドウ様の為に、悲鳴をあげよ!」
と容赦なく殴ろうとした。しかし、キドウは空を切り裂いた。そして、風が通った方向を見ると、そこにはアルキとショウがいた。キドウは、
「アルキか…それと貴様は誰だ?」
とショウに向かって言った。
「ショウです。そういう貴方は?」
「私はキドウ。シュドウ様の右腕だ。」
「そうですか。後ろで酒を飲んでるのが、シュドウさんですか。確かに、あの中じゃ1番氣の量が多い。」
「ふんっ、若造でもシュドウ様の偉大な氣を感知できるとはな。関心だ」
「偉大かどうかは、興味ありません。取り敢えず、貴方がたを倒せばいいんですね。」
「出来るものなら、やってみろ」
と言うと、ショウとキドウは構えた。風が通るのと同時に、二人は動いた。
「私に動きを合わせれるとは、中々やるではないか。」
「どうもです。そりゃっ」
と蹴りを入れたが、キドウは左腕でガードし防いだ。そこからすかさず、右腕で殴りかかった。ショウは、それを受け流し、服を掴み投げ飛ばした。
「この糞餓鬼が!シュドウ様から頂いた服を汚しよって!!許さんぞーー!」
「許してもらう気なんてさサラサラないですけど?」
「死ね!特殊スキル:鬼人化」
とキドウは、鬼人と化し先程より素早く攻撃を展開した。ショウは、攻撃を防ぎ、カウンターを仕掛けた。
「ツメが甘いわ!」
と予期していたかのように、攻撃を流した。そして、
「さっきのお返しだ!」
と思い切り投げ飛ばした。キドウは、ショウを走って追いかけていった。それを見たシュドウは、
「キドウが珍しく楽しんでるようじゃな。どれ、どんな奴か見てこようかの~」
と言い、キドウを追い掛けた。アルキは、
「これはマズイな、俺も行くとするか。」
と頭を掻いてから、追い掛けた。

 一方、アコとウンリュウは、6体のオーガに苦戦していた。
「くっそ……」
「はぁ…はぁ…ヤバイな…」
「グッハッハッハ、アルキの側近が聞いて呆れるわ!」
「言ってやるな、更に惨めになるだろ。」
「仕方ないさ、我らシュドウ様の親衛隊『陸螳』に勝てるわけないのだからな。」
と高らかに笑っていた。

陸螳・・・シュドウの親衛隊の6つあるうちの1つであり、6体のオーガで編成されている。そして、それぞれが独自の型を持っている。

 そして一体のオーガが、
「丸焼きにして喰ってやるよ!大火炎弾」
と口から火を噴き出した。
「う…動かないと」
「し…死ぬぞ」
「ハッハッハ、死ねぇぇぇ!」
「「こ、ここまでか…」」
と諦めていた。すると、
「裏八獄の型:波渡舞」
と火を氷が覆った。それが壊れ、その前にはラセツが立っていた。ラセツは、アコとウンリュウの方を向き、
「アコ、ウンリュウすまなかった。」
と頭を下げた。ラセツは、
「元々は、皆を守るために強くなることを決意した。だが、いつしかその目標を忘れ、お前らを傷付けてしまった。本当にすまない。」
と再度頭を下げた。そして立ち上がり、
「身勝手なのはわかってる。だが、俺ともう一度だけ一緒に闘ってくれ。」
とアコとウンリュウに言った。アコとウンリュウは、
「馬鹿なことを言うな、ラセツ」
「そうだぜ。ラセツが、嫌と言っても何度だって一緒に闘うに決まってるだろ。」
とラセツに言った。そしてアコは、
「俺達だって、ここの皆を守りたいと思って訓練を積んでんだ。一緒に闘おうぜ。」
とラセツに面と向かって言った。ラセツは、
「あぁ」
と言い、陸螳の方を向いた。そして、
「「「特殊スキル:鬼人化」」」
と3体同時に鬼人化した。陸螳達は、
「さっきよりは、楽しめそうだな~」
「無駄な抵抗を」
「さっさと終わらせようぜ。」
と言いながら、ラセツ達に向かっていった。

 ザギルとオーツは、キモンと途中で分かれて片っ端からオーガを倒していった。
「人間風情が、我らに反抗するとはな!」
「種族なんて下らない境界線だ。それにばかり囚われてっと、『お前等』のように足元すくわれるぜ!」
と双剣で切り刻んだ。するとオーツを囲むようにオーガが7人いた。
「貴様は、シュドウ様の親衛隊『波羅芭樂』が相手しよう。」
「貴様の肉は喰らいがいがありそうだ。」
「よせ、解剖して調べたいことが沢山あるのだ。」
「なら俺の剣で、コイツを綺麗に7等分にしてやるよ。」
と下らないこと言っていた。オーツは、あくびをして、
「はいはい、分かったから。さっさとかかってこい。」
とオーガ達を挑発した。波羅芭樂は、
「舐めぇぇるなぁぁ!」
とキレて来た。そして一斉に攻撃を仕掛けた。だがオーツは、双剣を持ったまま、
「理抗の型:轉變肖 七臓」
と一瞬で7体のオーガの心臓部を柄頭で強く突いた。するとオーガが一斉に倒れた。オーツは、
「流石俺だぜ!剣技にも転じれてしまうなんてな!」
と笑みを浮かべながら言った。そうオーツが、鼻を高くしていると、後ろから、
「オラッ!」
と思いっ切り蹴られた。オーツは、背中をさすりながら、
「いってぇな~」
と言った。そこには、どんなオーガよりも小さかった。
「おいおい、俺様を倒せるかな~」
と途轍も無い速さでオーツに攻撃した。オーツは、
「相手が誰であろうと、ブチのめすだけだぜ!」
と部分痕の「狂乱化」した。
 一方ザギルは、オーガに苦戦していた。
「おいおい、腰が引けてんぜ!」
「チッ!」
ザギルは、アコとの闘いで相当ガタが来ていた。
『奥義は一度使えば、相当な氣が削られてしまう。更に、「懣霓」は身体への負荷が尋常じゃない。だから…』
「死ねぇぇぇ!?」
とオーガがザギルを殴ろうとすると、
「我流 剣技 陽斜行・日廻」
と縦回転しながら、オーガを斬りつけた。
「身体にあった技を使えばいい。」
とザギルは言った。すると更にオーガが集まり、
「獣人に引けを取るとは、情けない。」
「そもそも、手負いのやつすら倒せんとはな」
と言っていた。ザギルは、
「下らないこと吐かしてねぇで、まとめて掛かってこいよ!返り討ちにしてやるよ。」
と「魔眼」を開放してから言った。

 キモンは、逃げ遅れたオーガを逃しながら闘っていた。
「早く避難しろ!」
「ありがとうございます、ありがとうございます」
と言いながら、走って逃げていった。
「アイツで終わりだな…」
「はい~~や!」
「ウァチョョョ!」
とキモンに攻撃を仕掛けた。キモンは、軽々しくガードし、カウンターをくらわせた。
「何もんだ!」
「私はシュドウ様の親衛隊の一人ゴズ」
「私はシュドウ様の親衛隊の一人メズ」
「「二人合わせて、百鬼山の門番にして最強のタッグよ!」」
とゴズとメズは、手を繋ぎ高らかにそう言った。キモンは、
「どうでもいい、敵なら倒すだけじゃ!」
と構えた。ゴズとメズは、
「セッカチさんね。」
「少し教育してあげましょうか。」
と同じ構えを取った。

 ショウは、背中をさすりながら、
「門外まで飛ばされるなんて、なんて怪力なんだ~」
と呑気なことを呟いた。すると、
「呑気な糞餓鬼だ。さっさと、さっきの続きだ。」
とキドウが木の上にいた。その後ろから、
「楽しそうじゃな~キドウ」
とシュドウが声をかけた。
「シュドウ様、申し訳ございません。直ちにあの糞餓鬼を殺し、とびっきりの悲鳴を献上いたします。」
「よい、それより久方ぶりに楽しめそうなやつじゃのう~名は、ショウ?とか言ったか。我が名はシュドウ、百鬼山の長じゃ。」
「ご丁寧にありがとうございます。改めまして、僕の名前はショウ。ある目的で旅をしています。」
「さて、互いに名乗りは終わったことじゃ、今度は儂も混ぜてくれ。」
とシュドウは、構えを取った。それに合わせ、キドウも同じ構えを取った。ショウは、魔眼を開放した。三人の衝突が始まる寸前で、
「儂を忘れるなぁぁぁ!」
と上からアルキが登場した。そして、
「ショウよ、先程までは儂が試す側じゃった。じゃから今度は、お主が儂を試せ!」
とショウに向かって言った。ショウは、
「いいですよ。あの二人を一緒に倒して証明してください。『ただ強いだけじゃないこと』をね。」
と言った。それを聞いてアルキは、「鬼人化」した。

 キモンは、ゴズとメズの攻撃に苦戦を強いられていた。
「フザケた動きだ!」
「あら~見とれちゃったかしら~」
「高齢なオーガは、対象外なのよね~」
ゴズとメズは、こんな口調ではあるが、キモンが防戦一方になるほどであった。そして、
「次で楽にしてあげるわ~行くわよ!メズ」
「もちろん!ゴズ」
と同時に一気に距離をつめ、キモンに張り手をくらわせようとした。すると、
「とりゃぁぁぁ!」
とゴズとメズに蹴りをくらわせた。ゴズとメズは、同時に吹っ飛んだ。キモンが顔をあげると、そこにはタカムラが立っていた。そしてキモンの方を向き、
「キモンさん、大丈夫ですか?」
と屈んで聞いた。キモンは、
「大丈夫だ。それよりなぜ、ここに来た?」
「自分、皆が必死にここを守ってるのに、指くわえているだけなんて…絶対に嫌だったからです!」
とタカムラの真っ直ぐな目を見て、
「そうか…」
とだけ呟いた。すると、
「いや~随分効いたわよ~坊や」
「今度は、私達が蹴りをくらわせる番よ~」
とゴズとメズは、土を払いながら言った。キモンは、
「タカムラ、儂と一緒に闘ってくれ」
と言った。タカムラは、
「もちろんです。」
と言い、二人は「鬼人化」した。
 タカムラとキモンは、ゴズとメズを分断させた。ゴズにはキモンが、メズにはタカムラがついた。
「私からメズを分断させれば、勝てると思ってるの!」
「勝てるに決まっておろう、儂は一人ではないからな!」
「爺が!拳氷岌豈」
と自身の拳を氷で包ませ、キモンに乱撃した。それに対しキモンは、
「神威型:撃燐」
とゴズの攻撃にカウンターをくらわせた。ゴズは、思わず吹っ飛んだ。そこにキモンは、隙なく、
「神威型:汳乱」
と攻撃を仕掛けた。ゴズは、ギリギリのところで躱し、
「はぁ~」
と拳をつこうとした。キモンは、それを受け止め、
「フンッ!」
と逆に拳をくらわせた。そして、
「お前等は、『タッグ』であれば脅威じゃった。だが、『シングル』では全く脅威なんて無い!」
と断言した。ゴズは、
「黙れぇぇ!爺がぁぁ!」
と怒り狂った。キモンは、
「この程度で怒り狂うとは、まだまだ青いな。」
と「神威型」に構えた。
 一方タカムラは、メズと互角に渡り合っていた。
「やるわねぇ!私と互角なんて!」
「それはありがとうございます。」
「でも、まだまだよ!」
とタカムラの脇腹に蹴りを入れ、顔面を殴った。そこからメズは、容赦なく投げ飛ばした。タカムラは、受け身がうまく取れず、倒れ伏した。
「あら~もう終わり?なら…」
と拳を高らかに上げて、
「死ねぇぇぇ!!」
と下げた。タカムラは、メズの拳を躱した。そして、「八獄の型」に構えた。メズは、
「『八獄の型』ねぇ~ごあいにく様、私は『八獄の型』の攻略法を知っているの。だから、貴方に勝ち目はないわ!」
とタカムラに攻撃を仕掛けた。タカムラは、
「八獄の型」
「意味無いわよー!」
「仙技 死極蕃椒」
とタカムラはメズに、寸分の狂いなくメズの急所のツボを突いた。メズは、その場で跪いた。
「な…なぜ、『八獄の型』は強力な代わりに拳の軌道の変動がしづらいはず…なのに、なぜ…」
「今の技は、『自分が』考えた。『自分だけの技』ですから。変動しづらいなら、『変動しやすい』技を見つければいい。ようやく、見つけれました。」
「おぉぉぉのぉぉれぇぇ!」
とメズは、タカムラに何も考えず突っ込んできた。タカムラは、「八獄の型」に構えた。
「死ねぇぇぇ!ジジイ!!」
「死ねぇぇぇ!ガキが!!」
「神威型:奥義 墮隗」
「八獄の型:奥義 阿炎 鬼火達磨」
とキモンとタカムラは、違う場所で同時に奥義を放った。そして、ゴズとメズは吹っ飛び、互いにぶつかり合い気絶した。
 その後に、キモンとタカムラは合流した。そしてタカムラは、
「キモンさん」
「どうした?」
「今なら迷わずに言えます。自分も外に出たいです。さっき見つけた、自分の技の可能性をひろげたいです。」
とキモンに面と向かって言った。キモンは、
「なら、この闘いが終わったら、旅でも行くかのぉ」
とタカムラに行った。タカムラは、
「はい!」
と元気よく笑顔で返事をした。

 ショウとアルキは、シュドウとキドウを相手に苦戦していた。ショウはキドウと、アルキはシュドウとやり合っていた。
「厄介な腕ですね。」
「フンッ!『鬼人化』した事で威力も上がってるからな!」
「相変わらず、鋭い拳じゃのぉ」
「貴様は、少し老いたか?」
流れはシュドウ達にあり、ショウ達は防戦一方であった。そこから距離を取り、態勢を整えた。
「キドウの左腕は、遠距離攻撃が得意でヤツの攻撃は『絶対に』当たる。」
「絶対に?」
「あぁ、だが標的は一体だけだ。」
「なるほど、でシュドウさんの方は?」
「ヤツに弱点も欠点もない。」
「そうですか。なら…」
とアルキとショウが話していると、
「お喋りは、その辺にしてくれんかの~酒桜の風吹」
とシュドウが持っていた酒に、息を吹きかけると桜風吹が襲った。ショウとアルキは、左右に避けて、
「ショウ!」
「分かってますよ!」
とショウはシュドウに攻撃を仕掛けた。
「ほう、そうきたか。」
「貴方は、僕がお相手しますよ。」
「よい、悲鳴を聴かせておくれ」
とシュドウは楽しそうに言った。キドウは、
「シュドウ様から離れろ!!」
と左腕で攻撃を仕掛けようとした。だが、
「それは、儂を倒してからにせい!」
とアルキが、キドウの攻撃を遮った。キドウは、
「貴様を殺し、糞餓鬼も殺す!」
と途轍も無い殺気を放った。アルキは、
「面白くなってきたわい!」
と嬉しそうに言った。

 ラセツ達は、陸螳達を相手に好戦していた。
「やるではないか」
「先程とは、全然違うな。」
「たった一人増えただけで、こんなにも違うのか!」
と陸螳達は言った。ラセツは、
「アコ!ウンリュウ!トドメだ!」
と言うと、アコとウンリュウは、
「合わせるぞ!」
「『昔』のあの技でな!」
とアコとウンリュウは「八獄の型」に構え、ラセツは「裏八獄の型」に構えた。そして、
「「八獄の型:奥義 阿炎」」
「裏八獄の型:奥義 茉華波渡舞」
と各々の奥義の態勢に入った。陸螳達は、
「これ以上、好きにさせると思うなよ!!」
「「「「「ウォォォォ!」」」」」
と襲いかった。するとラセツ達は、
「「「獄門合掌:火氷懊悩煩悶」」」
と陸螳達に火と氷の最大火力の技を同時に当てた。陸螳達は、
「くっ……そぉがぁぁ!」
「うわァァァ!」
とすっ飛んでいった。ラセツ達は、
「「「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」」」
と息を切らした。そこから3人は倒れた。
「久方ぶりだが、出来るもんだな。」
「おう」
「だな」
するとラセツは、急に笑い始めた。
「どうしたんだよ、ラセツ」
「いや、『昔』アコが言ったことを思い出してな。」
「そうか」

         20年前
 ラセツは、いつも通り訓練を積んでいた。すると、
「おぉおぉ、異端児が訓練してやがるぜ!」
「『八獄の型』すら、まともに扱えない奴なんて無駄な努力を」
と7体のオーガが来た。ラセツは、
「訓練の邪魔です。冷やかしなら、消えてください。」
と言い放った。すると一体のオーガが、
「オラッ!」
とラセツを殴った。ラセツは、躱せずにもろにくらってしまった。そこから、集団リンチが始まった。そこに、
「おい、お前ら!」
「それ以上、そいつに危害を加えたら、俺達が黙ってないぞ。」
と若きアコとウンリュウがいた。そして、一体のオーガがラセツに攻撃をしようとした。すると、アコが途轍も無い速さでそのオーガを蹴り上げた。
「き~さ~ま~!」
とアコにも攻撃をくわえた。そこにウンリュウは、別のオーガを殴った。ラセツもすぐさま立ち上がり、蹴りをくらわせた。オーガ達は、
「ガキ共が!!」
と怒り狂った。
 オーガ達は、ラセツ達にボコされると、
「お、覚えとけよ、ガキ共が」
とよく聞くフレーズを残して、去っていった。
「大丈夫かよ、ラセツ」
とアコは言った。ラセツは、
「平気だ。どうして助けた?」
と質問をした。アコとウンリュウ、
「助けたいから助けただけだ。」
「右に同じ」
と言った。アコはそこに、
「それにお前も加われば、俺たちは最強になれる。俺達は、3人なら最強だ!」
と笑顔でラセツに向かって言った。ラセツは、
「変わったやつだ。」
そう言って、少し顔が綻んだ。

         現在
 ザギルとオーツはタカムラと合流し、ラセツ達を見つけた。
「やったのか?」
「当たりメェだろ。」
「そうか、なら後は…」
「わかっている。シュドウとキドウだろ。」
「ショウとアルキに任せて、俺達は…」
周りには、オーガの群れが集っていた。倒れていたラセツ達をザギル達が起こし、全員が構えた。
「さぁ、フィナーレと行こうぜ!!」
「よっしゃー!やってやらー!」
「最後の踏ん張りですね!」
「お前等は、元気いっぱいだなぁ」
「今はそれが頼もしいがな。」
「行くぞ!」
とザギル達は、シュドウの残党達に立ち向かっていった。

 ショウは、シュドウの攻撃に少しずつ慣れていった。そして、
「ここだ!ソニックブロー」
「ぐはっ!」
シュドウに一撃くらわせることができた。
「ほう…なかなかやるではないか。」
「それはどうもです。」
「だが、これならどうじゃ。特殊スキル:鬼人化」
とシュドウは、「鬼人化」した。それは、アルキが「鬼人化」した時よりも強力な氣が放たれた。ショウは、
「それなら僕も」
と「魔眼」を開放した。シュドウは、
「美しい『魔眼』じゃな。100年振りに見たのう。」
とショウの「魔眼」に見惚れた。
「100年振り?」
「あぁ、一度だけだが、今でも覚えとるぞ。慥か名は、サタンじゃったかな。」
「そうですか。シュドウさんは、僕の父さんを知ってるんですね。」
「まぁのう。でも、そこまで親しかった訳では無いがな。」
と少し話した。ショウは、
「なら、父さんを超える『魔眼』を見せてあげますよ。」
と言い構えた。シュドウもそれに応えて構えた。そして、風が通るのと同時に二人は衝突した。
「朱苑義指」
とシュドウが無数の突きをショウに放った。ショウは、
「魔眼:未来観測」
と未来を見て、シュドウの攻撃全て避け、
「はっ!」
「ぐっ…いい蹴りじゃ!」
「まだまだ!」
蹴りからラッシュに繋げた。シュドウは、最低限のダメージに抑えきった。
「お主、先程とはえらく違うのぉ。」
「まぁ、魔眼を使ってますからね。」
すると、横からキドウが飛ばされてきた。そこからアルキがゆっくりと歩いてきた。
「攻略法を知っておれば、どんな敵にも勝算はある。キドウ、お前の攻略法は溜めの時間と距離だろ。」
「黙れぇぇ…老いぼれ風情が!」
「そちらも盛り上がっておるようじゃな。」
「では、そろそろ…」
「幕引きじゃな!」
と4人が構えた。
「牙鬼羅輝」
「朱炎蹣焼」
とシュドウとキドウは、最高火力の技を息を合わせ放った。アルキとショウは、
「八獄の型:奥義 阿炎」
「終の拳:楽胴牙 ドラゴンモデル」
とアルキは「八獄の型」の奥義を放ち、ショウはキモンから教わった「終の拳」を使った。
 4人の技がぶつかると、周囲が吹き飛んでしまった。そして、地形を変えるほどの被害が起こった。その中に二体立っていた。一体は元七魔将軍の将にして、萬獄山の長であるアルキだ。そしてもう一体は、百鬼山の長であるシュドウである。
「奴等は倒れたか?まぁよい、貴様との決着はつけねばならん。」
「そうだな」
と二体は構えた。そして、風が過ぎ去るのと同時に二体は互いの拳を交えた。アルキの拳が、シュドウよりも一瞬だけ速く届いた。シュドウは、
「見事じゃ、アルキ…」
とその場で倒れた。アルキは、
「もう芝居はええぞ、ショウ」
と言った。するとショウは起き上がり、
「終わりましたか?」
と呑気なことを言った。アルキは、
「ショウ、あの『終の拳』はキモンから教わったのか?」
「はい、僕がまだまだ『終の拳』を使えこなせないから教わったんです。」

        一週間前
 ショウは、キモンからショウの「終の拳」の悪癖を指摘してくれていた。
「お前は重心が安定してないまま使っている。そして、威力は申し分無いが、氣が分散している。そこが1番勿体無いぞ」
「はい!」
と「終の拳」を使う度に指摘を受けた。そこでキモンは、
「『終の拳』本来の性質を生かすんだ。」
「『終の拳』の本来の性質?」
「そうだ。『終の拳』とは、技が少ない代わりに応用が効きやすい。それをお前が、状況に応じて使えばいい。」
「例えば?」
「例えば、『楽胴牙』にモデルを作るんだ。モデルはなんでもいい、お前の想像しやすいのを氣で再現するんだ。そうすれば、今までのように氣の分散は減るだろう。そして徐々に慣れれば、モデルを作らずとも分散しなくなるはずだ。」
「分かりました。」
とそこからアルキとの組み手を通し、どんどん具現化していった。

 アルキは、ショウの話を聴き、
『なるほど、奴らしい教え方じゃ』
と思った。すると後ろから、
「終わったようだな。」
「村のオーガ共も倒してきたぞ~」
とボロボロのザギル達が声を掛けてきた。ショウとアルキは、
「こちらも今終わったところだ。」
「キモン、タカムラそしてラセツ達よ。よくやった。」
と言った。

        2週間後
 萬獄山の復旧が一段落した頃に、ショウ、ザギル、オーツそしてアルキは、門の前にいた。
「支度はできたか?」
「俺はいつでも下りれるぜ。」
「俺もだ。」
「それじゃ、行くかの。」
と門を出る時に、
「何も言わず立ち去るなんて、失礼ですよ。アルキ師匠達」
とラセツ達がそこにいた。
「ラセツ、それにキモンとタカムラも」
「自分、キモンさんと一緒にたびに出てきます。もっと「八獄の型」の可能性を広げるために」
「俺は、もっと自身の型を追求してくる。そして、今度こそアルキ、お前を倒すぜ!」
と拳をアルキに突きつけた。アルキは、
「俺は止まった時を進めてくる。お前を圧倒して勝ってやる。」
とキモンの拳に合わせた。アコは、
「ザギル、また俺と勝負してくれ!」
「お前が強くなってればいいぞ。まっ、そん時は俺はお前より遠い領域にいるけどな。」
「そうかよ。そいつは楽しみだぜ。」
とザギルと言葉をかわした。ウンリュウは、
「オーツ、お前の本気を全然出させれんかった。だから今度こそ、貴様の本気を出させてやる。」
「俺はいつでも相手になってやるよ。だけど、またつまんなかったら嫌だな~」
「逆に今度は俺が『つまらない』と言ってやるわ。」
と言葉をオーツとかわした。そして最後に、
「タカムラ、旅に出るんだってな。」
「はい」
「今度はお前に『足りない』自信を取り戻して、俺ともう一度闘ってくれ。」
「もちろん、その時は『本当』のラセツさんの力で」
「おう」
とラセツとタカムラは、言葉をかわして拳を合わせた。それを見たショウは、
「別れの言葉は済んだか?」
「うむ」「おう」「あぁ」
と各々返事して、ショウのもとに行きオーツが、
「そんじゃあ、行きますか!」
「あぁ、次の目的地は魔法都市『イマージ』だ!」
と4人は門の外へと出て行った。
しおりを挟む

処理中です...